【秋葉原アンダーグラウンド】第4章 1話
そのパソコンが並べられた部屋には、誰一人として人の姿はなかった。しかし、モニターは常に動いており、何かのデータを取っているのか、常に画面が変化していた。
「なんだこの部屋は?」
真っ先に口を開いたのはシュンだった。
「ケルベロスっていう獣が待ち構えているんじゃなかったのか?だとしたらとんだ期待外れだぜ。」
シュンは部屋に入る前、熱の能力で自分の拳を強化していたようだったが、この有り様をみて一気にやる気がそがれていた。熱の能力も解除しているようだった。
「誰も獣とは言ってないだろう。ケルベロスはこの施設の管理者のことだ。」
そうなの?とレンは表情を作って見せたが、リツは特段反応する様子はなかった。部屋の奥にはさらに扉があった。
「あの扉の向こうに管理者がいるってこと?」
「あの扉というより出口付近の管理棟だな。向こうからすれば入口になるわけだから、そこから地上へ出るものがいないか監視しているということだ。」
「他に人間はここにはいないの?」
「ああ、やつ一人でここを管理している。おそらく、我々が既にここに入ったことも気づかれているはずだ。」
リツは落ち着きがなく感じられた。おそらく地上へ出るときもここを通ったに違いない。そして、戦いとなった。あまりいい思い出がない場所なんだろう。
「私とトガは地下を出るときただでは済まなかったからな。それだけケルベロスは厄介な相手だ。交渉だけで戻れるとは思わないことだな。」
リツはため息をつくと次の扉を開け先へ進んだ。レンとシュンもそれに続く形となる。管理室と書かれた扉が見えた。おそらくここにケルベロスがいるはずだが、明らかに入ってはならない空気が漂う。しかしそれも気にせず、リツはノックし扉を開ける。
そこには、一人の男が座ってパソコンのモニターを見ていた、ように見えた。男は目元に機械付きのゴーグルを付けており、その表情は読みとれない。歳はリツくらいだろうか。やせ形で、車いすに乗っている。
「やぁ、よく戻ってこれたねリツ。会いたかったよ。」
「私は会いたくなかったけどな。けどここを通らなきゃ、てめぇと話をしなきゃ地下には入れないからな。」
リツは初めから交渉するつもりなんかないくらい語気が荒かった。
「君にこんな体にされてから、仕事をするのも大変だったんだよ。」
「そんなことよく言えるな。お前の能力さえあれば、別にそんな体になろうと関係ないだろ。」
その場に緊張が走った。すぐにでも戦いが起こりそうな予感がした。しかし、
「少し話をしようか?君がここに戻ってきた理由も知っている。害がないと判断したら、そのまま通してあげてもいい。所長権限でな。」
いったいこいつはどれくらいの階級なんだろう。管理者とか所長とか言ってるくらいだから、準1級レベルなのか?だとしたら、話し合いで済ませられるならそれに越したことはない。レンとシュンはその場で黙って聞いていた。
「ところで君の後ろにいる2人は何者だ?今回の件に関係するのか?」
「ああ、大ありだ。こいつらは関係者となったんだ。」
「ふーん。ってことは巫女から能力をもらったってことかな?なるほど。よし、そいつらを研究対象として提供してくれたら、ここを通ってもいい。」
「んだとこら?黙って聞いてりゃてめぇは何様なんだよ。リツ、わりぃがオレは強行突破するぜ。」
シュンが口を開くと同時にリツは頭を抱えた。どうせこうなるんだろうって初めから予想はしていたのだった。
「交渉は決裂ってことで、君たちを排除させてもらうけどいいのかな?」
「いいに決まってんだろ。ただし、排除されるのはお前だけどな。」
リツは頭痛がしてきた。強いやつと戦うのはいいが、いきなり管理者レベルと戦うことになるとは。しかも自分じゃなくシュンのほうが。
「この場で始めるか?いいぜ今すぐにでも。」
「この部屋はきっと狭すぎるんじゃないかな?それに重要な機械だってある。よし、いったん外に出ようか。」
男は車いすを漕ぎながら、3人を外まで案内した。
