小説『ワンダリングノート・ファンタジー』(29)あなたは私で
Chapter29
「あなた⋯⋯もしかして、私なの??」
いきなり現れた自分の幼い姿を目の当たりにした瞬間、レナの頭に記憶の波が押し寄せた。キリン公園での先ほどの光景が、生々しく甦る。
──撤去されたはずの小さなブランコが目に留まり、レナは重い足を止めた。この異世界での生活が永遠に続くのだろうか? 自分がなぜこんな運命をたどることになったのか、その理由も見つからず彼女は疲れ果てていた。かつて笑いながら遊んだそのブランコは眼前にあるものの、今や困惑の記憶の一部となり、それを見つめる彼女の姿は深い孤独感に満ちていた──
ふと目を上げたレナは、公園の入り口から歩いてくるトムの姿を見つけた。信じられないという感情と安堵が彼女の顔に同時に浮かび上がり、自然と彼に向かって歩き出した。距離が縮まるにつれ、彼女は声を張り上げた。
「トム! トムなのね!?」
彼はレナの声に気づいたようだったが、すぐにはこちらを向かずにキリンの滑り台へと進んだ。そのトンネルを抜け、現れた彼はようやく彼女の方を向いて滑り降りたが、着地の瞬間に派手に転んだ。
駆け寄って話しかけると、トムはレナの姿を認識していないようで、放心状態で空想に耽りながらぶつぶつと独り言を続けていた。
トムが子供のように砂遊びを始めるのを見て、安堵感から彼女もその遊びに付き合った。その会話の中で、レナの心情が思わず言葉に漏れた。
『え〜! お城と私、どっちが大事?』
レナは強烈な違和感に襲われた。この言葉が彼女の口から出たのは、現在の高校生の姿ではなく、幼い頃の自分としてだった。この事実に驚きつつ、池の辺りで出会った少女の姿が頭をよぎった。
過去と現在のレナの姿が交錯し、現実が歪む原因となっていることを彼女は実感した。自分自身の魂が何らかの形で分離し、時には戻るような奇妙な感覚が、彼女をますます混乱の渦に巻き込んでいた。
「私は⋯⋯どっちが本当の私なの⋯⋯!?」
途端に意識がはっきりと元の場所に戻り、目の前にいる少女が視界に捉えられた。レナは池の辺りに立ち、右手に泥臭いスマホを握っていた。自分とこの少女が同一人物であり、記憶も共有していることをレナは強く否定したかった。
少女の視線がレナを見つめた後、やがてそれはレナの背後へと移動した。
「レナ! やっと見つけたよ! 心配かけてごめん!」
感情を整理できないまま、レナは振り返ってトムを迎えた。

