【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 4話
翌日、トガの指示のもと皆修行に勤しんだ。リツはシュンの面倒を見るのではなく、イジュンに相手をしてもらい、シュンはトガに相手をしてもらっている。レンは依然としてベッドから起き上がれないでいたが、シンはワンとマザーを連れてラボにこもっていた。マユはリンとルリと共に、リンの自宅で待機していた。
正午を過ぎた頃シンの提案により皆講堂に集められ、今後の作戦を伝えられた。
「みんな、午前中はお疲れさま!午後の修行に入る前に今後の動きについて伝えたいと思う。我々の最終ゴールはロンの行動を止めることだ。首相の座から引きずり落とし、ヤツの持つ能力を奪う。そして、秋葉原襲撃事件の首謀者として警察へ引き渡す。ロンの残党の数はどれくらいいるか検討はつかないが、頭を失ってしまえば取るに足らない問題だろう。」
「問題はテロリストが首相襲撃の事件の容疑者として報道されるかもしれないということだな。」
「その通りだ。それにヤツに近付こうとしても秋葉原事件同様表に出てくることはないだろう。そこでだ、やつが表に出ざるを得ない状況を作り出す。報道機関のデータベースをハッキングし、これまでの研究が政府主導のもと行われていたことを世に明かす。事実ではあるからね。」
「そんなことをしても、やつがノーと言えばそれまでな気もするが。」
「その一瞬でいいんだ。我々はそこを叩く。」
「あくまでテロリストとして事を進めるということか。」
「ああ。だがそのテロリストはロンと繋がっているというデマも一部の機関に流す。」
「なるほどな。やつの自作自演に国民を巻き込むという訳か。」
「そうだ。これでやつは2度国民に対し弁明をする必要が出てくる。一度目にヤツを拉致し、二度目は出させない。これで国民からの信用は大きくぐらつく。」
「我々は能力を出せても、やつは人前で能力を出せない。そこを上手く利用するということか。」
「せっかくテロリストになったんだ。きちんと利用させてもらうさ。」
「だがその会見に向かう先でロンの手下と遭遇する確率は高いな。もちろん警察などの一般人とも。」
「それは避けては通れないだろう。できれば一般人との接触は避けたい。だからだ、警察には違うほうへも注意を向けたい。」
「具体的な策はあるのか?」
「ある。こちらも切り札はとっておいた。出てきてください、先生。」
先生という言葉に反応し、ラボのほうから音楽プロデューサーのアキモトが姿を現した。
「え?アキモトタカシ?半年以上前に死んだんじゃなかったんだっけ・・・」
「その節は本当に申し訳なかった。騙してすまなかったね。」
「遺体も見つからない不幸な事故だったって言われてましたけど・・・」
「アキモト先生も含め、我々はこうなる事態を想定していたんだ。それで先生には亡くなったと見せかけてこれまで地下で身を潜めてもらっていた。隠れ家としてここは最適だからね。」
「それで、アキモト氏をどう使うというのだ?」
「タカシアキモトは世界的音楽プロデューサーだ。生きていたとなれば各種メディアは追わないわけがない。それに警察やSPだって動くはずだ。」
「ロンの記者会見に合わせてアキモト氏生存のニュースも流すということか。」
「正解だ。これで世間の目を逸らすことができる。それでも最低限の人数は対応しなければならないと思うが、何もしないよりかはましだろう。」
「そのタイミングでアキモト氏が出てくるのは都合が良すぎる気もするが?テロリスト、それにロンとも繋がっているとも思われやしないか?」
「それはそれで都合が良いと思わないか?先生には何者かに捕まっていたとだけ伝えてもらう。その後国民は惑わされ考えさせられる。思考や疑念がそちらに向くという訳だ。例えわずかではあるかもしれないが、そこでロンやその部下たちを相手する。」
「他にも聞きたいことがある。決戦の日時や場所、それに誰をロンの元へ行かせるかを知りたい。まさか全員で行くとか言わないだろうな。」
「そうだね。ある程度は地下にも勢力を残しておきたい。そのタイミングで攻め込まれる可能性だってあるしね。ロンが弁明するとなれば国家議事堂だろう。場所はそこにする。そして日時は次の国会の閉会中にする。そのほうが余計な議員たちはいないだろうしね。」
「大晦日か。悪くないな。できれば年を越す前に片付けてしまいたいものだな。」
「そうだね。私も新年は家族と過ごしたい。」
穏やかに過ごした後自首するつもりだとレンは思ったが、それは口に出さずにいた。ここで変に皆を動揺させてはいけない。
「それで?切り込み部隊は誰々にするつもりだ?」
「うん。まずロンの拉致についてだけど、カイ、君にお願いしたい。君は顔も割れているし、万が一ロンが攻撃に出ても対応できる。そして、最初の部隊はリツ、シュン、ステイル、私の4名でいく。」
「は?ステイルだと?」
リツが驚きの声を発すると、突如どこからともなくステイルが姿を現した。この場に集められたときにはいなかったのは、おそらくステイルの持つ水の能力で大気中の水分に溶け込んでいたのだろう。
「やぁキャサリン、久しぶりだね。次会うときは殺す予定だったけど、上司の命令なら仕方ないよね。またの機会に取っておいてあげる。」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ。」
「まあまあ君たち。事情は聞いたが今は仲良くしてくれ。」
ふんとリツは言い、その場に置いてあった椅子に腰をかけ、両腕をくみ何かぶつぶつと呟いている。余程相性が悪いのだろう。
「そしてシュン。君にも出てもらうが大丈夫か?」
「それはこっちのセリフ。オレよか適任がいたんじゃない?」
シュンはそう言うとレンのほうを向いた。レンはハハっと笑い、なんだか都合が悪い顔をしていた。
「シュン、レンもそうだが君にも無限の可能性がある。君ほど切り込み隊長に相応しい人間はいないと思っている。それに、他の1級師兵には地下を守ってもらいたい。彼らは地下の民からの信頼も厚い。あとは個人的なわがままではあるが、私の隣でその力を発揮してほしいんだ。」
「んなこと言われたら断り辛くなるじゃねぇか。いいぜ、何をやればいい?」
シンはワンに伝えてあると言い、リツ、ステイル、シュンは別室へと移動させられた。
