【秋葉原アンダーグラウンド】第4章 12話
リツが足音を立てながら2人のそばに近づく。
「何してんだ!と怒鳴りたかったが、そんな状態だと泣き面に蜂だな。」
よくもまぁそんなセリフが言えたもんだとレンは思ったが、リツは穏やかな顔でこちらを見ていた。
「生きていてくれて安心したよ。私がいないところで死んだら殺してやるからな。」
やっぱりいつものリツだ。だが安心してくれているのは本心に違いない。その証拠に2人の傷の手当てをしてくれた。
「レンは2級を、シュンは準1級を2人目か。お前たちは決して弱くはない。私が保証する。」
立てるかと聞かれると、レンは立てたがシュンは起き上がるので精いっぱいだった。仕方なくリツはシュンに肩を貸してあげた。
「そういやリツさん。イジュンさんとは会えたんですか?」
「ああ。まさか本当に直接会えるとは思ってなかったがな。」
リツはイジュンとのやり取りを2人に話した。2人は初めは驚いて見せたが、思うところがあり、黙って最後まで聞いていた。
「さっきのお前の風で、マユを起こすことはできないのか?」
「うーん、やってみる価値はあると思うけど、マユの力の方が強いはずだからなぁ。」
マユは誰よりも近くで巫女の光を浴びていた。おそらく反魂の能力を身につけている。オレが生き返れたのもそのおかげだ。しかし、最強?を誇る反魂には、反魂でしか対応できないんじゃないかとレンは考えていた。シュンの方をみたが、ついに気を失ったようだった。
「マユはじきに目を覚ます。おそらく何かがその目覚めを妨げているに違いない。シンはそれも込みでシミュレーションしているはずだ。」
「だったら早く地上に戻ってマユのとこに行かないと。」
「大丈夫だ。マユのそばには誰がついてると思ってるんだ。」
トガだ。確かにトガがいれば心配はないかもしれない。しかしレンはそれでもマユのそばにいなきゃいけない気がしていた。
「それよりも、私達は別に行くところがある。」
「行くところ?」
「ワン博士のところだ。」
ワンって確か、シンやサラさんたちと一緒に研究していた仲間だよな。ワンはシンと一緒にいるんじゃないのか?
「ワン、博士のところにどんな用事があるの?」
「ワン博士は能力を消失させる第一人者だ。能力を必要としないものは、そこに行けばなくすことができる。」
そんなことが可能なのかとレンは驚いてみせたが、一体誰の能力をなくしたいんだろうという疑問がわいた。
「もしかしたら、一般人に反魂の能力は巨大すぎるのかもしれない。」
リツはマユが目を覚まさないのは反魂の能力を授かったからと疑っているに違いない。たしかにサラさんの血筋でもないマユには手に余る能力なのかもしれない。でもそれじゃ、
「ルリは目を覚まさない。そして、サラさんも。」
「別にマユの能力を今すぐ消し去りたい訳ではない。じゃないとシンがうるさいからな。まぁ最終的には消させるつもりだがな。」
「じゃあなんでワン博士のとこに行くんだよ。」
「やつを守るためだ。」
急にワン博士をやつ呼ばわりしたことに驚いたが、一体誰から守るというんだろう?
「もしかして、ロン?」
「正解だ。ロンが次に狙うとしたらマユだ。だが、今すぐそうしないのはなぜかわかるか?」
レンは考えてみたが答えは出なかった。
「マユを殺すとなればシンが黙っていない。となるとロンはシンと戦わなければならなくなる。しかし、ロンはシンには勝てないんだよ。」
シンはそれほどまでに力をつけていたのか。だからロンはマユではなく、マユの力を消す存在であるワン博士を狙うという訳か。でも、
「ワン博士はほとんど最初の被験者みたいなものだろ?守ってやらなくても自分でなんとかするんじゃないのか?」
「やつは自分の能力を自分で消したんだ。それに、やつのいる集落はみな能力を持っていない。やつを守ろうとはするさ。でも能力者には束になっても敵わない。」
ワン博士は非能力者たちだけで暮らしている。もしかしたらその人たちから慕われている存在なのかもしれない。
「ワン博士ってやっぱりいい人なんだな。」
「お前何を勘違いしてるんだ?やつは人殺しだぞ。それも私の妹の命を奪ったんだ。」
レンはピタリと足を止め、それってどういうことだよと先を歩くリツに向かい叫んだ。
