【秋葉原アンダーグラウンド】第3章 9話
レンは口から大量の血を吐いた。おそらく内臓までやられている。レンは膝から崩れその場に倒れ気を失ってしまった。
「勝負ありといったところか。そっちのダメージもかなり大きいみたいだがな。」
シュンは右手指と左足が折れていた。辛うじて立ってはいるが、今にも倒れてしまいそうだった。
「あの一瞬でよく2回も軌道を変えられたな。」
「なんだよおっさん、見えてんじゃねぇか。」
シュンはさすがに疲れたと言わんばかりに、その場に座り込んでしまった。
「必中必殺の技なんだけどな。これ以上動けねぇってのは技とは言えねぇよな。」
シュンは黄龍から数cmのところで、右手指だけを使い、勢いをさらに上げ、レンの体すれすれで背後まで飛び、風の軌道が変わる寸前で右足で踏み込み、勢いを殺さずレンの背に拳を入れたのだった。
シュンはその場に寝転び、あとは煮るなり焼くなり好きにしなと言った。
「さっきレンも言ったが、これは殺し合いじゃない。オレから言わせれば修行みたいなものだ。」
「オレがこいつの修行に付き合わされたってことか。やられたぜ。」
「いや、これはお前にとっての修行でもあった。」
「どういうことだよ。」
シュンは理解できないまま呟いていると、遠くのほうから足音が聞こえた。
「盗み見とは趣味がよくないな。」
「うるせぇ。考えてたことはどうせ同じだったろ。」
リツだった。陰で2人の戦いを見ていたのだ。リツとしてもレンに能力を開花させたかったのだ。加えて、
「お前が地下で役に立つか見ておきたかった。」
「オレが?地下で?マジ意味わかんねぇんだけど。」
シュンは笑ったが、痛みできちんと笑えていなかった。
「地下はお前も知っての通り戦場だ。戦場には一人でも多くの兵士がいたほうがいい。だから、私、レン、お前の3人で行く。これは決定事項だ。異論は許さない。」
なんて勝手な判断だろう。こうなってしまったら、トガにも止めることはできない。トガはため息をついた。
「そういうことだ、シュン。ケガを治したらこいつらと共に地下に行け。それに、お前が言ってた自分の力を試すということも可能だ。ただし、死ななければな。」
シュンは空を見上げていた。あまりの事の速さに思考が追い付かない。
「協力なんてしないぜ。もともと一人で行く予定だったんだ。それに、そこに転がってるやつみたいに足引っ張られちゃ困るからな。それと、そこの女だって邪魔になるようならオレのほうからやってやる。」
「お前はまだ自分の立場をわかっていないようだな。」
そう言うとリツは倒れているシュンに重力をかけ始めた。ざっと自重の5倍ほどだ。折れた骨が軋みシュンは唸った。
「もし私と戦っていたら、その自慢のスピードとやらも出せなかっただろうな。」
シュンは全く動けないでいた。それどころか地面にめり込みつつある。リツはさらにかけている重力を上げていたのだ。
「リツ、それくらいにしておけ。地下行きが遅くなるぞ。」
リツは重力をとき、そのままどこかへ行ってしまった。トガはレンを担ぎ上げ、シュンに向かってこう放った。
「地下には能力者はたくさんいるが、今回の件に関しては協力してくれるとは限らんからな。その点、ここでの能力者の存在は貴重だ。」
「わーったよ!付いてきゃいいんだろ!あいつの指示にも従ってやるよ!」
シュンは半ば諦めた様子でトガに向かって言った。
「物わかりのいいやつでよかったよ。きっとこいつともうまくやっていける。」
果たしてリツとはうまくやっていけるかわからないが、逆にうまくやっていけるやつのほうが少ないことはトガにはわかっていた。
救急車を呼んでやる。
トガの話をどこまで聞いていたかわからないが、シュンは穏やかな顔で気を失っていた。
