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事務所を買おうとして、公庫と保証協会に相談して諦めた話

行政書士の開業準備を進めるなかで、「事務所をどうするか」は大きな課題でした。

私の場合は自宅や学校、保育園といった家族の生活環境の周辺で物件を探しており、夫が所有するアパートの一室を候補の一つとして考え始めました。

「借りる」のが一般的だとは思いますが、夫は売却を検討している。
他の部屋からの家賃収入も事業収入の一部となるし、自己資金も3割用意できる。
そこで、「買う」という選択肢は現実的なのか?と考え始めました。

正直、難しいかもしれない。
でも、可能性があるなら検討したいとも思いました。

そこで、話だけでも聞いてみようと、日本政策金融公庫と信用保証協会に相談することに。
相談したことで、融資の現実と、創業期に見られるポイントを知ることができました。

以前、「行政書士試験後から合格発表まで、私が進めた開業準備」でも少し触れましたが、今回はそのときのことを詳しく書いてみます。

結果的に購入は見送ったのですが、この経験から得たものは大きく、開業前に相談して良かったと思っています。

これから開業される方が、資金調達や事務所選びを考える際の参考になれば幸いです。


なぜ事務所を買おうと思ったのか

行政書士の開業準備を始めた当初、私は事務所を「借りる」ことしか考えていませんでした。

行政書士の事務所は、自宅開業も可能です。
しかし私の場合、自宅住所を公開することに抵抗があり、別に事務所を構えたいと思っていました。

私はもともとフリーランスライターとして活動しており、仕事のほぼすべてをSNSとブログから獲得していました。行政書士になってからもライターの仕事は続けるつもりだったので、事務所の立地について特にこだわりはありませんでした。

ただ、家族の生活圏内で探したいとは思っていました。自宅や学校、保育園の近くであれば、開業後も家族との時間を大切にできる。

近所に良さそうなレンタルオフィスもありましたが、数年前から満室で、空きが出る気配がありません。

そんななか、夫が所有するアパートを今後どうするか、売却も含めて検討する話が出てきました。
そのアパートは、事務所として使うのに条件が良さそうです。

なんとか私が買い取って、事務所にできないだろうか?

そう考えたのがきっかけでした。

そのアパートの他の部屋には入居者がいて、家賃収入が見込めます。事務所として使いながら、他の部屋からの収入を事業の一部にできる。返済の負担も軽減できるかもしれない。

単なる事務所ではなく、収益物件としての側面もある。
それが、「もしかしたら」と思わせる要素でした。

私は開業資金として、ある程度の貯蓄を用意していました。
物件価格は2,000万円台で、自己資金は3割程度準備できる見込み。
残り1,500万円を融資でまかなえないかと考えていました。

この点も「相談してみる価値はあるかもしれない」と思った理由の一つです。

ただ、一方で不安もありました。

私はここ数年、子どもの手術や付き添い入院により、収入が不安定でした。開業前で実績がない。
融資を受けられる可能性は、正直低いだろうとも思っていました。

ただ、可能性がゼロではないなら、一度話を聞いてみたい。
まずは創業融資を掲げているところに話を聞いてみようと思いました。

そこで、日本政策金融公庫と信用保証協会に相談の予約を入れました。

日本政策金融公庫に相談して分かった現実

日本政策金融公庫は、創業融資に積極的な政府系金融機関です。
「開業前でも融資が受けられる可能性がある」と聞いていたので、まずここに相談することにしました。

電話で相談の予約を取ろうとしたのですが、子どもを連れての相談はNGとのことで、オンライン相談を提案されました。
当日は、結果的に電話での相談となったため、用意していた物件資料などは共有できず、口頭で状況を説明する形になりました。

担当者の方は丁寧で、まず創業融資の仕組みについて説明してくださいました。

「創業融資は、基本的に初回は1,000万円が限度です」

パンフレットやホームページには、もっと大きな金額が書いてあります。
しかし、それは実際に創業してからも融資を受けられる前提で、トータルでの金額の話なのだそうです。

