【秋葉原アンダーグラウンド】第3章 5話
2人は秋葉原の雑居ビルの間に来ていた。店の中だと話しにくいということで、男からの提案だった。
「さて、何から話そうか?」
男は振り返り、レンに聞いて見せる。レンは慎重に言葉を選んでいるようだった。それを察した男が話し始める。
「そうだな、能力についてはあまり話さない方がいいんだろうな。オレの名前はシュン。『熱』を使える。」
今となっては、いきなり『熱』を使えると言われても驚かなくなったレンだが、それでも自分と同じような人間が他にもいるという事実は信じられない。それもこの地上に。
「お前は何を使えるんだ?」
店で聞いたセリフと同じだ。この男は信用できるのか?見ず知らずの人間に話してよいのか?いや、この男は確かに能力について何かを知っている。レンは恐る恐る答えた。
「オレは風を扱える。」
「風か。いい能力だな。」
「お前、シュンはなぜ能力を扱える?」
すると、シュンの肌の色が赤く染まっていく。うっすらだが湯気も上がっているようにみえる。
「なぜかって?お前と同じでお姫様からもらったんだよ!」
言い終わると同時に、レンの腹部にシュンの拳がめり込む。
「っっ、はぁっ・・・!」
レンはその場に膝から崩れ落ちた。この一瞬で何が起きた?レンはシュンから目を離していない。気付いたときには目の前にシュンがいて拳が当たっていた。距離としては10m以上離れていたはずなのに。まるで瞬間移動だ。リツの使う縮地法でもこうはならない。
「熱が使えるとな、体の細胞を活性化させることもできるんだ。その結果、瞬発力、敏捷性、ありとあらゆる動きを速くすることができる。なんだ、立てるじゃないか。」
レンは腹部を押さえながら立ち上がってみせた。吐き気と眩暈に襲われながら、シュンに向かって叫ぶ。
「なんでこんなことするんだ!?仲間じゃないのか!?」
シュンは笑っている。
「仲間?なんだそれ?弱いやつらがつるむから仲間なんだろ?オレは強い。オレ一人で地下に乗り込む。」
シュンは能力のこと、地下世界のこと、一体どこまで知っているのだろう。おそらく外に漏れた巫女の光を浴びて能力を覚醒したに違いない。だが、それと地下世界の関係は知らないはずだ。
「ロン・・・か?」
「正解だ。さすがにビビったよ。この平和ボケした日本の地下であんな研究が行われていたなんてな。でもまぁそのおかげでこうして強くなれたんだからな。感謝感謝だ。」
「お前はロンの仲間なのか?」
「だから、仲間なんて弱いやつらがつるむって何度も言ってんだろ?ロンにはいろいろ教えてもらったが、ロンのために動いてるわけではない。」
シュンはさらに続けて言った。
「しいてあげるなら自分の強さを試したいってところだな。地下にはドン・キホーテをめちゃくちゃにしたやつらもいるんだろう?」
それこそロンの策略にはまっている。ロンは邪魔な能力者同士をつぶし合わせようとしている。そのことに気づかせてあげないと。
レンは近くに転がっていた鉄パイプを拾い、構えてみせた。
「ようやくやる気になったようだな?どれ、しっかり構えていろよ?今からそこにぶつけるからな?」
シュンは鉄パイプを指さして見せた。レンはシュンから目を離さずにいる。狙いがわかっているなら当たる瞬間にかわしカウンターを入れる。集中力が研ぎ澄まされているのがわかる。だが、
「ぐっ、おぁ・・・」
気が付くと鉄パイプの真ん中にシュンの拳がめり込み、鉄パイプをくの字に曲げ、曲がった勢いのままの鉄パイプがレンの胸元に直撃した。
骨の折れる鈍い音がし、レンはその場から吹き飛ばされてしまった。
「来るとわかっててもよけれねぇだろ?」
シュンは先ほどより大きく笑って見せた。そのとき、吹き飛ばされたレンの背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「午後1時からと言ったはずだが。もう30分も現れないとは一体どういうことだ?」
トガが倒れているレンの顔を覗きながら言い放った。
