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【探偵コメディ】小学生探偵 小寺理緒〈16〉村の祟りは世界へ羽ばたく

〈16〉村のたたりは世界へ羽ばたく

 無事、一人目の取り調べを終えた理緒は、ホッと胸をなでおろしていた。
「ふぅ。なんとかなった。それにしても、私が探偵だって何で知ってたんだろ?」
理緒の探偵マニアぶりは、学校ではなかなか有名だった。それに気づいてないのは、当の理緒くらいなのである。

 それから、理緒は裏山へつづく坂道を登りながらつぶやいた。
「次はダニエルくんだな。」
 ダニエルは、この春、町に越してきたアメリカ人で、山の中腹に小さな家を立て、家族で暮らしているのだった。家に行ったことはなかったが、丘の上に暮らすアメリカ人というだけで、理緒はなんとなくあこがれを抱いていた。
「どんなステキな家なんだろ?ちょっと楽しみ!」

 しかし、そんな理緒を待ち構えていたのは、オシャレな洋館でもなく、かわいいカントリーハウスでもなく、時代劇に出てくるような、純和風の木造家屋だった。
「ここが、ダニエルくんの家?」
 戸惑う理緒の姿を見つけたらしく、家の中からダニエルが出てきた。
「オー、小寺サーン。ボクの家にアソビに来てくれたんですか?ウェルカムでーす。」
ダニエルはカタコトの日本語で理緒に話しかけた。フレンドリーなところは、さすがアメリカ人という感じだか、やはり背後の家がその姿とぜんぜん調和してない。

 「この和風の建物が、ダニエルくんの家なの?」
理緒が尋ねると、ダニエルは自慢げに胸を張った。
「ソウです!とてもリッパな家でしょ?」
「いや、立派なんだけどさ、なんで和風なの?アメリカには、こういう家ないよね?」
 ダニエルは、コホンと息をついてから、さも得意げに話し出した。
「えー、じつは、ぼくの父が、ジャパニーズミステリがとても好きなのです。父は若いころから、たくさんのジャパニーズミステリを読みました。さらに、それがキッカケで日本の文化も学ぶようになり、やがて、父は夢を描くようになりました。いつか日本にヒッコシて、日本ふうの家にすみたいと!」
「そうなんだ…」
 ダニエルは続ける。
「父は言ってました。ジャパニーズミステリ、世界No.1!とくにヨコミゾのキンダイチシリーズが好きね。あの古くて怖い村が、とってもビューティフル!でも、父はこの町のことも、とても気に入っていますヨ。まるで、ヤツハカムラみたいだと。」
「それ、ほめてないよ!」

 理緒はダニエルの妙な話を切り上げて、さっさと本について質問することにした。
「あの、ダニエルくん。この本、図書室で借りたよね?」
理緒はカバンから、『七つ首学園の怪事件』を取り出した。
 すると、ダニエルは両手を上に向け、肩をすくめて困った顔をした。アメリカ人がよくやる、あの「お手上げ」みたいなポーズである。
「オー。その本、借りました。ナナツクビというのが、ヨコミゾっぽい気がしたのデス。でも、その本、漢字が多くて読めませんでした。ボク、ひらがなしか読めないんです。」
 「そっか。じゃあさ、その時、このラクガキはあった?」
理緒はラクガキをダニエルに見せた。
「オーノー!本にラクガキ、許せないネ!ボクが見たときにはなかったですヨ!」
ダニエルはプンプン怒っている。

 最後にもうひとつ、理緒はダニエルに質問した。
「ねえ、ダニエルくんの知り合いに、高橋くんか篠原さんって人いない?うちの学校の生徒なんだけど。」
すると、ダニエルは瞬時に陽気な顔に戻ってこう言った。
「オー!シノハラさんは知ってます。六年生で、山を降りた団地に住んでるネ。ときどき漢字を教えてもらってマス!」
 これは大きな収穫だ。理緒は篠原宅への道筋を聞き、メモ帳に書き留めた。
「ありがとう!高橋は知らない?」
「知らないデス。」
「そっか…」

 理緒はダニエルにお礼を言って、アメリカと日本が入りまじる不思議な空間をあとにした。ダニエルは、理緒とミステリの話ができたのが嬉しかったらしく、いつまでも手を振っていた。
「サヨナラ、小寺サーン!つぎはイヌガミケの話をしましょう!」
理緒は手を振りながら思った。
「探偵の仕事って、なんか思ってたのと違うな…」

目次〉〈次回

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山田星彦 小説・写真・文学紹介など、たくさんの記事を書いています。マガジンに分類しているので、そちらからご覧ください。