【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 3話
「やぁマザー」
コンピューターを立ち上げ、それに向かいワンは話しかける。
「急にどうしたのよ?まぁどうせ研究が上手くいってなくて助けを求めにきたんでしょ?言っとくがね、2度打ちは100%失敗するの!」
「100%はねぇだろぉ。98.9999%って言ってたじゃねぇかぁ。」
「それを100%だって言ってんの。」
ワンはマザーの前でへなへなと俯いてしまった。ワンの後ろからイジュンが近づいてくるのが見え、マザーは驚いた。
「あら?今日は珍しいお客さんもいるのね?どう、最近の公社は?」
「世間話をするために来たんじゃない。少し計算をしてほしくてな。」
「計算なんか、あんた電卓でも叩いてなさいよ。」
イジュンはムッとしたが、その時俯いていたワンが顔を上げた。
「そうなんだよマザー!新しい理論のシミュレーションをしてほしくてここへ来たんだ!」
ワンはキラキラした目でマザーを見ていたが、マザーは厄介事を持ってこられたかのようない嫌な顔をしていた。ワンは先ほどのイジュンとの会話をマザーに聞かせ、そのための新薬の理論を展開していた。おそらく研究所からここまで走ってくる間に思いついた理論だが、なかなか的を得ていた。ワンはやはり天才と言われるだけある。
「へぇ、なかなか面白そうな話じゃない?一旦授かった能力を消しちゃうとはね。考えもしなかったわ。だって能力があったほうが何かと便利じゃない?」
「能力は核爆弾と一緒だ。この国では核の保有は禁止されている!」
「そんなこと言って、他の国ではばんばん核作ってるじゃない。日本政府の切り札としてあんたら残っていなさいよ。」
マザーはあれやこれやと言い返してきたが、その裏ではワンの理論のシミュレーションを始めているようだった。できたわという声に2人は反応し、画面を覗き見た。
「能力さえ消してしまえば、99.9999%2度目は大丈夫そうね。それに、あんたの薬の理論も70%強っていう数字が出てる。まずはこっちの数字を上げることね。」
ひゃっほーとワンは飛び上がり、マザーにキスをした。
「やめろ汚い!わたしにそんなことするな!」
「別にいいじゃねぇかよぉ。減るもんじゃないんだしぃ。」
ワンがそう言うと、マザーはコンピューターを強制的にシャットダウンしてしまった。おーいマザーというワンの呼びかけにも一切応じない。
「とりあえず道筋は見えたな。あとはラボに戻って研究だ!」
「オレは公社に戻る。くれぐれもリン君に迷惑をかけるんじゃないぞ。」
イジュンはどこか笑いながらその場を後にした。ワンは洗濯物干すの忘れてたーと急に思い出したように自分たちの家へと帰っていった。
「カラスマ、今なんて言った?」
「あれ、聞こえてなかったんですか?1級昇格テストを行うって言ったんです。」
「1級は今の9名で十分足りているだろう。一体誰の命令だ。」
「それはもちろん、シンに決まっているでしょう。」
バカな。シンは今サラやルリのことで頭がいっぱいなんだぞ。しかもこのアンダーグラウンドの治安は維持できている。兵を強化することに意味があるとは思えない。
「ちなみに聞くが、一体誰を昇格させるつもりだ。」
「それはもちろんキャサリンさんですよ。彼女は優秀すぎる。」
ばかな。ついこの間2級に昇格したばかりだぞ。実務経験が足りなすぎる。それに、他の1級師兵2名の推薦だって必要だ。
「一人はお前だとして、もう一人は誰が推薦してるんだ?」
「別に私は推薦なんかしていませんよ?シンの独断です。」
「ばかな。それこそ内部反乱が起きるぞ。」
「それでも、シンには絶対に逆らえない。」
シンはロンに大敗し蘇生した後、強大な能力を手にしていた。その全容は未だに謎だったが、あのライですら相手にならない。それほどまでに強いということだった。
「推薦はいいとして、実務経験はどうカバーするんだ。」
「それは当日になればわかりますよ。」
カラスマは不気味な笑みを浮かべトガの元から離れていった。
昇給試験は2日後に行うとのことだった。
