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AIを活用したコンタクトセンター『顧客価値創造部門』に向けた次なる一手とは?

記事をご覧いただきありがとうございます。株式会社IVRyでコンタクトセンター事業統括をしている岩間です。

2025年4月に入社し、対話型音声 AI SaaS「アイブリー」を活用したコンタクトセンター運営における課題解決に向けたご提案や、AIを活用したコンタクトセンターの次世代化推進を担当しています。

私は長らくコンタクトセンター/BPO運用側に長らく身を置いていました。IVRyに入社した動機については入社エントリを読んでいただけると嬉しいです。

この記事ではコンタクトセンター業界におけるAI活用の現状と今後を整理していこうと思います。

コンタクトセンターは今、変革の岐路に立っている

日々、お客様の最も近くで、企業の「顔」として真摯に声を受け止めているコンタクトセンターのコミュニケーターの皆さんに、心からの敬意を表します。

コンタクトセンターはコストセンターなのか?

長らく、コンタクトセンター業界にはそんなイメージがつきまとっていたかもしれません。また企業からコールセンターを受託するアウトソーサーであれば決められた業務プロセスを高い品質と安いコストで継続的に運用していくことが求められていることが多いのではないでしょうか。
しかし、もはやその常識は商習慣は長くは続かないのではと考えます。
お客様の声(VoC:Voice of Customer)がリアルタイムで集まる重要な場所。コンタクトセンターは企業の未来を左右するアイデアが集まり、成長戦略を描く上で欠かせない「戦略拠点」にほかなりません。

ただ、その計り知れないポテンシャルを最大活用するためには、コンタクトセンター業界が直面している構造的な課題から目をそらすことはできません。
そしてこの先は人とAIが共存するコンタクトセンターへの変革は避けては通れない現実であると認識しています。
本記事では、その課題を乗り越え、コンタクトセンターが本来持つ価値を最大限に活用するための「羅針盤」となれば嬉しい限りです。

コンタクトセンターが直面する「4つの壁」

1. 人材採用の壁:「人が採用できない」という現実

まず、深刻なのが「人材採用の壁」です。
ご存知の通り、現在の日本では多くの産業で人手不足が叫ばれており、特に専門的なコミュニケーションスキルが求められるコンタクトセンターのコミュニケーターの採用は、年々その難易度を増しています。単に「電話に対応する」だけでなく、複雑なサービスや製品を理解し説明する、お客様の感情に寄り添う高度なスキルを持つコミュニケーターの採用は、今後も難易度が増すばかりです。

2. 人件費高騰の壁:圧迫される経営

次に立ちはだかるのが、「人件費高騰の壁」です。継続的な最低賃金の上昇や、貴重な人材を確保するための待遇改善は、企業として、もしくは企業から受託するコンタクトセンター/BPO企業の当然の責務です。
しかしその一方で、従来のような「人の数」に頼る労働集約型のモデルのままでは、コストが収益を圧迫し、事業の継続性そのものを脅かしかねない、という厳しい現実に直面しているコンタクトセンターも少なくないのでは。

3. 運用複雑化の壁:求められるスキルの継続的な増加

3つ目の壁は、日々の運用の難易度を高める「運用の複雑化」です。
お客様との接点は、もはや電話やメールだけではありません。チャット、SNS、アプリなどチャネルは多様化し、提供するサービスや製品も日々高度化しています。
その結果、一人のコミュニケーターが習得すべき知識やスキルは増え続け、運用に必要不可欠なマニュアルやトークスクリプト、FAQは分厚くなる一方。
育成にかかる時間とコストは増大し、応対品質の維持はかつてないほど困難になっています。

4. 高い離職率の壁:負のスパイラル

そして、これら3つの壁が重なり合うことで生まれるのが、最も根深く、そして悲しい「高い離職率の壁」です。
「人が足りないから、一人当たりの負荷が増える」 「複雑な業務と絶え間ないクレーム対応で、心が疲弊していく」 「それなのに、待遇はなかなか改善されない」 こうしたストレスや疲弊感は、働く管理者やコミュニケーターのエンゲージメントを削ぎ、結果として離職という選択につながります。
そして、人が辞めれば、残ったメンバーの負担はさらに増す…そして採用と育成を絶え間なく行い続けるという、出口の見えないスパイラルに陥ってしまうのです。
これらの壁は、決して他人事ではありません。
今、この瞬間も多くのコンタクトセンターの現場で起きている業界全体の課題です。では、この強固な壁を乗り越える方策はないのでしょうか。

