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#022 ヤマト政権成長物語・Octagon


講義録 『ヤマト政権成長物語』

授業では、ヤマト政権を
ヤマト政権株式会社」と説明しています。
この会社の創業理念は、日本の安寧です。

稲作は豊かさをもたらしました。
しかし、その豊かさは争いも生みます。
土地、水、余剰生産物を巡る争いです。
環濠集落や高地性集落、
そして中国史書の「倭国大乱」が、
そのことを物語っています。

「このままでは国はまとまらない。」

そんな危機感の中で誕生したのが、
ヤマト政権株式会社です。

社長は大王
豪族は共同経営者であり、役員です。
会社の目的は一つ。
争いを鎮め、日本を一つにまとめること。

古墳は単なるお墓ではありません。
ヤマト政権の秩序に加わった豪族たちが築いた、
いわば会社の「勢力図」です。
古墳の形や規格、大きさ、分布を見れば、
ヤマト政権がどのように成長したかが分かります。


…という風に授業では物語のように説明します。
ただ古墳の名前を覚えるだけの授業ではなく、
ヤマト政権を一つの会社に例えることで、
その誕生の理由や成長の過程、
豪族たちの役割まで、
ストーリーとして理解できるようにしています。


①3世紀後半~4世紀 前期=創業期

会社は奈良盆地で産声を上げます。
まだ地方色の強い、小さな会社です。
古墳も近畿地方に集中しています。
奈良県箸墓古墳が代表例です。
形は円墳・方墳・前方後円墳と多様な形状
まだ会社のシンボルが統一されていないからです。
墓は竪穴式石室や粘土槨。
埋葬すると開けることはなく、追葬もしません。
一人のリーダーの権威を示す墓でした。

副葬品の中心は銅鏡、とくに三角縁神獣鏡です。
鏡は装飾品ではなく、大王との結び付きを示す証。
つまり「ヤマト政権株式会社の社員証」です。
大王は司祭者的な性格を持っていたのでしょう。


②5世紀 中期=成長期

やがて会社は急成長します。
支店が全国へ広がるように、
古墳も全国で築かれるようになります。
有力豪族の古墳は前方後円墳が主流となり、
会社のルールが整うように、
古墳の規格も整っていきます。

副葬品も変化します。
銅鏡から武器・甲冑・馬具に変化します。
会社は武力を背景に秩序を維持する時代へ。

大阪府大仙陵古墳(百舌鳥古墳群)
日本最大の前方後円墳で全長約486m。

大阪府誉田御廟山古墳(古市古墳群)
2番目に大きい前方後円墳で全長420m。

会社は全国規模へと成長し、
経営の中心も奈良盆地から河内平野へ移ります。
巨大古墳は、会社の勢いを象徴する存在でした。


③6世紀 後期=転換期

会社は全国組織になりました。
急成長の時代は終わり、会社は安定します。
そのため、巨大古墳は次第に造られなくなります。
代わって小型古墳群集墳が増え、
地方豪族や有力農民層にも広がっていきます。

会社の文化が全国に定着したのです。
墓も変わります。
横穴式石室が普及し、
何度でも開けられるようになります。
追葬可能となり、一人のための墓から、
一族で受け継ぐ墓へ変化しました。
埼玉県吉見百穴などが代表的古墳です。


④7世紀 終末期

会社は大きな転換点を迎えます。
薄葬令が出され、豪華な古墳は造れなくなります。
会社の経営方針が変わったのです。
権威を示すものが墓から寺院へと移っていきます。

しかし、大王家だけは八角墳を築きます。
八角形は古くから特別な権威を表す形です。
特別な立場を守ろうとしたのでしょう。

そして、新会社が誕生します。
その名は律令国家です。
大王の権威で国をまとめる時代は終わりました。
法律と制度によって国を治める時代です。
ヤマト政権株式会社が築いた土台の上に、
日本という国家が本格的に動き始めるのです。


余談  『Octagon』

古代の人々にとって、形には意味がありました。

四角形は、人が暮らす世界を表します。
東西南北、起承転結、老若男女。
日常の世界です。

八角形は何を意味するのでしょうか。
東西南北に、その間の四方を加えた八方位。
世界全体を表す特別な形です。
また、「八」という数字も、
八百万の神や八重桜のように、
「数え切れないほど多い」「広く行き渡る」
という意味で使われてきました。

法隆寺夢殿が八角形なのも意味があります。
聖徳太子を祀る特別な建物だからです。
また、白河上皇が建立した法勝寺の八角九重塔も、
仏法が八方に広がることを象徴していました。

この考え方は古墳にもつながります。
古墳時代の終末期になると、
八角墳が造られるようになります。
八角形は大王だけに許された形と考えられます。
「私は世界を治める特別な存在である。」
そんなメッセージを示したのでしょう。


ちなみに授業では、
「八角形は英語で?」と生徒に質問します。
意外と答えられない。

三角形は?- Triangle
四角形は?- Tetragon(Quadrilateral)
五角形は?- Pentagon
六角形は?- Hexagon
七角形は?- Heptagon
八角形は?- Octagon

本校では、日本史の授業の中で
英検対策も行います。
有機化合物の命名法などでも使えます(長女)。


……ここで、現実に戻ります。
我が家の墓を思い出してみます。

八角形ではありません。
四角形とも言い切れません。
長年の風雨で、一部は少し欠けています。

そして、相変わらず墓石にはカラスのフン。
フンだけは、見事に八方へ広がっています。

古代の人なら、
ありがたい意味を考えたのかもしれません。

でも、今はただただ悔しい。
まずは掃除からです。

父さん、母さん、ごめんね。


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