【奇手】経営者は市場を支配せよ~独占販売こそが最強の経営戦略
<前回記事:【閃光】経営とは価格競争である>
奇手!!
悪魔的奇手!!
このゲームで大勝するにはどうすればいいか?
休憩時間中、私はそればかりを考えていた。
そもそも、このゲームの目的は「材料を買い、商品を作り、市場で売り、お金を儲けること」。単純に考えれば、「材料費や加工費よりも高く商品を売れば、確実に儲かる」はずだ。
だが、これは経営戦略を学ぶゲーム。
そう一筋縄にはいかない。
おそらく、最大の壁は「商品を売るときに、参加者同士で価格競争をしなければならない」という部分にあるだろう。
みんなが商品を売りたい以上、人より安い値段をつけざるを得ない。結果、価格競争が激化し、利益がわずかしか出ない低価格で商品が売られることになる。
そんな消耗戦にまともに参加しても、大儲けするのは難しいだろう。
では、どうする?
まず思いついたのは「談合」。
つまり、価格競争の際に、みんなで口裏を合わせて高値で売ればいいのだ。
たとえば、全員が11万円で提示し、ひとりだけ10万円を出せば、その人の商品だけが売れる。これなら、原価1000円の商品を10万円で売ることだって可能だ。
さらに順番を決めて、「今回はAさんが儲ける番。次はBさん、その次はCさん……」とすれば、全員が儲けることができる。
……が、これは机上の空論。
なぜなら、裏切られる可能性があるからだ。
たとえば、相手を談合で儲けさせた後、いざ自分の番が回ってきたときに、相手が約束通りの価格を提示しなかったら?
そういうリスクを考えると、談合は成立しにくい。
まして、参加者が2~3人ならともかく、これだけたくさんの参加者がいたら、とても談合の交渉なんかできない。
談合で儲けるのは、まず無理だろう……。
となると、次に考えられるのは……独占販売……。
私の脳裏に、講師のある言葉が印象深く残っていた。
「さあ、このままだと私の商品しかないので、私の独占販売になってしまいます。それを阻止するために、みなさんも競合商品を出してください」
その言葉に出てきたキーワード。
独占販売……!
そう、自分が商品を出したとき、競合商品がなければ、好きな値段をつけられる。
それこそ10万円でも、20万円でも。
そうなれば当然、大儲けだ。
とはいえ、
「自分だけが商品の在庫を持ち、他の参加者が誰も商品を持っていない」
なんて都合のいい状況は、普通なら起こり得ないだろう。
でも……もし、それを意図的に作り出すことができたら?
私は、思考のピントをそこに合わせて考え続けた。
「あっ!!」
そして、あるアイデアにたどり着く。
きっかけは、違和感だった。
講師の説明の中で、ひとつだけ現実と合わない部分があったのだ。
「売れた商品のコマはどうするんですか?」
「はい、テーブル中央の材料置き場に戻してください」
このシーン。これは現実で言えば、
「商品が売れた瞬間に、リサイクルされて資源に戻る」
ということになるが、もちろんそんな仕組み、普通ならあり得ない。だからこそ、違和感があったのだ。
……その違和感を思い出しながら、思考を進める。
ええと、待てよ。じゃあ、ずっと商品が売れなかったらどうなるんだ?
コマは、材料に戻らないから……
だんだんと材料がなくなっていき……
全部なくなれば……商品を作ることができない……!
いや、それよりも……
いっそ私が、すべての材料を買い占めたとしたら……?
私が商品を売らない限り……
材料のコマは増えないのだから……
つまり、誰も商品を作れなくなる……!
「ああああ!!!」
思いついてしまえば、あまりにもシンプルな戦略。
材料買占め戦略。
材料を独占すれば、他のプレイヤーは商品を作れない。そうすれば、自分だけが商品を持ち、他の誰も商品を持っていない──そんな状況が作り出せる!
……すごいことを思いついてしまった……。
でも、ちょっと待てよ。その前に、買占めにはどれくらいお金がかかるんだ?
私は、テーブルの中央に積まれた材料のコマを目測で数えた。
……うぅ……、か、買える。
……手持ちのお金で、全部買える!
……買えてしまう!
限度額いっぱいの借金をしていたのが功を奏した。
もちろん、まだ他の参加者が商品(あとで材料に戻るコマ)を持っているのだから、「場にあるすべての材料を独占」とまではいかない。
それでも、今のうちに大量の材料を押さえてしまえば、市場に流通する材料(=商品)の数は、間違いなく激減する。そうなれば、自分が商品を売るときに、誰も競合商品を出せない状況が生まれる可能性は高くなるだろう。
少なくとも、材料を買い占めた私は、市場の流通をコントロールできる……。つまり、圧倒的優位な立場になれる……!
だが……。
本当に、そんなことをしてもいいのか?
ゲーム序盤から、資金の大半を使い果たすことになる。一度買占めを実行したら、もう後戻りはできない。本来なら設備投資に使うはずの資金を、すべて材料の買占めに注ぎ込むのだ。
こんな序盤から、こんな大勝負を仕掛けてもいいのか……?
「次は、飲茶さんの番です」
来た! 自分の番だ!
どうする? 様子を見るか?
いや、ダメだ!
この戦略は、後になればなるほど不利。ターンが進めば、材料が買われ、買占め自体が難しくなる。
やるなら……今……!
ゲーム開始直後……!
この戦略を誰も想像していない、今しかない!
「飲茶さん? 自分の行動を宣言してください」
「……材料を……買います」
「はい、いくつですか?」
「ぜんぶ」
「え?」
「材料置き場にある材料……全部ください!」
ざわ……ざわ……
奇手!
材料買占めによる独占販売戦略、開始!!
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