「顧客対応部門」から「顧客価値創造部門」へ

前章で挙げた「4つの壁」をどう乗り越えればよいのでしょうか。
その答えは、コンタクトセンターだけで完結する業務改善にあるのでないと考えます。壁を乗り越える鍵は、コンタクトセンター自身の役割を再定義し、社内のあらゆる部門を巻き込む「ハブ」へと進化することにあります

AIの導入と活用を成功させるには、コンタクトセンター単体として活動するのではなく、まさに「全社に向けた顧客価値を創造・発信していく部門」としての役割へ昇華させる必要があります。では、具体的に誰を、どのように巻き込んでいけばよいのでしょうか。

パートナー①:経営企画・戦略企画部門

お客様から寄せられる膨大な声(VoC)を集め、蓄積していくだけでは何も役には立ちません。
AIという最新の技術を活用し価値化し、「顧客が本当に求めていること」を構造化されたデータに変えて、アウトプットすることが必要です。
「今月、最も多かったお問い合わせTOP10」といった単純なレポートでは価値がありません。
「新製品Aに関する問い合わせが、先月比で30%増加。その背景には〇〇という要因があるため、より具体的なキーワードを抽出し要因を特定します」といった、具体的な分析とアクションプランまで提示が必要です。
AIで分析したVoCを、「市場のリアルなインサイト」として提供することで、コンタクトセンターは事業戦略やサービス改善に欠かせないパートナーとなることができます

パートナー②:情報システム部門

情報システム部門は、単なる「システム管理者」ではありません。
AI活用というテクノロジーロードマップを共に描き・進む、最も重要なサポーターです。プロジェクトの初期段階から主要なステークホルダーとして巻き込み、セキュリティ要件や個人情報の取り扱いになどについて擦り合わせていくことが必要となります。
「このAIを導入したい」と一方的に要求するのではなく、「CRMの顧客情報と連携し、よりパーソナライズされた対応を実現したい。そのためには最適なAPI連携と、万全なセキュリティ体制を共に検証してほしい」と働きかける事が必要です。
日頃のコンタクトセンター業務では触れることは少ないかもしれない「共通言語」での対話が、スムーズで安全なAI導入プロジェクトの生命線となると考えます。

パートナー③:経営層

そして最も重要なのが、経営層を「最大の味方」につけることです。
そのためには、こちらも「共通言語」での対話が必要となります。
「コミュニケーターの後処理時間が30秒短縮できました」というレポートでは、経営層の心は動かないでしょう。
「対話型AIの導入により、オペレーターの生産性が15%向上し、年間〇〇円の人件費抑制に繋がりました。さらに、蓄積されたデータ分析から解約率(チャーンレート)を5%改善できる可能性が見えており、これは顧客生涯価値(LTV)の〇〇円向上に相当します」 このように、「コスト削減」と「売上・利益への貢献」という両面から、AI活用のROI(投資対効果)を具体的に示すことで、経営層はコンタクトセンターを「コスト」ではなく「投資すべき価値創造拠点」として認識してくれるはずです。
コンタクトセンター単体から、社内の「顧客価値創造部門」へ。
この役割変革こそが、冒頭の壁を乗り越える原動力となるはずであり、この変革を実現するための重要なテクノロジーが対話型音声AIになると考えています。


AI導入の成功へのロードマップ:スモールスタートから始める導入プロセス

先ほど記載した「4つの壁」を解決するために、最近ではコンタクトセンターへの対話型音声AIの導入検討や導入が進んできていると認識しています。
この動きはこの先もコンタクトセンター運用の難易度が更に上がっていき、人によるオペレーションだけだと持続可能性が低くなると考えられているからではないでしょうか。
ただ、対話型音声AIを導入すると聞くと、ハルシネーションやセキュリティリスク、失敗の許されない一大プロジェクトのように感じてしまうかもしれませんが、その心配はありません。
成功の要因は、壮大な計画よりも、着実なPoCから始めていくことにあると考えてます。
ここでは、誰でも安心して取り組める、対話型音声AI導入を成功に導くための「5つのステップ」をご説明したいと思います。

Step 1:目的の明確化と課題の特定(Why?)

