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【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 10話

3人はアンダーグラウンドの奥深くへと足を運んでいた。もはや人影はどこにも見当たらない。しばらくすると高い壁のようなものが見えてきた。5mはあるだろうか?飛び越えるのは無理そうだ。この中にワンがいるとのことで、3人は外周を歩き入口らしいところまでやってきた。そこには門番が立っていた。

「単刀直入に言う。ワン博士に会わせてくれ。」

はいわかりましたとは当然ならなかったが、キャサリンの名前を出した瞬間門番の目の色が変わった。

「ここは能力を持つ者の入所は禁じられています。ましてやあなたは犯罪者だ。通すわけにはいかない。」
「会いたい理由すら聞いてくれないのか?」
「会わせる理由がありません。」
「博士を守らなければならないと言えばどうだ?能力には能力で対抗するしかないだろう?」
「博士を守らなければならない根拠がありません。どうかお引き取りください。」
「ロン、もしくはその遣いがじきにやってくるぞ。」

ロンの名前を出した瞬間、門番はまたしても目の色が変わり、電話で内部の誰かと連絡を取り始めた。

「入ってもいいそうです。ただし、このバンドはつけていってください。」

一体誰とやり取りをしていたのだろうとレンは疑問に思ったが、黙って言われた通りバンドを両手に巻いた。すると両手に力が入らない感覚に襲われた。修行のためと言い常に一定の圧の風を拳の中に収めていた。それが突如消えたのだ。

「このバンドはあなた方の能力を封じます。取れてしまえば能力は再び扱うことができますが、取れる人間は限られています。」
「博士め、こんなものまで開発しているとはな。」

リツは剝がそうとする仕草をとってみたが、バンドはびくともしなかった。

「おわかりだと思いますが、ここにいる人間には能力がない、いわゆるアンチスキルだけで生活を営んでおります。その点留意していただき、行動をしてください。」

わかってるよとリツは言い3人は門をくぐる。レンはまたしても驚かされた。壁には囲まれているものの、しっかりとした住宅街が目の前には広がっており、ここもまた地上を思わせた。そこら中に人が歩いている姿もある。

「こっちだ。」

リツは2人に後についてくるよう促す。リツだって初めてくるに違いなかったが、明らかに住宅街には似つかわしくない研究所のような建物が目に入った。おそらくワン博士はここにいる。しかし、その入り口にもやはり門番は立っていた。

「話は聞いていますキャサリン・ローレック様。どうぞ中でワン博士がお待ちです。」
「リツでいい。それにそんなかしこまるな。私はただの犯罪者だ。」

承知いたしましたと遠くで声が聞こえ、3人は施設の中へと足を踏み入れた。施設の中では研究員と思われる人間がせわしなく歩き回っている。最新鋭を思わせる機材や設備の数々にレンは少し興奮していた。まるで映画でみるような風景だった。

研究所の奥のガラス張りの部屋へと促されると、何やら他の研究員と話し込んでいるワンの姿があった。自分たちのことに気が付くと、早々に話を切り上げこちら側に出てきた。

「これは驚いたな。まさかまた戻ってくるとは。」
「本音を言えば二度と来たくなかったけどな。薄々気が付いているだろう?自分がロンに狙われていることに。」
「そうだね。ロンの計画を考えればシンやサラさんやルリちゃん、それにマユちゃんだって邪魔な存在だ。特にサラさんが目覚めるとシンによる地上への報復が始まる。でも、サラさんに反魂はあてられない。能力の二度打ちと変わらないからね。それはマザーからも証明済みだ。となると、持っている能力を一度消し去る必要がある。だからオレが邪魔になる。」

ワンは他の研究員からの質問に答えさらに続ける。

「見ての通りと言ってはなんだが、新薬の開発は成功した。能力を100%消し去ることができる。このスラムで暮らしている人たちは皆能力を毛嫌いしていた。危険だからね。だからそういう人たちを集めたところ本当にたくさんの人が集まった。蘇生と引き換えに凶器を手にしてしまったことを後悔してる者もいた。それが今や幸せそうに暮らしている。オレにはこの街を守っていく義務がある。」
「それじゃあ一番安全な公社へ行く気はないということだな?」
「ああ。君と同じであそこへは二度と戻るつもりはない。」

リツには初めからわかっていたことだった。チェルシーを助けられなかったということもあるが、何より公社の方針に強い憤りを覚えているに違いない。だが彼の場合は、地上へは逃げず、自分のやるべきことをやった。それが新薬の開発であり、スラム街の建立だ。自身の能力を消すことまで行った。それが一体何を意味しているのか。

「いつ死んでもいいってことか。」
「あ、死ぬのは勘弁。オレにはまだ小さい子がいるからな。」

3人はきょとんした。そのとき研究室に忍び寄る足音が聞こえた。

「あれ?お取込み中だった?」

目の前には1級の勲章を腰につけた男が一人立っていた。


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