初めから大きな金額が融資できるわけではなく、信用を積み重ねて、少しずつ融資していくイメージだと教えてくれました。

また、初回の創業融資は、見込み年商の2/3が基本とのこと。

「ライターと行政書士という事業規模を考えても、1,000万円を超える融資は厳しいと思います」

私が検討していた物件の価格は、その範囲を超えていました。

さらに、返済についても現実的な数字を示されました。

初回融資の借入期間は10年。金利の目安は2〜2.5%。月々の返済額を計算すると、かなりの負担になることがわかりました。

開業したばかりで、安定した収入がない状態で、その返済を続けられるのか。担当者の方の口調は優しかったですが、指摘は率直でした。

「ビジネスはスモールスタートが基本です。あなたの話から『なぜ借りるではなく、買うなのか?』が見えてこない」

その言葉が、一番心に残りました。

私は、家賃収入があること、自己資金が用意できていることを説明しました。でも、それは「買える理由」であって、「買わなければならない理由」ではない。

担当者の方は、複数の金融機関が分担して融資する「協調融資」なら可能性はあるかもしれないとも言ってくださいましたが、「私はおすすめしません」とはっきり言われました。

電話を終えて、私は自分の考えの甘さを痛感しました。

「創業融資=開業したい人を応援する制度」というイメージが、頭の中にありました。しかし実際は、「無理のない規模で、堅実に始められる計画かどうか」を見られているのだと分かりました。

私が考えていたのは、融資を受けられる理由ばかりで、「借りるではなく、買う必然性」を説明できていませんでした。

担当者の方の「私はおすすめしません」という言葉を聞いたとき、正直ショックでした。
でも同時に、少し冷静になれた気がします。

開業前に大きな負債を抱えることは、リスクでしかない。
賃貸で始めて、実績を作ってから考える。

それが、創業融資を受ける側にとっても、貸す側にとっても、自然な流れなのだと理解しました。

信用保証協会に相談して分かったこと

公庫に相談した後、次は信用保証協会にも話を聞いてみることにしました。

信用保証協会は、金融機関から融資を受ける際に保証人となってくれる公的機関です。創業融資の相談にも応じてくれると聞き、電話で予約を取りました。

電話したときに、「事業計画書を作成してからの方がいいですか? 少なくとも合格発表を待った方がいいでしょうか?」と聞いてみました。

担当者の方は、「今の段階でも大丈夫ですよ。明日とかどうですか?」と、とても気軽に答えてくださいました。

当日は、下の子を連れて窓口へ向かいました。

対応してくださったのは、男性2人。
穏やかな雰囲気で、丁寧に話を聞いてくださいました。

まず、保証協会の仕組みについて説明がありました。
保証協会が保証人の役割を担い、金融機関から融資を受けやすくする仕組みだそうです。

また、創業計画書の作り方のパンフレットもいただきました。
「これを参考に、まずは書類を作ってみてください」と言われました。

私の状況を説明すると、アドバイスは公庫の担当者とほぼ同じでした。

「事業として見たときに、『買う』必要性が伝わってこない。ビジネスはスモールスタートが基本です。多額の借り入れはおすすめしません」

ただ、こうも言われました。

「逆に言えば、そこの説得力がある計画書を作れるなら、金融機関に相談してみる価値はあると思います。自分で金融機関に直接相談してみても良いと思いますよ」

否定的な印象ではなく、「必要性を説明できれば可能性はある」という雰囲気でした。

最後に、「まずは書類を作ってみて、わからなければまた相談してくださいね」と言われて、面談は終わりました。

保証協会に相談して分かったのは、融資を受けるためには「事業計画の説得力」が何より大切だということです。

公庫でも保証協会でも、同じことを言われました。

「なぜ今、買わなければならないのか」

私の場合、「買える条件は整っている」と思っていましたが、「買う必然性」を説明できていませんでした。

担当者の方々は、決して冷たい態度ではありません。
むしろ、親身になってアドバイスをくださいました。

でも、その優しさの裏には、「この計画では返済が苦しくなる」というメッセージがはっきりと込められていました。

創業計画書の作り方、勉強になりました!

