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日本美術のキホンの木。『学芸員が教える日本美術が楽しくなる話』ちいさな美術館の学芸員

最近、友だちが美術館や博物館に誘ってくれるようになりました。きれいなものは好きだし、誘ってもらえるのもうれしいので、いつも喜んで出かけるのですが、もっと知識があったらなあと思うこともしばしば。

そんなとき、目にとまったのがこの本です。初心者にやさしそうなポップな表紙とタイトル。なんと、作者の学芸員さんはnoteでたくさん書いていて、それをまとめたのがこの本だとか。灯台下暗し。

日本には昔から、いろんな創作物がありました。でも、それを美術という言葉で表現するようになったのは、明治時代になってから。西洋美術由来のジャンルに、絵画・彫刻・工芸・刀剣・染織・建築なんかをあてはめたのだそうです。

でも、西洋美術と日本美術は微妙にズレています。例えば絵画。日本の絵はもともと額縁におさまったものではありません。壁に掛ける掛け軸、手元で開いたり巻いたりしながら鑑賞する絵巻、開閉式の屏風、室内を仕切るふすま…etc 鑑賞するだけでなく、実用品の機能をもっているのが、日本美術のおもしろいところ。

たとえば、日本の絵画は、どうして額縁ではなく掛け軸になっているのか。どんな素材に、どんな絵の具で描かれているのか。絵を描いたのはどんな画家たちなのか。奈良時代、鎌倉時代、江戸時代にはどうだったのか。学芸員さんは、初歩の初歩からやさしく教えてくれます。

例えば、日本画の展示はなぜ1ヶ月くらいしかなくて短いのか。西洋画は、もっと長期で展示をしてくれるのに。理由は日本画の素材にあります。くるくる巻いて保存してある日本画は、油絵の西洋画のようにずっと飾っておくものではないそうで、光にあたると痛みやすいのだとか。

やまと絵って言葉も、この本で初めて知りました。日本に仏教が伝来して以来、絵画や工芸は中国文化を吸収するのに精一杯。ところが、平安時代になると日本独自の文化を生み出そうというムーブメントがおこり、絵画でも唐絵に対してやまと絵が誕生したのだとか。

中国の故事や人々、風景を描いたのが唐絵。日本の風景や人々を描いたのがやまと絵。残っているものはないのですが、史料をみると屏風がたくさんつくられたそうです。

鎌倉時代になると、中国から水墨画という新しいスタイルが伝わったので、これが唐絵になり、平安時代からの絵画スタイルがやまと絵になります。白黒だけで山や岩のゴツゴツしたものを描く水墨画(唐絵)と、鮮やかな色彩の花鳥風月を表現したやまと絵。それから、絵巻物もやまと絵

室町時代になると、やまと絵を得意とする流派、土佐派が登場するそうです。宮廷の絵所預の要職を世襲して、宮廷貴族好みの絵を描いたので、土佐派=やまと絵のイメージがつきました。というか、絵画が血縁ってすごいですね。やまと絵とは関係ないですが、狩野派も血縁だそうで、二度びっくり。やまと絵の琳派は、私淑でつながった流派だそうです。

こんな感じに、仏像・やきもの・漆工・建築・刀剣なんかについて、見どころや歴史をよみやすく紹介しつつ、縄文・弥生・古墳時代から飛鳥・奈良・平安・鎌倉・室町・安土桃山から江戸時代・そして幕末・明治以後の現代まで日本美術史の解説が続きます。

やきものパートには、なんと縄文土器がありました。日本人には見慣れたスタイルの土器ですが、縄で文様を付けるパワフルな技法は日本独特のものだとか。ちょっと…いえ、かなり縄文土器を見る目が変わりました。

日本美術のスター作家について、まとめた章も魅力的。運慶・雪舟・尾形光琳・伊藤若冲・葛飾北斎・富岡鉄斎などなど。そして、これだけは知っておきたい名品・一品では百済観音、阿修羅像、東大寺伽藍、源氏物語絵巻、鳥獣戯画…などから金比羅宮障壁まで。どこが、どういう理由ですごいのか、厳選セレクトがうれしいです。

まとめは、美術館へ日本美術を見に行ってみよう! 作品はいつ見られるのか、展示室の見方や解説について、「中の人」ならではの、美術館や博物館の楽しみ方を教えてくれています。

詳しい人にはあたり前かもしれませんが、私は初めて知ることが多くて、わくわく。この1冊を読んだだけで、ちょっと美術館・博物館めぐりがランクアップできそうな気がしてきました。おすすめ。

次は、こちらも読んでみたいです。

かわいいイラストと、おいしそうな料理。芸術も文化も、どちらも大好きな人におすすめな本。


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