【秋葉原アンダーグラウンド】第4章 7話
そこは講堂のようだった。しかし、イスやテーブルといったたぐいのものは全て片付けられ、いわばただっぴろい闘技場を思わせた。
「自己紹介がまだやったな。ウチはルナ。そっちの兄ちゃんはシドって言う。シドはあんましゃべらんタイプやからな、せっかくだから声出させてみぃ。」
それはシュンに向けられた言葉だった。言葉もそうだが、さっきから両方の手をポケットに入れたままボーっと突っ立っている。舐めやがって。
「1分後には這いつくばらせてやる。」
シュンは両手足に能力を集中させた。
「そや、お互い邪魔にならんよう壁でも作っておくか?よいしょっと。」
ルナはそう言うと、一瞬で2組の間に透明な壁を作ってみせた。レンは壁を触れてみた。
「冷たっ!」
それは氷でできた壁だった。ルナは氷を操る能力者なのか。大気を一瞬で凍らせる能力。しかも正確に二分する精密さ。これで2級レベルとは。レンは一気に身構えた。
「そんな緊張せんでええで。自分たちがいかに未熟かわからせるための試験でもあるんやからな。」
レンは少し頭にきた。オレだってそれなりの修羅場はくぐってきたつもりだ。それなのにこの女もなめてやがる。レンは大気を圧縮し黄龍にそれをまとわせた。それを見たルナも、自身の手指に氷の爪を作った。
「ほな、力試しといこか?」
ルナは一瞬でレンとの間合いを詰めた。縮地法だ。レンは襲い掛かる10本の氷の爪を黄龍で防いだ。
「お、これで弾かれんとは兄ちゃんそこそこパワーあるな。どれ、どこまでさばけるかウチに見してみぃ。」
ルナはそう言うと、次々と氷の爪を繰り出してきた。相手はいわば二刀流。レンは防戦一方で攻撃を仕掛ける隙もなかった。そのうち、防ぎきれない斬撃で肩や足に傷を負う。二刀流といえど爪は10本もある。全部受けきるほうが難しい。
「くっ。」
「ほらほらぁ、はよせんと傷だらけになってしまうでぇ。」
ルナの無数の刃の雨は降り注ぐことをやめなかった。
「さてと、そろそろこっちも始めますか。」
シュンは伸脚をしながらシドに話しかける。それでもシドは無言だ。
「なにもしゃべらないってことはこっちからいっていいってことだよな。それじゃあ遠慮なく。」
そう言うとシュンは地面にヒビが入るくらい踏み込み、姿を消すほどの高速移動でシドの正面から拳をぶつける。しかしその拳はシドに届くことなく、シドの表皮上に高質化された物体によって止められた。
「痛って。なんだお前のその力?石か?」
すかさず高速の蹴りを脇腹に繰り出したが、先と同様に止められてしまう。しかもシドは微動だにしていない。シュンはいったん距離をとった。
「おれのスピードで砕けない石はないはずだけどな。おまけに攻撃したオレの手と足がやられちまった。さてはその石、ダイヤモンドかなにかか?しかも、オートガードのおまけつきっぽいな。」
シュンはそう言うも、シドはその場から表情一つ変えず動かなかった。
