【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 8話
チェルシーの葬儀は慎ましく執り行われた。トガとカラスはあの後ライによって取り押さえられ、今は幽閉されているため葬儀には出席できなかった。それでも、2級師兵だけでなく、チェルシーを慕っていた3級師兵の面々もあり、チェルシーの人柄の良さがうかがえた。中には泣いている者もいた。
通夜が始まると、キャサリンのところにたくさんの言葉が寄せられた。キャサリンは一人ひとり丁寧に言葉を返していたが、その表情はどこか虚ろで抜け殻を思わせた。キャサリンは皆から少し離れた席にいた。気付くとワンが隣に座っていた。
「申し訳なかった。」
ただ一言ワンは呟いた。それはキャサリンに向け発せられた言葉のようだったが、キャサリンは何も返事をしなかった。沈黙はしばらく続いた。
「申し訳なかったって何がだ。」
ふいにキャサリンが呟いた。ワンは応える。
「君の妹、チェルシーを救えなかったことだ。」
「どうあがいたところで結末は変わらなかったろう。」
そう言われるとワンは何も言い返せなかった。キャサリンはさらに続ける。
「お前の中では、もし薬を完成させられていたらとか、あの試験が行われていなかったらとか、そもそも蘇生実験なんて始めなければよかったとか思っているんじゃないのか。もしそんなこと考えているのであれば、私は今すぐお前を殺してやる。」
そう言うとキャサリンはワンに馬乗りになる形をとった。周囲ではざわつきの声が上がった。ワンのほうは何も抵抗しないでいる。
「殺したければ殺せ。君にはその権利がある。」
キャサリンの目から涙が溢れ、ワンにこぼれ落ちる。
「お前たちが蘇生実験を行ってくれていなければ、妹はとっくの前に死んでいたはずだった。それがこんなにも長生きできたんだ。心からありがたいと思っている。だけど・・・あんな、終わり方って・・・」
キャサリンは涙が止まらなかった。ワンはその顔をただ黙って見つめている。その様子を見ていた周りの者たちも静まり返る。その場にはまたしても静寂が訪れた。
「キャサリン、オレは約束する。能力をこの世から消し去ってみせる。それが例えシンと敵対することになってもだ。」
キャサリンは涙を拭い真剣な眼差しでワンを見た。
「勝手にしろ。それで妹が生き返る訳ではないからな。」
ワンは胸が痛かったが、キャサリンはさらに続けた。
「私はこのアンダーグラウンドを去る。もうここにいる意味などないからな。」
ワンは驚いた顔をしてみせたが、次の瞬間穏やかな表情となり、それがいいとだけ呟いてみせた。
「誰の許可も取らない。邪魔するやつはぶっ飛ばす。わかったな。」
そういうとキャサリンは一人部屋を出ていった。
