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20年眠っていたギターを、復活させる|ビートルズと私の未完の約束【楽事001】

楽事001|音楽は、いつでも戻れる場所だ。

高校1年生の冬、年賀状を配りながら思い描いていた。あのギターを手にする日のことを。


死ぬまでにやりたいことがある。ビートルズの全パートを、自分一人で演奏して宅録する。


8万6千円の決断

1994年の冬。高校1年生だった私は、年賀状配達のアルバイトで8万6千円を稼いだ。

使い道は、最初から決まっていた。

向かったのは、栄にあった名曲堂。当時はビジュアル系バンドが全盛期で、友人たちは人気アーティストのシグネチャーモデルを買い求めていた。しかし私はビートルズに心酔していた。

選んだのは、Fender Japan Stratocaster 62年モデル。リッケンバッカーやエピフォンカジノの様に、一見ビートルズすぎない、しかしビートルズも使用している。——そのバランスが決め手だった。

高校2年生の冬、テレビに釘付けになった。テレビ朝日系列で放映されたビートルズ・アンソロジーだ。今の様に昔のPVや動画に簡単にアクセスできない当時、動くポール・マッカートニーのハスキーボイスと童顔に、完全にやられた。私はジョンではなく、ポール派だ。今もそれは変わらない。

あの放映以降、熱狂に拍車がかかった。ビートルズだけでは飽き足らず、ポールのソロアルバムへと聴き進んでいった。バナナレコードをはじめ、名古屋市内の中古CD屋をはしごした。限られた小遣いで、一枚ずつ集めていった。

やがてCDだけでは足りなくなった。LPやEPにも手を出し、VHSのミュージックビデオまで集めた。映像で見るポールの演奏が、また新たな扉を開いた。

当時は人前で演奏する勇気もなかった。高校・大学時代は、マーシャルの超小型アンプにヘッドホンを繋いで、一人で練習していた。それでも良かった。ギターを弾いている時間が、純粋に好きだったから。


一目惚れのアコギ

大学時代、アコギが欲しいと思っていた頃、偶然通りがかった楽器屋のショーウィンドウに目が止まった。

Epiphone SQ-180。

1950年代に活躍したエヴァリー・ブラザーズのシグネチャーモデル、Gibson J-180のエピフォン版だ。ダブル・ピックガードと星型インレイが特徴のミニ・ジャンボアコースティックギター。3万円弱。細めのネックも気に入った。

目が合った瞬間に、決まっていた。


20年の眠り

社会人になってから、触る機会が激減した。

最初はギタースタンドで埃をかぶり、やがてソフトケースの中へ。気づけば20年以上、部屋の片隅で眠り続けていた。

捨てなかった。売らなかった。それはきっと、いつか戻ると知っていたからだ。


大学時代からの未完の約束

死ぬまでにやりたいことリストがある。

その中のひとつ——ビートルズの曲を全パート自分で演奏して、宅録する。

これは大学時代からの夢だ。ギター、ベース、ドラム、ピアノ、ボーカル。すべてのパートを一人で演奏し、多重録音でひとつの音楽として完成させる。技術的には可能な時代になった。あとは、やるかどうかだけだ。


高くないモデルを、一生手放さない理由

決して高価なモデルではない。しかし買い替えるつもりはない。

一生懸命悩んで、姿形に惚れて買ったギターだ。それだけで、一生手放さない理由になる。

後から知ったことがある。90年代初頭のFender Japanのストラトキャスターは、フジゲン製だ。ボディの木の質が良いと言われている。近年、現行の市販ギターと比べて再評価される動きもある。高校生の私が直感で選んだギターに、そういう背景があったとは。

値段ではなく、惚れたかどうか。それが、物との付き合い方の基準だと思っている。


今の財力で、復活させる——その道は、これから

アラフィフになった今、決めた。

眠っていた2本を、リペアとパーツアップグレードで復活させる。高校生の私には買えなかったパーツが、今なら手が届く。当時の自分が夢見た音を、今の自分が実現する。

具体的な方法はこれから調べる。どのピックアップに交換するか。どのリペアショップに持ち込むか。Epiphone SQ-180の弦とナットはどう選ぶか。その記録は、続きの記事として書いていく。

これは単なるギターのリペアではない。大学時代から積み残してきた約束を、果たすための第一歩だ。


脳を喜ばせる、音楽という選択

マラソンを走る。テニスをする。サウナで整える。大学院で研究する。

そしてギターを弾く。

これらはすべて、脳を喜ばせるための行為だ。
演奏していると、脳のいろいろな場所が一気に目を覚ます感覚がある。身体を動かすことと、音楽を奏でることは、脳にとって同じ「喜び」だ。

そして全パートを自分で演奏したいという夢の原点は、ポール・マッカートニーへの憧れだ。ギター、ベース、ピアノ、ドラム——ポールは一人で何でも弾いてしまう。そのマルチプレイヤーとしての姿に、ずっと惹かれてきた。

まず最初に弾きたい曲は決まっている。Blackbirdだ。アコギ一本で成立する、あの曲から始める。

ビートルズは、まだ待っていてくれている。


あなたが「いつか再開したい」と思っているものは何ですか?


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