静かな会社、にぎやかな会社――大事なのは“音”ではなく”状態”
会社のなかは、ワサワサ、がやがやとしていたほうが良いのでしょうか。
それとも、淡々と仕事が進んでいたほうが良いのでしょうか。
もちろん、単純に「静かな会社が良い」「にぎやかな会社が良い」という話ではありません。
業種や部署によって、会社の音は大きく変わります。
営業部門であれば、お客様から頻繁に電話がかかってくるでしょう。
受注対応やコールセンターのような部署であれば、声が飛び交っていること自体が仕事の一部です。
現場を持つ会社であれば、確認や連絡が多くなるのも自然です。
ですから、ここで考えたいのは音があるかどうか、ではありません。
そのにぎやかさが、前向きな仕事の動きから生まれているのか。
それとも、不安や混乱、手戻りから生まれているのか、という違いです。
ある経営者の方が、こんなことを話していました。
「会社が静かに、淡々と動いている状態を目指しているんです」
最初に聞いたときは、少し意外に感じました。
会社というと、活気があること、声が飛び交うこと、にぎやかであることが、良い状態のように思われがちです。
けれども、その経営者の方が言っていた「静かさ」は、音がしないという意味ではありませんでした。
むしろ、仕事がきちんと流れている状態。
必要以上にバタつかず、それぞれが自分の役割を果たしている。
そこに、その会社が目指している組織の姿があったのだと思います。
1. にぎやかな会社は、よい会社なのか
にぎやかな会社には、たしかに魅力があります。
社員同士がよく話し、相談や確認がしやすい。
お客様の話題が自然に出てくる。
そういう会社には、前向きなエネルギーがあります。
特に小さな会社では、日常の声のかけ合いが、チームの安心感につながることも少なくありません。
一方で、にぎやかであることと、会社が良い状態であることは、必ずしも同じではないのかもしれません。
いつも確認に追われている。
誰かの判断を待って仕事が止まっている。
予定外の対応が続き、社員が気を張り続けている。
外から見ると、活気があるように見えても、
そのにぎやかさが、不安や混乱から生まれている場合もあります。
つまり、会社のにぎやかさには、二種類あるように思うのです。
一つは、前向きなにぎやかさ。
もう一つは、不安から生まれるにぎやかさ。
どちらも表面的には「人がよく動いている会社」に見えます。
けれども、そこで働く人の疲れ方は、ずいぶん違うのではないでしょうか。
2. 淡々と仕事が進む会社の強さ
淡々と仕事が進む会社には、静かな強さがあります。
それは、何も起きない会社という意味ではありません。
お客様から急な連絡が入ることもあります。
納期の変更やミスへの対応が必要になることもあります。
そのたびに、電話をかけたり、誰かと相談したりするのは自然なことです。
大事なのは、そのとき必要以上に混乱しないことです。
誰に確認するのか。
どこに情報があるのか。
何を優先するのか。
普段から、仕事の流れが共有されていれば、慌てることなく、立て直しやすくなります。
淡々と仕事が進むというのは、熱量が低いわけではなく、
日々の仕事が整っているからこそ、必要なところに力を使える状態です。
その積み重ねが、淡々と進む力となっていくのです。
3. 静けさの中にある、信頼と安心
本当に目指したいのは、静かで冷たい会社も、ただにぎやかな会社でもありません。
普段は淡々と仕事が進んでいる。
でも、必要なときには自然に声をかけ合える。
困ったときには相談でき、うれしいことがあれば一緒に喜べる。
そんな会社なのではないでしょうか。
静けさは、無関心ではなく、
淡々としていることは、冷たいということでもありません。
むしろ、信頼と安心があるからこそ、会社は必要以上にざわつかないのかもしれません。
社長が細かく言わなくても、社員が自分の役割を分かっている。
社員が不安を抱え込まなくても、相談できる相手がいる。
誰か一人が頑張りすぎなくても、仕事が前に進んでいく。
そうした会社の空気は、にぎやかさだけでは測れません。
小さな会社ほど、電話の声、社員同士のやり取り、社長のひと言、忙しいときの対応に、経営の状態が表れます。
普段の会社のにぎやかさは、前向きなにぎやかさでしょうか。
それとも、不安から生まれるバタつきでしょうか。
会社に必要なのは、いつも騒がしい活気ではなく、
普段は淡々と進み、必要なときに自然に声をかけ合える状態。
まずは、自社の「にぎやかさ」が、前向きな動きから生まれているのか。
確認や手戻りに追われる中で生まれているのか。
そこに目を向けてみるだけでも、組織の状態が少し見えてくるかもしれません。
〈このnoteを書いた人〉
有村知里(Chisato Arimura)

アイパス経営コンサルティング株式会社 代表取締役
中小企業診断士/人本経営学修士(EMBA)
横浜を拠点に、中小企業の経営計画づくりと実行、チーム力向上を支援する中小企業診断士。1997年創業、2021年法人化。
「小さくても強くてやさしい会社づくり」を掲げ、「人を大切にする経営」「五方良し経営」を軸に、利益と品格を両立する経営を大切にしている。
経営者の想いを言葉にし、社員と共有できる形に整えながら、現場で動く経営計画、相談しやすい組織、対話が生まれる仕組みづくりを伴走支援している。