まず、最も重要な最初のステップは「なぜ対話型音声AIを導入するのか?」を明確にすることです。最近よく聞くからや、トップダウンでの指示だからではありません。コンタクトセンターが最も解決すべき課題は何なのでしょうか。
「お客様の待ち時間を10%短縮したい」「後処理業務(AHT)を15%削減して、コミュニケーターの精神的負担を軽くしたい」「WEBには掲載しているよくある質問の電話での自己解決率を50%向上させたい」このように、具体的な数値目標(KPI)として「ゴール」決め、プロジェクトをイニシエーションすることが重要です。

Step 2:スモールスタート(PoC)の実施(How Small?)

ゴールを決めたら、いきなりコンタクトセンター全体プロセスを変更するのではなく、まずは一部業務プロセスからの導入を検討することが肝要です。これがスモールスタート、いわゆるPoC(Proof of Concept:概念実証)です。
特定の時間帯や問い合わせ窓口や、特定の問い合わせ内容に的を絞って試してみることをお勧めします。例えば、「現在応答できていないあふれ呼だけに適用する」や、「営業時間外の問い合わせをAIで一次受付する」といった限定した業務範囲を選定します。ここでの目的は、完璧な結果を出すことではありません。「音声認識精度はどうか、顧客に受け入れられるのか、導入に対しての課題は何か」というPoCの検証結果を得ることが大切です。

Step 3:効果測定と評価(Evaluate)

スモールスタートを終えたら、リフレクション(振り返り)が必要です。Step 1で立てた「ゴール」に、どれだけ近づけたを検証します。
設定したKPIを元に、「AHTは実際に何秒短縮できたか?」「自己解決率は何%上がったか?」といった客観的なデータで効果を測定します。同時に、実際にツールを使ったコミュニケーターへのヒアリングも忘れてはなりません。「本当に楽になったか?」「逆に不便な点はなかったか?」といったVoE(Voice of Employee)は、数字だけでは見えない対話型音声AIの価値や課題に気付くことができるはずです。

Step 4:横展開と本格導入(Scale)

PoCで確かな手応えと成功モデルが得られたら、いよいよ本格展開のフェーズです。PoCの成功体験を元に、営業時間の拡大や全窓口へと導入範囲を広げていきます。
この段階に至って初めて、本格的な投資の議論も現実味を帯びてきます。なぜなら、PoCで得られた「KPIの結果データ」という、経営層を説得するための強力な武器を得ることができているからです。PoCの成功体験が、大きな変革への一歩となるはずです。

Step 5:継続的な改善サイクル(Improve)

最後に、忘れてはならないのが「対話型音声AIは導入して終わりではない」という事実です。対話型音声AIは、分岐やFAQ、固有名詞を登録すれば完璧に働き続けるテクノロジーではありません。導入当初は新しく配属された「新人コミュニケーター」のようなものです。
お客様の反応や、現場のコミュニケーターからの「もっとこうして欲しい」というフィードバックを元に、継続的に「チューニング」していく運用体制が不可欠で、IVRyではカスタマーサクセスチームがこの役割を担います。
このロードマップに沿って一歩ずつ進めていくことで、対話型音声AIの導入の不確実性やリスクは低減させることができます。

AI導入成功確率を左右するナレッジマネジメント

対話型音声AI導入へのロードマップはご説明した通りですが、導入の成功確率を上げる重要なポイントが「ナレッジ」です。
コンタクトセンターにおけるAI活用において、学習データとなるナレッジがなければ、回答精度も変わってきます。このナレッジの質と量にかかっていると言っても過言ではありません
その答えが、KCS(Knowledge-Centered-Service)という考え方にあると考えます。