諦めることにした理由

公庫と保証協会、2つの機関に相談して、私は現実に引き戻されました。

相談に行く前は、「もしかしたら買えるかもしれない」と思っていました。
自己資金もある、家賃収入もある。
自分では「可能性はある」と思っていました。

しかし、実際に話を聞いて、多額の借り入れと、その返済のことを考えたとき、怖くなりました。

開業したばかりで、収入が安定しない状態。今までと同じようにライターの仕事も続けるつもりではありますが、以前と同じ仕事量に戻るには時間がかかると思います。

その中で、毎月決まった返済が続いていく。
もし思うように売上が立たなかったら?
返済が滞ったら?

想像すると、不安しかありませんでした。

正直、公庫や保証協会の担当者が言っていたことは、その通りだと思いました。

「ビジネスはスモールスタートが基本」

私の本業は、不動産賃貸業ではありません。
行政書士として、ライターとして、これから実績を作っていく段階です。

その段階で、大きな負債を抱えることが、本当に必要なのか。

私の中では、答えはほぼ出ていました。

夫に相談しました。

「やっぱり、買うのは無理そう。でも、事務所は必要だから、借りる方向で考える」

そう伝えたとき、夫は少し考えてから言いました。

「だったら、俺が部屋を貸すよ。売却はやめる」

正直、ほっとしました。

賃貸を探す手間も省けるし、何より、家族の生活圏内で事務所を持てる。
買うことは諦めたけれど、結果的に理想に近い形で事務所を確保できることになりました。

諦めることは、失敗ではないと思いました。

むしろ、無理をして大きなリスクを抱えるよりも、今の自分にできる範囲で始める。それが、正しい選択だと感じました。

「応援する」と言ってくれた夫には、感謝しかありません。

相談した経験から得たもの

結果的に購入は見送りましたが、相談したことで「融資の考え方」を現実的に理解できました。

①融資の現実を知ることができた

創業融資について、漠然としたイメージしか持っていませんでした。
「開業したい人を応援してくれる制度」くらいの認識でした。

しかし実際は、「無理のない計画で、堅実に始められるかどうか」を厳しく見られます。

たとえば公庫の場合、初回融資は1,000万円が上限になることが多いそうです。また、見込み年商の2/3が目安になること、借入期間は10年、金利は2〜2.5%が一般的ということも教わりました。

具体的な数字を知れたことは、今後、行政書士として起業支援をしていく際に役立つと思いました。

②「必要性」と「可能性」は違うと気づけた

私は、「買える条件が整っている」ことを「買うべき理由」だと思っていました。
しかし、担当者の方々が何度も聞いてきたのは、「なぜ、買わなければならないのか」。

自己資金があること、家賃収入があることは、「買える可能性」であって、「買う必要性」ではない。
たとえば「家賃がもったいない」「家賃収入もある」という理由は、購入の動機にはなりますが、融資の説明としては弱い。

この違いを理解できたことは、融資だけでなく、事業判断全般に通じる大切な視点だと思います。

③スモールスタートの重要性を実感した

「ビジネスはスモールスタートが基本」

この言葉を、公庫でも保証協会でも言われました。

開業前に大きな負債を抱えることは、それだけリスクも大きい。
まずは小さく始めて、実績を作ってから次のステップを考える。

頭では分かっていたつもりでしたが、実際に相談して、改めてその重要性を実感しました。

公庫も保証協会も、親身になって話を聞いてくださいました。
否定するのではなく、「この計画では厳しい」と率直に教えてくれました。

私自身の開業準備としても勉強になりましたし、将来、行政書士として起業支援をする立場になったときにも役立つ知識だと感じました。

行政書士として歩んでいく上で、この学びを必ず活かしていきたいと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後もnoteマガジン「行政書士 開業までの準備記録」で、行政書士の開業準備についての体験記を更新していきます。
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