【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 5話
3人が講堂から出ていくのを確認し、シンは次の作戦を話し始めた。
「行ったかな?それでは次の部隊について説明する。」
「シンさん、いいの?作戦は全員で共有しておいたほうがいいような。」
「レン、もし君第1陣だとして、第2陣とかバックアップがいるとか言われたらどんな気持ちになる?」
「それは・・・安心すると思います。」
「そうだ。人は少なからずそんな気持ちを抱くと思う。でも今回はそれではダメなんだ。一気に片を付けたい。それにシュンもそうだが、あのリツでさえ十分な力を発揮できない。加えて、自分たちは捨て駒とさえ感じてしまう恐れもある。」
「だけど、相手だって何人いるかわからないですよね?強いやつほど後ろのほうにいるのは明白です。第一陣ってそういうものなんじゃないですか?」
「確かにその通りだ。だからそこに私を含めた。この意味がわかるよね?」
言わば史上最強が第一陣で出てくるのだ。相手だって強者を出さざるを得ないだろう。後ろが弱くなる可能性さえ出てくる。
「レン。君はトガ、それとエンも加えて奥義習得に向けて準備してくれ。」
「え?それってもしかして・・・」
「そうだ。トガからは青龍を。エンからは玄武をそれぞれ習得してくれ。ちなみにエンは玄武の守り刀である演武の所有者だ。今度こそ完全顕現させてみせろ。」
「一度に2つも・・・でも、わかりました。オレやってみます!」
「今ある朱雀を入れて3つだ。これならたとえ白虎がなくとも十分戦える。という訳だ2人とも。レンのことをよろしく頼む。レンは習得後、加勢にきてくれ。」
はい!とレンは大きな声を出した。それにしても、トガっさんのことは知ってるけど、エンさんは初めてだな。さっきからずっと俯いたまま話を聞いていて表情は読み取れないけど、やっぱり1級だけあって相当強いんだろうな。そんなことを考えながら、レンはトガとエンと共に講堂を後にした。講堂にはシン、イジュン、ドク、アキモトの4人が残った。
「シン、良かったのか全て伝えなくて。」
「ああ。余計なことは今は考えてもらいたくないからな。」
「マリくんのことだな。」
「そうだ。おそらくロンはこの作戦についても考えていると思う。となると次の行動はマリのことを連れ去るはずだ。だけど、マリの目覚めまでまだ時間があるだろう?その前に起こすとなればマリの力の半分も引き出せない。そんな博打に出るやつではないと思うが、先生に頼んで劇場スタッフとしてミライを潜伏させてある。彼女は強い。それに、今のところロンの手下がマリの回収に来たという報告は受けていない。」
「全く知らなかったよ。君は冷静さを欠いていると思っていたが、そんなことはなかったんだね。」
「いや、実際心中穏やかではなかったよ。サラが目を覚ます確率が少しずつ下がっていっていたからね。それにすぐ手の届かない場所にいる2人の娘のことも心配だった。その結果カラスのことまで気が回らずライを失ってしまった。」
「ライのことはお前のせいではない。ライは自分の意思で使命をまっとうしたんだ。気に病むところではない。」
「ありがとう、イジュン。でも私はこの戦いの連鎖に終止符を打ちたい。これまでの研究はこうなることを望んで行われたはずではなかった。レンと戦ってようやく目が覚めたよ。全ての能力をこの世から消す。もちろんマリ自身に課している呪縛も解いてやる。」
「それで、それら全てを果たした後お前は自首するという訳か。」
「やっぱり気付いていたんだね。」
「当たり前だ。何年お前と一緒に仕事をしてきたと思っている?」
「確かにそうだね。でももう決めたことなんだ。イジュン、これからは君が中心となって地下の民だけでなく、今も地上で病気に苦しんでいる人たちを救ってくれ。臨床データは膨大にあるんだ。すぐに国から認可は降りるだろう。もちろん、私にもぎりぎりまで手伝わせてほしい。」
「一度決めたらテコでも動かないやつだったな、お前は。まぁサラくんが反対したら折れる気もするがな。」
「うっ、それは・・・」
「冗談だ。少し意地悪したくなっただけだ。サラくんだってお前の意思を尊重してくれるさ。」
イジュンは珍しく笑って言った。シンはどこか安堵したような顔をしていた。ずっと心に引っかかっていた何かが取れた感覚だった。
「話の途中すまないね。時間も限られている。早速着火剤となる各種メディアへの情報を作ろう。」
「わかりました、先生。と言う訳だマザー。全部聞いてたよね。ライがいない分エルにも協力してもらい、地上の情報網を乗っ取ろう。」
「乗っ取るはやめてよ、シンちゃん。私は情報網を少し都合の良いように整備するだけなんだからね。」
「悪い悪い。また罪を重ねてしまうところだったね。」
その場にいた全員が笑い、来たる大晦日への準備が始まった。
