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【秋葉原アンダーグラウンド】第6章 5話

「朱雀の本当の意味?」


レンは思わず聞き返していた。リツは続ける。


「朱雀は言わば不死鳥だ。お前の炎にはそれが感じられない。」


不死鳥。確かに古代中国では南方の神鳥と呼ばれている。火を操るというだけでその名をつけたのだが、それがいけなかったのか?レンは再び考え込んでしまった。


「名前が悪いという訳ではない。文字通り朱雀を操ればいいだけの話だ。」


朱雀のイメージができていなかったということなのか?レンは5枚の羽を持つ美しい火の鳥を想像した。この鳥が黄龍から飛び立つ姿。その姿は荘厳で、他を魅了さえする。レンは再び剣を構え、風に炎を与え、そして鳥のイメージを作り出した。


「能力はつまるところイメージだ。お前はそれが出来ている。さぁ、もう一度ぶつけてみろ。」

「いきます!いっけぇえ、朱雀!」


レンの剣から放たれた炎の鳥がリツの重力に覆い被さる。先ほどよりも強い。しかし、ものの数秒でその姿は消されてしまった。


「まだ足りないな。それじゃただの火の鳥だ。」

「はぁはぁ。リツさんはもう朱雀の意味がわかってるんじゃないですか?」

「さぁな。とりあえず今日はここまでにしよう。帰って休むぞ。」


リツは集落に向けて歩き出した。だがその姿はどこか疲れているように見えた。やっぱり完全じゃないんだ。無理をしている。レンは駆け足でリツの元まで行き、2人は再びゆっくりと歩き出した。


リツはとある空き家の前で足を止めそのまま玄関を開けた。


「ちょっとリツさん。いくら空き家だからってこれじゃ不法侵入ですよ。」

「ここが私の家でもか?」


え?レンは思わず呟いていた。そうだった。ここを飛び出しただけでなくなったなんてことはない。レンはリツの後を追うかのように室内へと入っていった。


「出ていって何年も経つからな。多少の埃は目を瞑ってくれ。」


リツはそう言ったが、つい昨日家を出たかのように片付けられていた。リツの几帳面な性格が感じられた。寝室に通されるとベッドが2つ並んでいた。一つはリツさんの。もう一つはおそらくチェルシーさんのだろう。二人だけの穏やかな空間。それが突如奪われてしまった。今なら地下を飛び出して行ったリツさんの気持ちがわかる気がする。


「少し休む。お前はそっちのベッドを使ってくれ。」

「そっちのって、これチェルシーさんのですよね?さすがに使えないというか。」

「私に気を遣っているなら殺すぞ。」


レンはすみませんとだけ言い、ベッドに横になった。レンのほうもさすがに疲れていた。今日一日だけでいろんなことがあった。その中で気になっていたことを思い出しリツに聞いてみた。


「リツさん。覚醒者ってなんですか?」

「お前、そんなことも知らずに能力を使っていたのか?」


ついこの間能力を使えるようになったばかりじゃないかという言葉は飲み込み、黙ってリツの話の続きを聞いた。


「能力はな、覚醒するんだよ。ただ出したりぶつけたりするだけではない。ステイルがいい例だな。やつは体を水に変えただろ?あれは自身の細胞を水分子に変換し、その後再構築させているんだ。ちなみにエルの能力は覚醒していない。覚醒していればシュンの刺突は喰らわなかったからな。」

「リツさんも覚醒者なんですよね?ステイルが言ってましたけど。」

「そうだ。あのときは結構必死でな、急所を異空間化するので精一杯だった。」

「異空間化?そうか、ブラックホール。」

「正解だ。」


リツに褒められた気がしてレンは嬉しかった。あの極限の状態で自身をブラックホール化させるとは。やはりリツは1級の資格があったんだと再認識した。もう少し聞きたいことがありリツのほうを向いてみたが、リツは穏やかな顔で眠ってしまっていた。


「リツさん、やっぱり相当疲れてたんだな。オレがもっと強ければこんな目にあわさずに済むのに。」


そう言ってレンはベッドを飛び出し部屋を出て行こうとする。ふとリツのほうを見ると、リツは眠りながら涙を流していた。


「チェル・・・」


きっと妹のチェルシーさんの夢でも見ているに違いない。レンは頬を両手で叩き、そのまま庭へと出ていった。


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