【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 7話
「玄武はな、完全顕現させるのに2段階ステップを踏まねばならん。まずは真正面からの攻撃を防ぐのに最適な解。次に背後や周囲からの攻撃にも対応できる剛。そして、相手の攻撃自体を止め、その攻撃を相手自身に跳ね返すことができるのが完整だ。ここまで来て初めて玄武本来の力を引き出せる。」
「なるほどね。玄武って言ってしまえば亀だし、亀は動きが遅いから本来の姿を見せるのに時間がかかるってことなのかな。」
「解・剛・完整を一瞬でやってのけるやつだっている。それこそ玄武の守り刀の所有者がそうだ。何もお前に完整まで求めようとは思わない。まずは玄武・解を習得できればある程度の攻撃は防ぐことができる。」
「やっぱすげぇやつはほんとすげぇんだな。それじゃあトガっさん、その解ってやつを教えてくれ!」
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エンは玄武・剛により自身を中心とした亀の甲のシールドで守られている。しかし、朱雀はそのシールドにぶつかる訳でもなく、ある一定の距離から進めないでいた。レンは頭上を見上げると、レンと朱雀に覆い被さるようなシールドに閉じ込められているのがわかった。これが玄武・完整なのか?朱雀は行き場を無くしたようにシールド内を飛び回っている。だが次第にレンと朱雀の距離が縮まっているのがわかった。これは一体・・・
「気付いたかな?自身にかけられた防護壁が縮小していってることに。」
エンの言う通りだった。朱雀は自らの意志でレンの近くに来ているのではない。シールドが縮小していっているせいでその距離が縮まっていたのだ。
「普通なら2,3度当たっただけで消えてもいいはずなのだが、やはり君の朱雀は本物だということかな?さすがは黄龍というだけある。だけどね、玄武は鉄壁の防御技なんだ。いくら朱雀だろうと抜け出すことはできないよ。」
このままでは自身の攻撃でやられてしまう。レンは思わず黄龍を手放した。すると朱雀は徐々にその姿を消していった。そこでようやくエンは玄武を解除した。
「これが玄武だ。食らった相手は勝手に自滅していく。例え攻撃を放っていなくとも玄武自体に飲み込まれてやられる。攻撃は最大の防御とはよく言ったものの、玄武はその逆をいく。」
「すげぇよ、エンさん。オレにも習得できるのか?」
「君は剛まで出せると聞いている。でもね、完整は普通に修行しても決して習得することができない。」
「それって、普通じゃない修行、荒療治みたいなことをするってことですか?」
「察しがいいね。そうだ、半ば強制的に目覚めさせる必要がある。そのためにオレの能力が必要なんだ。」
そう言うとエンは一度目を閉じて再び開いてみせる。その瞳の色は初め茶色だったが、今度はエメラルドグリーンのように輝いているように見えた。全てを見透かされている、そんな雰囲気すら感じられた。
「この眼がオレの能力だ。オレの眼はあらゆるものを見通せる。そのおかげで人体の秘孔がどこにあるのかもわかる。もちろん急所もね。力を開眼させることも一撃で死に至らせることも可能だ。」
「ということは、その秘孔を突けば玄武を完全顕現させることが可能ということなんですね?」
「いや、その逆だ。君には一度死んでもらう必要がある。」
えっ?死ぬ?一度?一体どういうこと?様々な思考が行き来していたが、エンの言葉はレンを凍り付かせるのに十分過ぎるほどだった。
「言葉足らずですまなかった。だからそう固まるな。死ぬと言っても仮死状態になるだけだ。玄武は言わば亀だ。亀は冬眠し来る春に向けて力を蓄える。それと同じで君も一度死んだように眠ってもらい、自分の意志で目覚めることをしてもらいたい。その状態を強制的に作り出すだけだ。それで玄武は完整される。」
「だからエンさんは玄武を扱える・・・」
「そういうことだ。」
エンはそう言うと腰に下げていた2本の刀をレンに向け突き出す。刀身が緑色をしたその2本の刀は紛れもなく演武そのものだった。
「演武は一対の刀だ。今からこの2本ともを君に刺し込む。」
「エンさん、ちょっと待って!大晦日までにオレ、ちゃんと目を覚ませるんだよね?」
「それは君次第ってところだ。だが安心してくれ。1本は死を、もう1本は生を与える箇所に刺す。どのくらいの時間かはわからないが、君は必ず目を覚ます。」
それでも大晦日に間に合わなければどうなるのだろう。レンはもうマユの力で生き返らせることはできない。蘇生能力の2回行使はレンの死に直結する。レンは自らの意志で蘇るしかない。レンはふーっと深呼吸をすると腹を括ったかのように話した。
「わかったよ、エンさん。たぶんこれが一番の近道だ。いつでもやってくれ。」
「君のその潔さを見ていると、昔のシンを思い出すよ。」
「それってどういう・・・」
レンが言い終わる前に、一対の刀がレンの体を貫通した。その直後、レンは意識を失いその場に崩れ落ちるように眠ってしまった。
