【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 6話
チェルシーの重力操作により会場は今にも潰れそうだった。その圧力はその場にいる全員にまで及んでおり立っているのがやっとだった。まさかこれほどの力を持っていたとは。カラスはにやけが止まらなかった。
チェルシーはゆっくりとキャサリンの元へ歩いていく。キャサリンはなんとか構えの姿勢をとった。2人の距離は約2m。どちらの間合いでもあった。しかし、どちらからも攻撃を仕掛けることはなく、2人は見つめ合ったままだった。すると急に、会場や体にかかっている重力が解けていく感覚があった。
「やっぱりダメだね。私にはできないや。」
チェルシーは涙を流しその場に立ち尽くしていた。涙が溢れ両手で顔を覆っている。それを見たキャサリンも涙を流した。
「わかった。もうやめよう。私はお前といれればそれで十分だ。」
チェルシーは嗚咽を漏らしながら泣いた。
「帰ろう。うちに。」
そう言ってチェルシーに手を差し伸べる。それに気づいたチェルシーもそれに応えるかのように手を差し出す。しかし次の瞬間、差し出そうとしたチェルシーの腕が爆発で吹き飛んだ。
「なに勝手に終わらせようとしているんですか?その行為は反逆とみなしますよ。」
「カラスマ!やめろ!」
キャサリンはカラスマのほうを見たが、また次の瞬間、今度はチェルシーの右半身が爆発に巻き込まれる。トガは思わずカラスマに飛びかかった。
「貴様一体何をしている!内輪もめこそ重罪だぞ!」
「ああそうでしたね。あなたも1級なら私を止める権利がある。」
話がかみ合っていない。トガは炎の拳を作りカラスマを殴りつけようとする。しかしその拳は届かず、2人の間に仕掛けられた爆弾を殴る形となった。トガはその爆風でカラスマから引き離される。そのそばでワンがチェルシーの元へと飛んでいく姿があった。チェルシーはその場に倒れ、キャサリンに抱き抱えられている。
「チェル!息はあるか!」
ワンの呼びかけに応じる様子はなかった。だが微かにヒューヒューと息が漏れている感じがあった。瀕死の状態には変わりないがそれでも生きている。キャサリンはがっくりと項垂れていた。
「キャシー!君がそんなんでどうする?チェルはまだ生きている!」
まだという言葉が引っ掛かったが、どうみてもあと数分の命に変わりはない。カラスマに対抗する気力も、立ち上がる気力ですらなくなっていた。そこへドクが駆けつける。
「ワン博士。このままだとチェルシーさんの命が危ない。もはやサラさんの血清を打つしか可能性はないと思います。」
「ドク、1%の可能性にかけるのか?オレにはそんなことできない。」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!」
ワンは驚いた。初めてドクに反発されたからだ。ワンは胸元に忍ばせていたタブレットでマザーと話す。
「私も血清には反対だわ。だけど、1%でも可能性が残っているなら試してみる価値はあるんじゃない?この子、もうすぐ死ぬわよ。」
タブレット上ではチェルシーのバイタルの数値が映っていた。このままだと本当に危ない。ワンは覚悟を決めポケットからサラの血清を取り出した。急にキャサリンが声を上げる。
「おい、何をするつもりだ?」
「サラさんの血清を打つ。確率は低いが何もしないでいるよりはまだマシだ。」
「ワン、もういいんだ。このまま静かに眠らせてあげてくれないか。」
キャサリンはチェルシーの顔に手を添えていた。キャサリンンも覚悟を決めているようだった。だけど、
「目の前の患者が死にかけているのを見て、何もしない医者が一体どこにいるというんだ!」
ワンは無理矢理チェルシーの左腕をとった。やめろというキャサリンの呼びかけにも応えず血清を打とうとした。そのとき、
「お、姉、ちゃん・・・?」
チェルシーは振り絞り声を上げた。
