【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 13話
水の弾丸がリツに当たる1mほど手前で、それらは全て地面へと叩き落とされた。重力だ、それもかなり出力が高い。レンは手に汗を握っていた。
「一発も届かないのか。ショックだな、結構圧縮したつもりだったんだけど。」
ステイルが話している途中にも関わらず、リツはステイルに向け片方の手に固めた重力弾を振りかざす。ステイルはそれを寸手のところでかわし、空中を歩いて見せた。空中の足元には水たまりのようなものが見えた。4、5mくらい上まで飛び、そこから大量の水を放出させた。まるでダム放水だ。
「水爆。この量と圧ならどう対応するかな?」
まともにくらえば体は粉々になってしまうだろう。だがリツはそんなのお構いなしに、降り注ぐ水に向かい重力波を当てる。水流が割れていき、ステイルの姿が見えそうなくらいまで達したが、空中にステイルの姿は見当たらなかった。リツはすぐさま辺りを見回した。すると、先ほど放たれた水が、ステイルの姿となって現れた。
「水分身。偽物と思って相手するとケガするよ?」
水分身は全部で5体。そのうちの一人が本物だろう。そのうち2体がリツに襲い掛かる。2対1で組み手を取る形となった。3人とも両手両足に能力をまとっていたため、あたると強い衝撃音が鳴る。だがリツはひるまない。ステイルの動きもなかなかのものだったが、多重組手だとリツに分がある。気がつくと2体のステイルはリツの重い一撃を食らう形となり、そのまま水となって散らばった。
「あちゃ~。水分身といってもそれぞれ1級なんだけどな。オレが弱いのか君が強すぎるのか。」
「つべこべ言ってないで残り3人でかかってきたらどうだ。」
「そうだね。ぜひそうさせてもらうよ。」
そう言うと、3人のステイルはリツを取り囲み、周囲の水分をまるで大玉のように圧縮させた。
「渦巻。僕の能力の最大出力でこれを君にぶつける。能力はほとんど尽きてしまうが、これをくらって消し飛ばなかったやつはいないよ。」
大玉の水球は水流による回転も加わり、辺りの草木や石をも砕くほど激しい音を立てている。リツはふーっと息を吐き、自身の周りに重力のドーム状のバリヤーを張って見せた。
「へぇ。かなり高密度な結界みたいだね。でも僕のほうが強い。さぁ始めようか。」
ステイルはリツのバリヤー目がけて3つの渦巻を飛ばす。渦巻がバリヤーに当たった瞬間強い衝撃が走り、レンやシュン、ワンまでもがその場から吹き飛ばされてしまった。スラム街の外壁にもひびが入り亀裂が走る。レンは思わず叫んだ。
「リツさん!」
土埃や石の破片が宙を舞い視界が悪い。リツはおろかステイルの姿でさえ見えない。2人は一体どうなってしまったというのだ。
ふと人影が見えた。リツだ。リツが立っている!しかし、その姿は見るも痛ましく、口からは血を流し、片方の腕は腹を押さえ、もう片方の腕は完全に垂れ下がっていた。立っているのがやっとという感じだ。一方ステイルの姿はどこにも見えなかった。
レンは気付いたときにはリツの元へ駆け出していた。
「レン!来るな!」
急にリツに怒鳴られたかと思いきや、リツの足元に散らばっていた水たまりからステイルが姿を現し、リツの心臓目がけてその手で刺した。
