【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 6話
地下のとある研究施設にロンは来ていた。それはシンやワンがいるアンダーグラウンドよりも階層の深い場所にあった。機械に埃が被っていないところを見ると最近まで使われていたことがうかがえる。マリを椅子に座らせ頭にとある機器を被せると、近くにあったコンピューターを操作し始めた。どうやら脳波を見ているらしい。マリの脳波は眠っている状態と等しく、いわば正常に動作していた。そこにアキモトを連れたミカサが入ってくる。
「ロン、アキモト先生を連れてまいりました。」
「ご苦労さま、ミカサ。やぁ、先生。生きていたとは正直驚いていますよ。」
「やはりロンくんか。今更私に何の用だ?それよりもマリくんをどうするつもりだ?それにミカサくんはなぜ生きている?」
「久々に会ったと思えば質問ばかりですね。もっと再会の余韻に浸りましょうよ。まぁ私もあなたに聞きたいことは山ほどありますが。とりあえず今はあなたの質問に答えるとしましょう。」
ロンに促されるままアキモトは椅子に座らせられる。抵抗する様子は一切無かった。抵抗すれば殺される。今は時間を稼ぎ情報を吐き出させることが先決だ。
「さて、何から話しましょうか。」
「君の知っていること全てだ。問題ない、時間はいくらでもある。」
「それがですね先生、我々にはあまり時間が残されていないんですよ。」
「どういうことだ?」
「免疫系の超活性。まさかお忘れじゃありませんよね?」
「あぁ・・・忘れる訳なかろう。そのせいでミカサくんは死んだのだからね。」
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今から30年ほど前、アキモトは大学で助教授として教鞭を振るっていた。専門は応用生物学。自身のゼミにはロン、ミカサの他、オウという男性が所属していた。
「ミカサ、また遅刻か?」
「ごめんごめん。今そこのお店でちょうど新しいグッズ出しててさ。これがもう可愛いのなんの。」
「ミカサの趣味はわからん。一体それのどこが可愛いんだ。」
「ぶーっ。堅物のオウくんには一生わからなくていいもん。」
「ふふっ、ミカサはいつもオウに厳しいな。」
「そういうロンくんだって何もわかってないくせにぃ~。」
ミカサが握りしめていたのはカエルをデフォルメしたキーホルダーだった。たしかに良い趣味とは言えないかもしれない・・・
「みんなようやく揃ったな。」
「お疲れ様です、先生。」
「先生もこれ見てみてよ~。めっちゃ可愛いから!」
「ミカサ、いい加減それをしまえ。」
「はっはっは、いいんだよオウくん。どれどれ?ほぅ、これは見たことがないな。新作かな?」
カエルのキーホルダーで盛り上がっている2人を見て、オウは深いため息をついた。まぁまぁとなだめるロンを横目に、アキモトの持ってきた資料を手に取る。
「体内で自然現象を発生させる研究・・・」
オウは資料をパラパラとめくってみせる。だがすぐに見るのをやめて机に放り出す。それに気付いたアキモトは声を掛ける。
「馬鹿馬鹿しいかね?」
「先生はスーパーヒーローでも作りたいんですか?」
「スーパーヒーローか。確かにそれも悪くない。」
「先生、真面目に答えてください。」
体内では常に自然現象は発生している。神経伝達物質であるニューロンがいい例だ。しかし、アキモトの言う自然現象は超常現象のことだ。電気エネルギーを電気に変えてみたり、熱エネルギーを熱に変えてみたりといった具合に。それをアメコミや漫画の世界の話だけではなく、実際に起こさせようとしている。別にそれに興味があってこのゼミに飛び込んだ訳ではない。生命の進化について興味があっただけだ。それに応用生物学の分野ではアキモトは世界的に有名だ。しかし実際には日々このようなやり取りばかり行われている。
「それで先生。今度は何をしようっていうんですか。またマウスに電気流そうって考えてます?」
「確かに毎回同じ実験だと飽きてしまうよね。」
「いえ、毎度同じ結果に見えていますがマウスの耐性は上がっています。」
「ロン、オレが言いたいのはこれが何の役に立つのかってことだ。」
「え~、いいじゃんスーパーヒーロー。私も特別な力を持ってみたいなぁ。」
「あのなぁ、ミカサ・・・」
「まぁ待ちたまえ。今日は君たちに別な報告も兼ねて来たんだ。」
アキモトはゼミにほとんど顔を出さない。出張が多いのだそうだ。その出張先でスーパーヒーローの話でもしていたらたまったもんじゃない。自分たちは何のためにここにいるのだろう。だが次にアキモトが発した言葉はオウを現実の世界に引き戻すには十分過ぎるものだった。
「次回の実験から対象を人に移そう。」