KCSとは? ―「知の循環」を生み出す仕組み

KCSと聞くと、何か難しい専門用語のように感じるかもしれませんが、その思想は驚くほどシンプルです。
それは、「お客様に対応しながらナレッジを作り、そのナレッジを使いながらさらに磨き上げる」という、生きた「知の循環」を生み出す仕組みのことです。
一部の担当者が分厚いマニュアルやFAQを作る、という旧来のやり方ではありません。現場のコミュニケータ全員が主役となり、日々の業務の中で新しい知識を捉え、既存の知識を更新していく。KCSは、このような活動を文化として根付かせるための方法論なのです。

なぜ今、KCSが重要なのか?

この「知の循環」は、AI時代のコンタクトセンターに3つの大きな価値をもたらすと言われています。

  1. AIのため:回答精度を飛躍的に向上させる
    AIにとって、KCSで整備されたナレッジは最高の教科書です。構造化され、常に最新の状態に保たれた質の高いナレッジを学習させることで、AIの回答精度は飛躍的に向上します。AIの「頭脳」を賢く育て続けるための、唯一無二の方法です。

  2. 人のため:オペレーターの価値を最大化する
    KCSは、コミュニケータの役割を「ナレッジの利用者」から、「ナレッジの創造者(ナレッジワーカー)」へと進化させます。コミュニケータ自身が作り、育てたナレッジがAIや同僚の役に立つという実感は、仕事への誇りとエンゲージメントを高めます。これは、コミュニケーターの専門性を高め、その価値を向上させるための、強力な武器となります。仕事の価値が向上することで待遇や今後のキャリアの選択肢も増えていくはずです。

  3. 組織のため:暗黙知を「組織の財産」に変える
    優秀なベテランコミュニケーターの頭の中にだけあった、言葉にしにくい対応のナレッジや暗黙知。KCSは、こうした貴重な知識を誰もが使える「形式知」として組織に蓄積します。これにより、新人教育は効率化され、応対品質は平準化し、コンタクトセンター全体が持続的に成長できる「学習し続ける組織」へと昇華させることが可能となります。

対話型音声AIの導入は、ゴールではありません。
KCSを通じてAIという「頭脳」を育て、組織全体の知識レベルを向上させていく。この活動こそが、コンタントセンターが真の価値創造拠点へと進化するための、最も重要なピースであり、AIの人のハイブリッド運用というモデルを確立することが可能となります。

AI時代に「コンタクトセンター」の価値はさらに輝く

IVRyが提供する対話型音声AIは、コンタクトセンター業界のコミュニケータから仕事を奪う存在ではないと考えています。
むしろ、単調な作業や精神的負荷の高い応対から解放し、人間にしかできない「共感」「創造」「複雑な問題解決」といった、より付加価値の高い業務に集中させてくれる最高のパートナーです。

WEB掲載のよくある質問に1日何回も回答すること、決められた聴取項目(名前、電話番号、会員番号など)を会話の冒頭に必ずヒアリングすることなど、定型業務は24時間365日対話型音声AIで対応することが可能です。
そしてコンタクトセンター業務を支援するコンサルタントやBPR担当、スーパーバイザーが実施している業務プロセスやフローの可視化、型化、マニュアル化やKCSに準拠したナレッジマネジメントが今後のコンタクトセンターにおけるAI活用において非常に重要になってきます。
コミュニケーターの役割も顧客応対者からナレッジクリエイターに昇華されていくと考えます。この流れはコンタクトセンター業界や、働く多くの方々の価値向上に必ず繋がっていくはずです。

労働集約から知識集約への転換のチャレンジをぜひ一緒に推進していければ嬉しい限りです。

この記事を読んで「IVRyのことがちょっと気になるな」と思っていただけた方や、AI×コンタクトセンターの未来についてご興味をお持ちいただいた方、またコンタクトセンターに携わる方にとって少しでも有意義なお時間になればと思います。
ご質問などもお受け予定です!みなさまのご参加お待ちしております!


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