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【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 7話

チェルシーの声に反応し、ワンの手が止まった。チェル!とキャサリンは呼びかけたが、キャサリンの目はもう何も見えていなかった。

「お姉ちゃん、そこにいるの?」
「ああ、今お前の顔を撫でているところだ。」

チェルシーは何とか左手を顔のほうまで持っていき、そしてキャサリンの手を握った。その手は驚くほど冷たかった。

「あったかい・・・」

キャサリンは涙をこぼした。その一粒一粒がチェルシーの顔にこぼれ落ちていく。

「お姉ちゃん、泣いてるの?」

キャサリンは何も答えることができなかった。答えてしまえばその場で泣き崩れてしまい妹に迷惑をかけると思ったからだ。

「悲しいときは、泣いてもいいんだよ。」

その優しい一言に我慢できず、キャサリンは泣き崩れてしまった。チェルシーは今度はワンに話しかける。

「ワンさん。そこにいますよね。今すぐ私に血清を打ってください。」

ワンは驚いた。この子は自ら過酷な運命を背負おうというのだ。

「血清の2度打ちの研究をワンさんがしてたことは知っています。かなり確率が低いのも知っています。それでも、ゼロじゃないんでしょう。」
「たしかにゼロではない。だが、限りなくゼロだ。それを回避する理論も構築したが、ものはまだ何もない。」
「だったら今ある血清を打ってください。このまま何もしなければ私は死にます。わかってるんです。もうダメだってこと。」

チェルシーは体の感覚がなくなりつつあった。その証拠に握っていたキャサリンの手を放してしまったからだ。キャサリンは慌ててその手を再び握りしめる。

「いやだなぁ。」

チェルシーが呟く。

「せっかく元気になって、お姉ちゃんも元気になって、これから誰かを好きになったりして、でもお姉ちゃんに止められたりして。そんな未来が待ってると思ってたんだけどなぁ。」

チェルシーの目から涙がこぼれる。だがその顔は笑っているようにみえた。

「チェル。お前はこれからも私と生き続ける。約束する。」

キャサリンは小指を立て、握っていたチェルシーの小指と指切りをする。

「絶対に約束だからね。」

チェルシーはそう言うとそのまま眠りについた。心拍はゼロを示している。ワンは急いで血清を打った。

それから1分はたっただろうか。チェルシーの心拍が戻ってくることはなかった。ワンはふと手元のタブレットを覗き見た。98.9999%で上手くいかない数字が、気付くと99.9999%となっていた。チェルシーの結果により、データが上書きされたのだった。


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