【秋葉原アンダーグラウンド】第4章 5話
管理室の一角に休憩室があったのでエルはそこに倒された。時折穴の開いた体が痛む。しかし、リツに応急処置のお陰でこれだけで済んだのだ。文句は言えない。
「リツ、お前ならもうわかっていると思うが、オレがやられたって情報はすでに公社に届いているぜ。」
「そうだな。ここで油を売ってると追手が駆けつけるかもな。」
一体いつ情報を送ったんだ?いやそんな体で何ができたというのだ?レンはそこらにある監視カメラやパソコンのモニターを眺めていた。
「ライさんなら既に感知しているかもな。なにしろあの人の領域は全地下に渡るからな。」
「ライか。懐かしいな。できれば会いたくはないがな。」
ライってたしかサラさんの被験者の第1組目の人だったような。ということは濃い血清が入っている可能性が高く、能力の質もレベルも格段に違うこととなる。リツが会いたくない理由がなんとなくわかった。
「これから私達は公社に行く。公社っていうのは、地上でいう役所のことだ。」
レンが公社?みたいな顔をしていたのに気付きリツは付け加えた。
「公社か。まぁ妥当だろうな。イジュンさんに会いたいんだろ?」
「そうだ。どうせシンには会えないだろうからな。その点イジュンならまだ話が通じる。」
「お姫様に会わせてくれってか?まぁ無理だろうな。ルリのことはトップシークレットだ。イジュンさんも忙しいんだ。そこらの社員に何て言ってイジュンさんを呼び出せる?」
「お前の言う通りだ。だが何も直接会えなくてもいい。」
わからないなという顔をし、エルはベッドに再び横になった。
「シュン、お前は動けるか?」
「ああ、今すぐいけるぜ。だいぶ回復してきた。」
あんなにダメージをもらったのにもう回復してきたというのか?準1級レベルを倒したことといい、シュンは確実に能力の使い方が上手くなっていた。レンは少し焦っていた。
「よし、今すぐここを出るぞ。無駄な戦いは避けたいからな。」
3人は荷物をまとめ管理棟を後にした。そのまま林の中を入っていく。レンは急に誰か襲ってこないか不安で辺りを見回していた。
「大丈夫だ。やつはああは言っていたが追手はこない。」
それほどエル一人でここら一帯は十分だったというのか、はたまた次の死合会場まで誘われているのか。いずれにせよ公社のやつらは余裕だ。林の中はうっそうとしげってはいたが、しだいに開けてきているのがわかった。わずかだが明かりのようなものも見える。
「着いたぞ。ここがアンダーグラウンドの中心街だ。」
林を抜け眼下を覗くと、そこはまるで秋葉原の街並みのようなものが広がっていた。ビルが立ち並び、人が歩いている様子も窺えた。違うところと言えば、車や電車は走っておらず、街全体を照らす陽の光は天井にある無数のライトから伸びていることだった。
「これって、秋葉原だよな?どういうことだ?」
「おそらくこの真上が秋葉原の街ということで再現しやすかっただけだろう。」
「あそこらへんを歩いているやつらは全員能力者なのか?」
「ああ。難病を抱えていた者たちが、藁にも縋る想いで連れてこられたところだからな。ああやって歩き回れるということは、サラの血を分けてもらったということだ。すなわち、何かしらの能力はあって当然だ。」
レンは頭が混乱している様子で、シュンはふーんといった様子だった。
「地上と構造が同じだということは、役所の場所はわかるよな?」
「すみません。オレ、秋葉原の役所がどこにあるかわからないです・・・」
レンは肩を落としていた。シュンはそもそも興味なしという顔をしていた。
「シュンはともかく、レンお前は何度も秋葉原に来ておきながら何をしていたんだ。」
「もっぱらドン・キホーテです・・・」
リツはため息をつき、やれやれといった表情で2人を役所まで案内した。
