【秋葉原アンダーグラウンド】第4章 9話
「何分待たせるつもりだ。こんな部屋に通しておいて。」
リツの通された部屋は重要な会議が行われるようなところで、係の者が入れ替わり立ち代わり移動していた。
「すみません。もう少々お待ちください。」
もう何度も聞いた言葉だ。どうせイジュンは現れない。適当な者に理由をつけて来させるつもりだ。リツはテーブルの下で拳を固めていた。いっそ反乱でも起こそうか。自分は地下から一度出て行ったいわば犯罪者だ。今さら罪が増えることに抵抗はない。
「待たせてすまない。」
そう言うとイジュンが姿を現した。リツは驚いた。
「驚いたな。まさかここのトップ自らお出ましとは。」
「私を呼んだのはお前だろう。それに、犯罪者となれば話は別だ。」
イジュンはテーブルを挟みリツの目の前に座った。リツは逡巡していた。まさか本当に姿を現すとは。仮にリツが暴走したとしたとしても自分なら止められる。そんなとこだろう。リツは拳をとき話を進めた。
「単刀直入に言う。シンに会わせてくれ。」
「お前たちがここに来た理由はわかっている。だが、いくらお前でもシンに会わせることはできない。」
「それは、私がシンに殺させないようにするための優しさか?」
「物事には順序があるだろう。」
「順序を守った結果、妹は死んだんだぞ!」
「話をすり替ええるな。今話す内容じゃない。」
リツは思い切りテーブルをたたき壊した。だがイジュンは動じない。真っすぐリツを睨みつけている。
「今は会わせることができないと言っているんだ。」
「じゃあいつなら会わせてくれるんだよ。」
「ルリは帰ってきて来てからまだ目を覚ましていない。」
リツはハッとした。ルリが目を覚ましていないということはサラも当然目を覚ましていないということになる。これでは地上のマユの目を覚まさせることはできない。リツはソファーに深く腰掛けた。
「お前らのシミュレーションとやらも案外あてにならないんだな。」
「実はルリが覚醒する頃には80%台まで落ち込んでいた。そんな数値でオレたちが動くと思うか?」
「お前の指示じゃなかったのか?」
「あれはカラスの、いやもっと上の人間の指示だ。」
「ロンか。」
「ああ。オレはそう睨んでいる。」
それなら合点がいく。シンは地上の全てを恨んではいたが、秋葉原事件はシンによる指示ではない。シンらしくないからだった。サラ復活の最重要課題に感づいた何者かが、シンに罪を擦り付けようとしていた。それがロンだったのかもしれない。
「今シンはどこで何をしているんだ?」
「ルリの目覚めに心血を注いでいる。」
「何かあてはあるのか?」
「ないわけではない。それがルリの光を受けた者たちの存在だ。」
レンやシュンが?いや正確にはマユもかもしれない。一体どういうことだ?
「あの段階ではシミュレーションは80%台だったが、ルリが光を発してから90%台にまで戻ったのだ。」
「それならルリの力が本物だったってことだろ?目を覚ましていないから使えないけどな。」
「おそらく、ルリの目を覚ましてくれるのは、地上のマユという娘だ。」
「は?だけどマユだってあれから目を覚ましてないんだぞ!」
「それをシンは検証しているんだ。」
リツはイジュンのあまりの発言に、一切言葉が出てこなかった。
