【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 4話
「すごいね、これ。氷を鏡代わりに使うなんてね。」
「シン!ワン!扉を閉めるな!」
だかリツの声は一足遅く、シンとワンは扉を閉めてしまった。シンは閉めた扉が鏡になっていることに気付く。
「ん?もしかして閉じ込められた?」
「馬鹿野郎・・・」
シンは鏡に映った少女を確認し、ペタペタと触ってみせる。そして少女のほうを振り返る突然話し始めた。
「これ全部が君の張摩という訳だ。そんなに若いのにすごい出力量だね。」
「あ、ありがとう。」
褒められることに慣れていないのか、ハクは俯き加減でぼそぼそと呟いた。
「おいおい、感心してる場合じゃねーぞ。イジュンの力でも壊せなかった鏡だ。」
「まぁ張摩は内側からの攻撃に対して強いからね。それに・・・」
そう言うとシンは鏡をよく見てくれとリツに言う。リツは言われたとおり鏡を観察すると、うっすらだが何かに守られているのがわかった。
「堅牢な張摩の正体はこれだ。一枚一枚に玄武・剛が張ってある。」
「それってほぼ壊せないって言っているようなもんだぜ。」
「まぁ普通の人間ならね。だがオレにかかれば・・・おっと危ない。」
動かないでと言ったハクは、シンの喉に飛針を突き立てていた。そこに立っていることに全く気が付かなかった。シンはお手上げとでもいうように両手をあげた。ワンのほうも動けず、ただだまってハクを見つめていた。
「あとどのくらいこうしていればいいのかな?」
「わからない。連絡が来るまでは。」
「そうなんだね。でもおじさん達も急いでるんだ。せめてロンのやつがどこにいるかだけ教えてくれないかな?」
「たぶん・・・地下にいると思う。」
「やっぱりか。」
シンは少し考えるような仕草をとる。一体何を考えているのだろう。だがしばらくするとシンは気の乗らない声で話し始めた。
「おそらくだけど、こっち側の人間にロンへの内通者がいるな。」
「おいおい、それって裏切り者ってことじゃねぇか。」
「カラスの一件だってある。そんなに不思議なことじゃない。それに、その方がこれまでの事態に説明が付くと思わないか?」
「一体誰なんだよ、その裏切り者って。」
「それはまだわからない。」
リツは困惑していた。これまでの事態とシンは言った。今回の件だけではないと言いたいのだろうか。とすれば一体いつから?シンはどこまで推測しているのだろうか?そんなことを考えていると、また別の扉が開いた。
「なんだよここは・・・ん?みんないる?」
シュンだった。シンが脅されている?それに、出発するときにはいなかったワンやイジュンまでいたものだから状況が飲み込めないでいた。そしてシュンは閉じてはいけない扉を閉じてしまった。閉めた扉の鏡にはやはり少女が映り込んでいた。
「えーっと・・・これどういう状況?」
「また馬鹿が一人来た・・・」
「見ての通りだ、シュン。我々は今監禁されている。」
リツの馬鹿発言には少しムッとしたし、シンがなぜ明るく話しているのか意味がわからなかったが、それでも状況は何となく理解した。この少女の能力が何なのかはわからないが、全員が動けないでいるのは相当ヤバいやつなのだろう。シュンは思わず笑みを漏らした。
「おもしれぇことになってるな。」
「シュン、何も面白くはないよ。彼女は鏡と鏡の間を常に移動している。まてよ・・・確か君も光速で移動できたよね。彼女を捕えることはできないかな?」
「そういう力か・・・シン、少しの間やつの気を引いてくれたらできないこともないぜ。」
「そんなこと、させない。」
「だそうだ、シュン。あとは君のタイミングで動いてくれ。」
シンがそう言うと、ハクはシュンから目を背けシンのほうを見させられる。
「君のシュンに対する意識を切った。」
その一瞬でシュンは消え、光の速度で移動し出した。
