【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 3話
押し寄せる報道陣を横目にアキモトはリムジンに乗り込む。タカシ・アキモトが生きていたことを知り、世間は歓喜と驚きに満ち、いわばお祭り騒ぎとなっていた。だがアキモトにとってはそんなことはどうでもよく、国会議事堂における展末のことが気になっていた。
「カイくんからの連絡はまだかね。」
「はい。アキモト先生のニュースから10分ほど経ちましたが、カイ氏からの連絡は未だございません。」
「そうか・・・」
アキモトは自身のスマートフォンで国家での記者会見のニュースを眺めていた。本来ならここにカイが乱入しているはずなのだが・・・何かがおかしい・・・時間も場所も正確なはずだが・・・次の瞬間、運転手が急にハンドルを切る。アキモトとそのマネージャーは大勢を大きく崩した。マネージャーが運転手に問い詰める。
「一体どうしたというのだ?」
「も、申し訳ございません。急に女の子が飛び出してきまして。」
「女の子だと?」
マネージャーは車を降り、そこに立っていた女の子に声をかける。
「君!急に飛び出したら危ないじゃないか!」
「ミカサはただ命令に従っただけ。」
「命令?一体誰の・・・」
マネージャーはそこまで言うと、その場に倒れ込んでしまった。ミカサと名乗る女の子はアキモトのそばのドアを開ける。
「お迎えにあがりました、アキモト先生。」
「君は・・・ミカサ君なのか?」
「はい。ミカサでございます。」
「本当なのか?だって君はあのとき・・・」
アキモトもそこまで言うと、マネージャー同様にミカサによって感電させられ、気を失ってしまった。
-----
「なんだここは?」
リツとイジュンは扉を開けると、その空間は一面鏡だらけだった。まるでトリックアートの世界に迷い込んだ感覚だった。閉めた扉の内側も鏡となっていた。その中を覗くと、まだあどけない少女が立っていることがわかった。リツはとっさに後ろを振り向くと、そこには鏡に映った少女の姿があった。どちらが本体でどちらが鏡像なのか見分けがつかない。すると本体であろう少女が呟いた。
「私はただの足止め。ここからはもう出られないよ。」
「お前何を言ってるんだ?こうやって扉を開けてしまえば・・・」
リツが扉に手を伸ばそうとした瞬間、腕に飛針のようなものが刺さる。リツは反射的に手を引く。
「なるほどな。鏡の中を移動しているという訳か。」
「うん。今のは警告。次に変な行動をしたら心臓に刺すから。」
イジュンはリツに刺さった飛針を抜いてやり、傷の手当を施す。リツは苦痛に顔を歪め、何が起こったのかイジュンに尋ねる。
「人が鏡になぜ映るか知っているか?簡単に言えば光の反射だ。あの子が鏡に映っているということは、光の速度で鏡と鏡の間を常に移動していることに等しい。つまりだ、あの子が鏡に映っている以上、我々は常に死と隣り合わせにいるということだ。」
「そういうことか。この飛針、飛ばして刺された訳ではなく、実際に刺された感じがしたのはそういう訳か。」
ハクは2人の会話を聞き拍手をする。だがタネがわかってしまえば対策はできる。要は鏡を壊してしまえばいいのだ。イジュンは微動だにせず、空間の外側に向け重力をかける。しかし、イジュンの力をもってしても鏡一つ割ることができなかった。そして次の瞬間にはイジュンの心臓に飛針が刺さっていた。イジュンは思わず膝をつく。
「おい、イジュン!」
「大丈夫だ・・・わずかだが心臓にまで届いていない・・・」
それでも重症だ。早くなんとかしないと。しかしリツの焦りとは裏腹に、イジュンの傷口が氷によって塞がれていく。
「心臓に刺すって言ったけど、殺すとは言ってない。」
「お前は一体何がしたいんだ・・・」
「さっきも言った。ハクは足止めしたいだけ。」
イジュンは座ったまま壁にもたれかかった。イジュンはもう戦えない。かと言ってイジュンが壊せなかった鏡を壊すことなどできるのだろうか。しかしなぜあれほどの重力を与えてもひび一つ入らなかったのだろう。そんなことを考えていると、リツたちが入ってきた扉とは別の扉が開いた。
