見出し画像

小説『ワンダリングノート・ファンタジー』(20)声に呼ばれて

Chapter20


 大きなキリンの滑り台が目印の別名「キリン公園」では、巨大な噴水やメリーゴーランドのような、他にはない珍しい遊具まで揃っていた。ただ彼は、そういったモノには興味がなく、ただただひたすらに脳内物質がすり減るまで「砂のお城」の創造に夢中だった。

 「ねえ、トムってば! いつまでお砂場遊びしてるの!? 他にもたくさん面白いモノあるよ!? 滑り台やろうよ、滑り台〜!!」

「もうちょっとなんだよ。今、お城のツノを建ててるんだ。見て! こうやって、両手で固めながら伸ばしてるんだ」

「そんな長いツノ、何のために作るの? 誰も登れないよ?」

「違うよ、これは登るんじゃなくて、カッコいいからだよ。ダサダサなお城だったら、誰も来ないじゃん」

「ふーん。じゃあ、ここに階段を作っちゃえ。えい!」

「あっ! 何すんだよ!! それじゃ敵に入られちゃうだろ!? あっちいけよ、ばかレナ!」

「イ〜だ! ばかトム!」

 ──ふと、子供の頃の記憶が蘇ったトムはレナの存在が愛おしくなった。ちょっとした悪ふざけも、それは彼に対する興味の表れであり、邪険にすべきではなかったんだと後悔した。今はただ、会って謝りたい気持ちでいっぱいだった。

「どこにいるんだ!? レナっ!!」

 滑り台の方から彼女の声が聞こえたトムは、キリンの後ろ両足部分にある階段側に回った。階段の頂上はキリンのお尻の辺りにあり、そこからは胴体をくり抜いたトンネルが続いている。このトンネルを抜けると、滑り台の始まりに至り、そこからスロープを滑り降りる仕組みになっている。

「聞き間違いなんかじゃない⋯⋯確かにレナの声だった」

 トムは階段の手すりを掴みながら呟いた。登るつもりはなかったが、ふと記憶の中のレナが、笑顔で彼を呼ぶ姿が頭に浮かんだ。その誘いに応じるように、自然と階段を登っていた。

「レナが呼んでる⋯⋯行かなくちゃ」

 キリンの各脚はしっかりと地面に固定されており、安全に遊べるように設計されている。装飾的な頭と首は遊具としての機能は果たさないものの、公園の中央に立つキリンの姿は圧巻で、遠くからでも目を引く存在だった。幼いトムたちはこの滑り台で、キリンの内部を探検しながら楽しんでいた。

「あのトンネルをくぐったら⋯⋯レナに会える気がする」

 トムはくり抜かれたトンネルの先にある、確かな希望の光を見つめ心から祈った。


I feel like I'll meet Lena once I go through that tunnel...


第19話     第21話

いいなと思ったら応援しよう!