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【探偵コメディ】小学生探偵 小寺理緒〈7〉名前には意味がある

〈7〉名前には意味がある

 岡が連れ込んだ珍客・トノサマガエルは、話し合いの結果、教室で飼うことになった。この4年2組には生き物がいなかったし、カエルはあんがい可愛いとの意見が多かったのだ。
 このカエルは、「トノ」という、とんでもなく身分の高い名前まで付けてもらい、庶民の子供たちが勉強する様子を、水槽の中からじっと見守ることとなった。

 そんなカエル騒ぎでずいぶん遅れてしまったが、やがて、一時間目の国語の授業が始まった。友光先生が黒板に、
「名前に使われている漢字」
と、白いチョークで美しい字を書いた。
「今日は、名前に使われている漢字について勉強しましょう。みんなの名前には、どんな漢字が使われてるかな?」
 そう言われ、全員がノートに自分の名前を漢字で書いた。理緒も、「理」と「緒」という二文字を、まるで正月の書き初めみたいな気分で丁寧に並べた。
「きっと、みなさんの名前は、お父さんやお母さんが一生懸命かんがえて付けてくれたものです。ひとつひとつの漢字に、立派な意味があるはずですよ。」

 すると、理緒のすぐ前に座っている岡が、もうさっきの公開謝罪なんてすっかり忘れたみたいに、いきなりバッと手を上げると、指されてもいないのに先生へ質問を浴びせた。
「はいはーい!オレの元気げんきには、どんな意味がありますか!?」
岡の下の名前は元気げんきというのである。
 先生は、「ちょっと待ってよ。」と言いながら、漢字辞典を引いた。
「えっとね、元気の「元」はね…。え!?そうなんだ。知らなかった。へー、おもしろい。あのね、岡くん。「元」はね、岡くんにピッタリだよ。「元」の意味はね、丸い頭。」
「えっ!?丸い頭!?」
教室が笑いのうずに包まれた。岡のキレイな坊主頭は、まさに「丸い頭」だったからだ。

 恥ずかしくて真っ赤になった岡が、
「じゃあ、じゃあ、「気」はどんな意味!?」
と、せき立てたので、先生はまた漢字辞典を引いた。
「えー「気」は、息とか活力という意味です。「元」は頭だったけど、頭には、てっぺんという意味があるから、元気は、一番に活力のある子という意味だね。」
 この説明に、生徒たちは大いに納得した。エネルギーのかたまりみたいな岡の姿を、彼の名前がそっくりそのまま表していると思ったからだ。

 調子に乗った岡は、さらに質問を続けた。
「じゃあ、佐々木は?」
佐々木というのは、岡の隣に座っている男子のことである。佐々木は、一瞬、急に話題に出されて戸惑ったが、すぐにいつもの優しい声で、
「僕の下の名前は、知高ともたかと言います」
と付け加えた。

 岡に促され、先生は佐々木の姓名判断もすることになった。
「佐々木くんの「知」は知識とか知恵に使われているように、頭の良さのことだね。それが高いんだから、知高くんは、とても頭の良い子です。」
 これもズバリと佐々木の特長を言い当てていた。佐々木はクラスで一番頭がよかったのだ。オマケに、佐々木は背が高くてハンサムで、女子からしたら、ちょっとした王子様であった。
 先生に頭が良いと言われた佐々木は、すこし照れたように、はにかんでいる。そんな佐々木を斜め後ろから見ていると、さすがの理緒でさえ、事件や犯罪とは別の意味で、つまり、女子小学生としてたいへん健全な意味で、ドキドキしてしまうのであった。

目次〉〈次回

#創作大賞2023

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山田星彦 小説・写真・文学紹介など、たくさんの記事を書いています。マガジンに分類しているので、そちらからご覧ください。