【探偵コメディ】小学生探偵 小寺理緒〈36〉ラクガキ犯の誤算
(注意)
この作品は連載ミステリで、記事の中で事件の犯人などが明かされています。
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〈36〉ラクガキ犯の誤算
「え?高橋が犯人じゃない?」
理緒から、『七つ首学園の怪事件』の犯人は高橋ではないと聞かされた先生は、鷹羽にそれを聞かされた時の理緒と、全く同じ反応を示した。
理緒は涙を流しながら話した。
「さっき私、鷹羽くんから大事なことを聞かされたと言いましたよね。その大事なことというのは、この『七つ首学園の怪事件』の犯人が高橋じゃないということなんです。私、実はこのラクガキを見たあと、犯人を知ってしまったミステリをどうしても読む気になれなくて、犯人は高橋だと思い込んだまま、本を読まずに捜査を進めてしまったんです。それは探偵としてあるまじき行いでした。それで鷹羽くんを犯人あつかいしてしまったんです。でも、鷹羽くんは『七つ首学園の怪事件』をちゃんと最後まで読んでいました。だから知っていたんです。犯人は高橋じゃないって。」
「うそでしょ…」
「本当です。私も鷹羽くんに言われたあと、本を最後まで読みました。高橋はたしかに一旦、犯人だと名乗り出ます。でも本当は犯人じゃなくて、その後、高橋は真犯人を見つけ出すんです。」
理緒は本のページをめくり、なおもこの事実を受け入れられない様子の先生に、そのシーンを見せた。
「ほんとだ。信じられない…」
先生は青ざめていた。
理緒は再びラクガキのページを開いた。
「このラクガキ、最後まで本を読んだ人が書いたものじゃないんです。最後まで読んだ人なら、真犯人の名前を書きます。このラクガキを書いたのは、途中で読むのをやめて、犯人は高橋だと勘違いしている人なんです。高橋が犯人じゃないと鷹羽くんに教えられてから、私がずっと引っ掛かってたのは、先生とのあの会話だったんです。先生は高橋が犯人だと、あの会話ではっきり言ってました。もう一度言いますが、ラクガキ犯は、高橋が犯人だと勘違いしている人です。残念ながら先生は、あの会話で自分がラクガキ犯だと、自白していたんです。」
先生は何も答えない。しかし、心に余裕がなくなっていることは、その深く刻まれた眉間の皺から十分伝わってくる。
「先生、これは私の推測ですが、先生は高橋が犯人と名乗り出たところで、本を読むのをやめてしまったんじゃありませんか?高橋をカッコいい男子だと言ってましたよね?その高橋が犯人で、裏切られたと思って…」
「やめてよ!そんなわけ…」
先生の目は明らかに泳いでいた。
一瞬、取り乱した先生だったが、再び強い力を両目に込めると、堰を切ったように反論した。
「たしかに!たしかに私は、『七つ首学園の怪事件』を最後まで読んでないよ!訳あって、読むのをやめたのよ。だけど、もしかしたら、他にも犯人は高橋だと勘違いしている人がいて、その人がラクガキを書いたかもしれないじゃない!?生徒が休み時間に途中まで読んで書いたとか、他の先生で読んだことある人がいたとか、あり得ないことじゃないよ。その可能性がある以上、私を犯人とすることはできません!」
それはたしかにその通りだ。限りなく疑わしくあるものの、これだけでは彼女が犯人であるという、決定的な証拠にはならない。
しかし、理緒は動じなかった。
「先生が犯人だと指し示しているのは、そのことだけじゃないんです。これを見てください。」
理緒は、持ってきていたもう一冊の本を机に置き、『七つ首学園の怪事件』の横に並べた。そう、例のスケッチブックである。
「何それ?ラクガキとぜんぜん関係ないじゃない。これが何だって言うの?」
理緒は空き家の猫の絵を開いた。
「先生、私の絵に、おじいちゃんはいないんです。」
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