【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 9話
「私が怪我するってどういうことかな、ハクちゃん?」
「そのままの意味。それ以上でも以下でもない。」
「あまり大人をからかっちゃ・・・」
そこでミライは言葉に詰まった。足元一面が氷に覆われている。ミライの両足も氷漬けにされていて動かすことができない。
「これ、あなたがやったの?」
ハクは黙って頷く。ミライは1級の中でも上位に属する。その一瞬の攻撃でどの程度の実力か把握することができる。ハクは攻撃をする仕草すら見せなかった。それができるのは同じ1級でもライくらいなものだろう。ハクはそれに匹敵する。しかし・・・
「びっくりするなぁ、もぅ。でもこんな氷じゃ私を捕らえることはできないよ。」
ミライがそう言うと、足元を覆っていた氷が溶けていく。そして次の瞬間には地面を覆っていた全ての氷が蒸発した。
「こっちもびっくりした。ミライは強いんだね。」
「でしょ?それじゃあ時間も遅いし、子供はさっさと帰って寝なさい。」
「それはダメ。ロンに怒られるから。」
「だよねぇ。ちょっとは痛い思いもしなきゃダメかぁ。」
そう言うとミライは背中から翼のようなものを出し、その場で高く飛翔した。そのまま光の速さでハクへと襲いかかる。ハクはミライとの間に氷の壁を何枚も出現させたが、それらは無惨にも破壊され、ミライの直撃をくらう。だが、その場にハクの姿はなく、少し隣のほうで立っているのがわかった。
「あれ、おかしいな?普通は避けられないはずなんだけど?」
「普通って何?これがハクの普通。」
そう言うとハクは飛針のようなものを出現させ、ミライへと放る。ミライは避けることをせず、目の前に光の柱を出しそれらを一瞬で消し去った。光の柱が死角となっており、ミライの姿はハクには見えていない。ミライはハク目掛けて光の柱を突き破るような形で飛翔した。今度こそ当たるかに見えたが、またしてもそこにハクの姿はなく、元いた場所のすぐ隣で佇んでいた。
「なるほどね。その氷の力で位相をずらしていた訳か。大気中の水分を操れれば訳ないよね。しかも本人はそのことに気付いてない。いわばフルオートで回避できるときた。」
「ハク、ミライの言ってることわからない。」
「大丈夫大丈夫。でも私の光の力を使えば、その位相のずれも元に戻すことができるのよ。」
ミライは今度は自身に光のベールのようなものを纏わせ、もう一度ハク目掛けて突っ込んだ。ハクに当たる瞬間位相のずれは解消され、ようやく攻撃を当てることができた。ハクも当たる直前氷を纏わせたが、光の速度で衝突するミライには敵わなかった。氷は砕け、華奢なハクの体にミライの肘が入る。メキメキと音を立ててその肘は食い込み、その勢いでハクは反対側の壁まで飛ばされてしまった。ハクは受け身を取ることすらままならず、壁に直撃しその場に倒れ込んでしまった。
「あちゃ~、あばら数本はいっちゃったかなぁ。内臓まで届いてないといいんだけど。」
ハクはその場に倒れ込んだまま動かない。しかし、ミライは妙な殺気を感じ飛翔してみせる。次の瞬間、その空間にあるもの全てが凍りついた。もちろん例外はなくミライも同様にだ。光のベールのおかげで直撃は避けることはできたが、氷結の威力は凄まじく、ミライの体のいたるところが凍っていた。ミライは思わず地面に着地する。ハクのほうもゆっくりと立ち上がる。
「すごいね。これがあなたの本気なのかな。こんなの普通じゃ止められないよ。」
「普通って何?ミライは普通じゃないの?」
「私はどっちかって言うと特殊。」
ミライは少し笑って答えてみせたが、体中の氷は傷口からどんどん侵食してくる。おそらくこの冷気は絶対零度だ。あらゆるものを凍り付かせる。吐く息も例外ではない。ミライは光を熱エネルギーへと変換し、体中にまとわり付いている氷を溶かしてみせる。しかし、少し気を抜くとすぐに凍らされてしまう。長丁場は難しいと思い、光の出力をあげる。次の一撃で決めてみせる。
「これがハクちゃんの絶対張摩だね?すごいエネルギー総量だ。でも悪いけど次で最後だよ。」
「張摩?最後?ハク、まだ何もしていない。」
「無意識でこんなの出せるの?ほんとにすごいね。やっぱりここで止めておかないと。何かするんだったら早く出しな。後悔するよ。」
「わかった。」
そう言うとハクは両手を伸ばし、ミライの両脇から自分の両脇に至るまで、氷の鏡を何枚も作り出した。それはまるで2本のレールのようだった。
「ここまでおいで。」
「私の勝利への花道を作ってくれたのかな?それじゃ遠慮なく行かせてもらうよ。」
ミライは勝利を確信し、ハクのほうへと光の速度で突っ込む。しかし踏み込んだ瞬間、ミライは地面へと転がっていることに気付いた。両足に痛みがある。見ると飛針が両足を貫通していた。
「くっ・・・一体何が・・・」
「ハクが直接刺したの。」
ミライは顔を上げると、壁際にいたはずのハクが目の前に立っていた。
