【秋葉原アンダーグラウンド】第6章 6話
次の日リツが目を覚ますと、チェルシーのベッドはもぬけの殻だった。
「私としたことがこんな時間まで眠ってたか。というかレンのやつ一体どこに行った?」
リツは家中を探して回ったがどこにもいなかった。
「まさかあいつ・・・」
そう言うと急いで外に出て、昨日レンと立ち合った広場へと向かった。そこには案の定レン一人だけが倒れていた。近づいて見ると眠っているようだった。それよりもリツが気になったのは、広場がめちゃくちゃに荒らされていたことだった。昨日はなかった大きな穴も1個や2個ではない。レンはここで何をしていたというのだ。すると急にレンが目を覚ました。
「あ、リツさんおはようございます。体の具合はどうですか?」
「お陰さまでかなり楽になった。というかお前は一体何をしていたんだ?」
「いや、あの後目が冴えちゃって、朱雀や覚醒のことを考えながら修行していました。」
それでこの状況か。だがリツにはまだ納得できていないことがあった。昨日のレンの朱雀ごときではここまで地形が変化することはないだろう。何か掴んだとでもいうのか?
「リツさん、寝起き早々で申し訳ないのですが、もう一度朱雀を見てもらえませんか?」
「別に構わんが私は体力も回復している。昨日よりも強いぞ。」
「それはオレも同じです!」
レンは自信満々で立ち上がり、剣を構えてみせた。リツは何も言わず、自身に重力の壁を纏わせる。明らかに昨日よりも出力が大きい。それでもレンは怯むことをしなかった。
「それじゃあ行きますよ!」
そう言うとレンの背後に鳥の形をした炎が現れた。それは昨日とは違い、不死鳥と呼んでもいいレベルまで仕上がっていた。
「ほう。イメージはしっかり出来上がってるな。だがそれだけじゃ私には届かないぞ。」
「絶対に届かせてみせます。いっけぇえ、朱雀!」
朱雀と名付けられた火の鳥は美しく舞い、そしてリツの重力の壁を包み込んだ。
「昨日よりも大きいが、これじゃ昨日の二の舞だぞ。このまま飲み込んでやる。」
そう言うとリツは自身を包んでいる重力の球体を高速で回し始めた。それはまさにブラックホールだった。朱雀はしがみついてはいたが、次第にその姿はブラックホールに飲み込まれていった。
「ふむ。確かに悪くはなかった。及第点といったところか。」
リツはレンのほうを見た。しかし、レンの目は死んではいなかった。
「あれから色々考えた。不死鳥ってさ、何度でも蘇るんだろ?」
レンがそう言うと、リツは急に体を動かすことができなくなった。ふと自身のブラックホールの中を見ると何やら炎が蠢いている。その炎は姿を変えていき、再び朱雀が現れたのだった。リツはとっさに拳に重力を固めようとしたが、体が言うことをきかない。朱雀の5枚の羽がリツを捕らえて離さなかったのだ。そしてそのまま、朱雀はリツの正面からぶつかっていった。
それから何分時間が経っただろう。リツは気を失っていた。
「リツさん!」
レンの叫ぶ声が聞こえる。それに体が暖かい。レンが治癒を行なっているのがわかる。リツはうっすらと目を開けていった。
「そんな近くででかい声を出すんじゃねぇよ。」
「よかった。すげえ心配したんだよ。急に倒れるからさ。」
リツは朱雀に飲み込まれたときのことを思い出していた。凄まじい威力ではあったが、暖かく、どこか優しい力に包まれたような気がした。まったくレンらしい技だ。
「お前に心配されるようじゃ師匠失格だな。」
「全然そんなことないよ。それにリツさん、朱雀が当たる直前、体動かすことができていたじゃないか。」
そうだった。無我夢中で朱雀の羽を引きちぎり重力波をぶつけたんだった。それでも朱雀はそれをも飲み込んだ。
「まったく、完敗だよ。」
「へへっ。やっとリツさんから一本とったかな?」
二人は笑い合った。
「大事にしろよ。お前だけの朱雀だ。」
「はい!」
そう言うとレンはリツに向かい手を差し伸べた。
