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【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 7話

あまりに突拍子もない発言に皆静まり返ってしまった。だがその沈黙を破ったのはやはりオウだった。


「それって人体実験ですよね。あとは言わなくてもわかるかと思いますが。」

「そうだ。オウくんの考えている通りだ。だけどね、我々は次のステージに行く準備もできている。」


そういうとアキモトは別の資料を皆に渡した。それは諸外国における超能力実験のデータだった。対象がチンパンジーのものもあった。アキモトは出張と称して海外でも研究を行っていたのだ。確かに日本では禁忌だが、海外なら、それもアンダーグラウンドなら秘密裏に行うことだって可能だ。


「確かにデータは揃っている気もしますね。チンパンジーに触れて感電した例も存在する。」

「その通りだ。オウくんならわかってくれると思っていた。」

「先生、まだ話の途中です。それに、わかったとは言ってません。むしろ反対です。なぜリスクを冒してまで日本でやろうと思うんです?チンパンジーで被験した国でやればいい話じゃないですか?」

「日本の威厳を守るためだ。それに、海外では誰もやりたがらなかった。」

「それはここだって同じことでしょう?例え秘密裏に行うことができたとしても、誰も被験者として手を上げない!」

「待て、オウ。お前の言っていることはもっともだが、これは世界初の研究だ。日本が世界に通用するところを見せる良いチャンスだ。」

「論外だ、ロン。こんなこと誰も求めていない。それに、こんなことしなくても日本の権威性はいくらでも示せる。」


そう言うとオウは資料を叩きつけ部屋を出て行ってしまった。慌ててミカサは後を追う。部屋にはアキモトとロンの2人が残される形となった。オウは研究室から離れた場所でタバコをふかしていた。ミカサはようやく追いつきオウに話しかける。


「またここで吸ってる。言っとくけど敷地内全面禁煙なんだからね。」

「わかってるよ。」


気まずい沈黙が流れる。オウの吸っているタバコの煙だけが辺りを包む。ミカサは徐に呟いた。


「被験者の件だけど、私なってもいいかなって思ってる。男性の体より女性の体のほうが体内で許容できるって書いてあったし。」

「何言ってるんだ!あの論文、ちゃんと最後まで読んだのか!?」

「うん、読んだよ。あのチンパンジー、免疫不全を起こして最終的に亡くなったって。」

「ありえないんだよ!少なくとも対人にはまだ早すぎる!」

「でも、オウくんがいれば何とかなる気もするんだよね。」


オウは学生ながら優秀な生物学者でもあった。その才能が認められ、卒業後は引く手数多だった。海外からのオファーもあった。だが、そんなオウでもこの研究には手を染めたくなかった。理論は既に構築している。しかし、先の論文を読む前から最終的な死は免れることができないことは理解していたのだった。


「オレはそこまで頼れる人間ではない。」

「ううん、オウくんは立派な人。私の憧れのヒーローなんだよ。」


オウは何も言わずただタバコをふかしている。


「オウくんがやらないって言うなら私もやらない。だけど、もしやるって言うなら私を使ってほしい。」

「少し考える時間をくれ。」


うんとだけ答えると、ミカサは研究室に戻っていった。オウは相変わらずタバコをふかしていた。ミカサが研究室に戻ると、アキモトとロンが話し込んでいた。ミカサの存在に気付くと話を止めミカサへと話しかける。


「ミカサくん、オウくんはそれで何と言っていた。」

「考える時間をくれって。」

「そうか。この研究にはオウくんの頭脳が欠かせないからね。これは神を冒涜する研究だ。彼は人一倍正義感が強い。悩むのも仕方のないことだろう。」

「先生、もしあれなら私がオウの代わりを務めても。」

「ありがとう、ロンくん。でもね、君ではオウくんの代わりにはなれない。」


ロンは拳を固く握りしめていた。オレがオウに敵わないだと?オレだってそこそこ研究の成果を挙げている。例え劣ってたとしても、負ける要素はないはずだ。ロンはたまらずアキモトたちに背を向けた。アキモトが今日はここまでにしようと持ってきた資料をミカサとまとめていると、オウが研究室に戻ってきた。


「先生の考えている成功の確率は何%ですか。」

「そうだね。60%くらいが妥当なところかな。」

「オレなら80%、いや90%まで引き上げることができます。」

「さすがだね。それで、私を手伝ってくれるのかい?」


オウはミカサの顔を見る。ミカサの屈託のない笑顔が目に入った。この女性はいつもこうだ。人を惹きつけ、人の背中を後押ししてくれる。決意は固まった。


「オレにやらせてください。」


こうして神を冒涜する悪魔の研究が始まったのであった。


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