【秋葉原アンダーグラウンド】第6章 10話
このまま削ってしまえばオレは助かるが一般人まで巻き込んでしまう。かと言って何もしないで落下させてしまってもその衝撃でビルは潰れやはり一般人にも被害が及んでしまう。一体どうしたら・・・そのとき、バンっ!と音が鳴り急に腹部に激痛が襲う。見ると血が滲んでいた。
「おいおい頼むよ。私の相手もしてくれ。」
ソウの目の前にはゲートから伸びたアマテラスの腕と銃が見えた。ソウは思わず片膝をつく。そしてついに、ソウ目掛けてビルが落下した。ズズズズっ。地響きがなりビルの1階から潰れていく。しかし、潰れたのは1階の半分ほどで、それ以上の階は窓ガラスが割れたり亀裂が入ったものの、ほぼ原型を留めていた。
「どういうことだ?何が起こった!」
ビルの1階の潰れた辺りにソウの姿があった。その姿はまるで片方の手でビルを持ち上げているかのように見える。しかし実際には蜘蛛の巣のように編み込まれた糸でビルを吊るしているようだった。一体どこから吊るしているというのだ?アマテラスはそう思いビルの上空、いやその先を見た。
「まさかゲートの淵に糸の先を結びつけているとはな。他の能力に干渉できるとはさすが1級と言うべきか。」
しかしアマテラスはゲートを閉じようとはしなかった。ゲートを閉じてしまえば糸は簡単に切れてしまう。そうさせないのは今にもソウが自ら崩れ落ちそうなのが見てわかったからだった。腹部を撃たれたのが効いているようだった。
「苦しそうだな。今楽にしてやるよ。」
アマテラスはソウの目の前にゲートを出現させた。ソウは息も絶え絶えにその中を覗くと、今度は猛スピードで新幹線が突っ込んできた。ソウは先と同様に、反対の手で蜘蛛の糸を作り新幹線を止めようとしたが、新幹線が3両ほど出てきたところでゲートが閉じられた。当然結びつけた糸の先は切れ、新幹線がソウを直撃する。
「がっ・・・」
ソウは衝撃を少しでも和らげようと、新幹線に差し出したほうの手から糸状のバネを作り出したが、ほとんど減速させることはできなかった。意識が朦朧とし、ビルを支えていた糸が数本千切れる。それでもソウはビルを支えることをやめずその場に立っていた。不意にソウの口から言葉がこぼれた。
「新幹線の残りの車両はどうなっている。」
「おや?自身の心配より他人の心配か?随分と余裕だな。そうだな、切れた車両の後ろは今頃操縦ができなくなり弾丸のように走っているだろう。じきに脱線して乗客は皆死ぬ。安心しろ、貴様もすぐに送ってやる。」
「てめぇはどこまで人の命を弄んだら気が済むんだよ。」
「そんなの楽しいからに決まっているじゃないか。楽しい?そうだ、もっと楽しいことをしよう。」
アマテラスはそう言うと、ソウの後ろにゲートを作りだした。ソウが後ろを振り向くと、先の新幹線から切れた後ろの車両が向かってくるのが見えた。
「みんな一緒に死んだほうがお前にとってお望みだろう!」
ソウは両手が塞がっており背中はガラ空きだった。そこに残りの車両が突っ込んでくる。車両と車両がぶつかったような激しい音がした。ソウは車両同士に挟まれ潰されてしまったのか?しかしビルはまだ宙に浮いている。アマテラスは念には念を入れビルが落ちてきたゲートを閉じると、ビルがソウと新幹線目掛けて落ちてくる。またしても地響きのような音が鳴った。
「いや実に楽しかったよ。」
拍手をしながらソウの元に近づくアマテラスだったが、急に拍手をする手を止めた。
「貴様、なんだその姿は?」
ソウは背中から糸で腕を何本も作りだし、後ろから突っ込んできた車両を止めていた。また、上空から落ちてきたビルもその腕で支えていた。
「これが千手のソウと言われる所以か。」
その姿はまるで千手観音を彷彿させる。俯いて表情まではわからないが、ソウはちゃんと生きていた。
「これで3度目だな、一般人を巻き込むのは。」
アマテラスはソウの出す殺気に一瞬震えた。
「仏の顔も3度までだ!てめぇはおれがぶっ殺す!」
顔を上げたソウの目は真っ赤に充血しており、まるで鬼の形相だった。その表情にアマテラスは再度怯んでしまう。ソウはビルを地表に下ろし、新幹線に乗っていた人たちを気遣い、アマテラスのほうへ歩を進める。空中へ飛び、背中の半分の腕でアマテラスに殴りかかる。そのあまりの速さに、アマテラスは寸手のところで避ける。振り下ろした拳たちは地面を大きく陥没させた。なんて力だ。
「くっ。」
アマテラスはゲートを開き身を潜め体勢を立て直そうとする。しかし、ゲートは開いたものの体が入っていかない。これは一体。
「ここにも糸が張り巡らされているのか?一体いつ糸を飛ばした!」
ソウはフーっとため息をつくと、千本もの腕で構えて見せた。
「飛ばしてなんかいねぇよ。その糸はあんたのゲート内から作ったんだ。」
「まさか・・・」
「思い出した?最初にゲートに飲み込まれた糸のこと。消失したかと思っていたかもしれないけど、あんたのゲートにずっと馴染ませていた。今頃ゲート中糸だらけだ。」
そう言うと、アマテラスは無数の糸で縛られ身動きが取れなくなる。
「覚悟はいいな。」
ソウはその直後、千本もの腕でアマテラスに殴りかかった。休むことをやめない拳の雨はついにアマテラスを気絶させるに至った。
