【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 14話
「まさか、能力の覚醒までしているとはね。」
リツの心臓目がけたステイルの指は粉々に砕け、ステイルはその場に倒れこんだ。
「覚醒なんてお互いさまだろ。」
そう言うとリツもその場に倒れこんでしまった。ふと我に返ったレンは、再びリツの元へと駆け寄る。抱きかかえたリツは苦痛で顔をゆがめている。ひどい怪我だ。腕だけじゃなく、脚の骨も折れている。内臓もかなり損傷している。すぐにワンも駆けつけ、スラムに運びこんだ。シュンはというと、倒れているステイルを見下ろしていた。
「お前に聞きたいことがある。」
俯いたまま動かないステイルに向かいさらに問いかける。
「お前みたいなやつはあと何人いるんだ。」
するとステイルは仰向けになり大の字になってみせた。息も絶え絶えに呟いた。
「なに君?戦争でもしたいの?」
「そんなことは言っていない。お前みたいな1級レベルはあと何人いるかって聞いているんだ。今のリツじゃ知らないからな。」
「1級はね特別なんだ。常に10人で構成されている。」
「ってことはあと9人か。」
シュンは考え込む態勢をとった。こんな化け物みたいなのがあと9人もいるのか?なかなか地下っておもしれぇところだな。シュンはほくそ笑む。
「それじゃあてめぇは降格ってことでいいんだよな。」
「だから言っただろう。僕たち1級は特別なんだって。降格も補充もありえない。そういう存在だったんだ。まぁちょっと今回はやらかしてしまった感じは否めないかな。」
そう言うとステイルの体は水のように溶けていく。待てと言うシュンをよそにステイルはその場から完全に溶けていなくなってしまった。
「悔しいが今回はこれで引かせてもらうよ。リツに伝えておいてくれ。次会うときは必ず殺す。」
ステイルの声はどこから聞こえているかわからなかったが、その言葉を最後に辺りは静寂に包まれた。シュンは振り返り、リツたちの元へと歩いていった。
リツは重傷を負ってはいたが、自身の力で致命傷が悪化するのを防いでいた。残りの手当てはワンによって施され、全治2ヶ月くらいと伝えられた。
「ざまあないな。」
リツはベッドの上で横になりながら呟く。レンはベッドの横の椅子に座っていた。
「すごい戦いでした。リツさんがいなければ今頃・・・」
「みんな死んでたってか?あのレベルで死ぬようならシンには届かないぞ。」
そうだ。マユを救うためにはシンと対峙しなければならないかもしれない。果たしてオレにそれができるのだろうか。レンは膝の下で拳を固める。
「そんな暗い顔をするな。必ずしも戦いになるとは限らない。それに前にも言ったが、お前は強い。」
珍しくほめてくれたことに驚きレンはリツの顔をみたが、リツは反対のほうを向いていた。しばらくするとシュンが入ってきた。
「シュンお前、今までどこに行ってたんだよ。」
「ん、ちょっと偵察。」
そういうと近くにあった椅子に腰かけ、案外大丈夫そうだなとリツに向かって呟いた。どこがだよというレンの反応は無視された。
またしばらくすると今度はワンが部屋に入ってきた。しかしその血相はどこか焦っているように見えた。
「ワンさんどうしたんですか。そんな顔をして?」
「今公社から連絡が入った。No.03とNo.04が地上へ向け放たれたらしい。」
「なんだって?」
反応したのはリツだった。
