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【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 5話

広間の鏡が全て破壊されるのに数秒もかからなかった。シンはシュンにハクを捕まえてほしいと頼んだが、例えシュンが光の速さで移動できたとしても、物理的にハクを捕えることは不可能だった。それなら移動している先を壊してしまったほうが話は早い。しかしその刹那の後、倒れていたのはシュンのほうだった。


「くそっ・・・」

「あなたの敗因は、ハクを殺さなかったこと。」


シュンは体中に飛針を刺されうずくまっていた。ハクはシュンにとどめを刺そうと握っていた飛針を振り上げたが、そこで動きが止まってしまった。


「またそのちから・・・」

「別に剣を抜かなくったって意識は刈り取れるさ。」


その直後、ハク目掛けシンの白虎が襲い掛かる。ハクはもう一度無限回廊を出そうと試みるも、なぜか氷の鏡を作り出すことができない。するとうずくまっていたシュンが声を上げる。


「この部屋の水分は今、オレの手の中にある。」


え?とシュンのほうを振り向くとそこにシュンの姿はなく、飛針と水の塊が落ちているだけだった。そのままハクは白虎を受ける形となったが、反射的に玄武を出し直撃は免れた。


「一体どういう・・・」

「そのままの意味さ。君は彼の能力により氷の力を出せずにいる。ご苦労さま、ステイル!」

「あ~、疲れた。光速で移動しているふりするの結構難しかったんだぜ。」


部屋に入ってきたのはシュンの姿を真似たステイルだったのだ。シンだけは初めからわかっていたのだ。ステイルはハクの能力に気付くと部屋中の水分をコントロールし、とりわけ氷の鏡は割れやすくするため温度を上げ、さらにその目の前には極小の渦巻を仕掛け、ステイルが空気中の水分に溶け込み消えると同時に鏡に向け発射して全て破壊し、あたかも光速移動して鏡を割ったように見せたのだった。その後ステイルはハクの前に姿を現し飛針を食らうも、能力が覚醒しているステイルにとって物理的な攻撃は意味をなさなかった。


「オレは君が逃げられないように氷を封じている。そして君は今白虎相手に手一杯だ。どうする?このまま水やら重力やらを追加してもいいんだぜ?」


リツはいつでも重力波を撃てるように構えていた。ステイルの腕の先でも水が渦を巻いている。ハクはそれらを見るも強すぎる白虎の圧に潰されないよう必死だった。


「はぁ・・・こんなに疲れるなんて聞いてない。」


徐にハクはシンの持つ白光を見る。すると次の瞬間、ハクはシンの目の前に立っており、そのまま心臓目掛けて飛針を突き立てる。


「なにっ・・・」


シンはその場に崩れ落ちる。すかさずステイルとリツはハクに向け能力を繰り出そうとするも、動かないでというハクに止められる。ハクは再びシンを人質にとっていた。シンは肺をやられたのか、声にならない声でハクに問いかける。


「氷もないのになぜ・・・」

「別に氷がないと移動できないとは言ってない。ハクの姿が映っていればいいだけ。だから、シンの刀にハクの姿を映した。」

「すごいね・・・張摩を出せているからまさかとは思っていたけど・・・やっぱり覚醒もしていたわけだ・・・」


ハクの言っていることが本当なら、この部屋にある反射する全てのものがハクの能力の対象となる。あとはハクが映り込んだ自分の姿を視認できればいいだけの話だ。だとするとハクの動きを止める最良の方法はハクの目を潰すことだ。しかし、例えそれが出来たとしてシンが許すはずもない。


「まいったね。水を出そうにも映り込まれてしまう訳だし、なんなら目を合わせてもダメな訳でしょ?瞳に映っちゃうし。」

「マジで今まで戦ってきた中で一番厄介かもな。」


ステイルもリツもその場から動けないでいた。戦えるのは現状この二人だけなのに。いや、まだこの場に到着していないやつが一人だけいる。


「おいおい、なんて状況だよ。女の子一人に大の大人が何人苦戦してやがるんだよ。」


シュンは扉を開けるや否や、一瞬で照明器具全てを破壊した。その手があったか。ハクの目を潰さなくても、要は見えなくしてしまえばいいだけのこと。辺り一面は真っ暗となり、ハクだけでなく誰もかもが何も見えずにいた。ただ一人を除いては。


「これでよしっと。」

「いや、放してよ。」

「その声は、ワンか?なぜ動ける?というか何をした?」

「なぁに、この子の手を縛り、目隠しをしただけだよ。動けるのは単純にぎりぎりまで目を瞑っていたからさ。きっと誰かが照明を何とかしてくれると思って待ってただけだよ。」

「お前、いつ殺されてもいい距離にいながら結構大胆なことするんだな。」


月明かりが差し込み辺り一面が明るくなると皆の表情が見てとれた。ハクが動けないでいるのを確認し安堵する者もいれば、疲れでその場に座り込む者もいる。リツはワンと共にシンを治療しながら聞いてみた。


「さっきの裏切り者の話だけど、お前どこまで考えている。」

「だいぶ絞り込むことはできたけどまだ確証がないからね。だけど、今回のこの状況を考えたら裏切り者は確実にいる。」

「今は犯人探しをしてもしょうがないんじゃないか?とりあえずロンが地下にいる今、やつを捕まえやすい状況は作り出せた。」

「そうだね。まずはアキモト先生と合流して、地上で監視する者と地下に戻る者を分けようか。」


シンはアキモトに電話をかけたが一向に繋がる気配はなかった。


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