【秋葉原アンダーグラウンド】第3章 7話
シュンは動じていなかった。これまでも武器を持った相手をなぎ倒してきた。例え銃を持っていたとしてもこっちから突っ込む覚悟さえある。
逆に、レンの手は震えていた。初めて真剣を持ったのだ。練習ではない。これで人を殺してしまうかもしれない。完全に冷静さを失っていた。
トガはそんなレンの考えを察したのか、
「大丈夫だ。それで人は切れない。」
そう言うと、自分の指を剣の刃に沿ってなぞりはじめた。レンは痛そうな顔をしてみせたが、トガの指は切れていない。
「刃の部分を研磨してある。黄龍とはそういう刀だ。」
決して切れない刀、黄龍。一体どんな想いで職人が作ったんだろう。だがレンは安心し、震えもおさまっていた。
「一応言っておくが、切れないとは言っていないぞ。勢いさえあれば、相手に致命傷を与えることだって可能だ。」
「サンキュー、トガっさん。今のオレにぴったりな刀だ!」
レンは落ち着いた様子で、2,3度刀を振ってみた。刀に風がまとわりついている感じがする。いける。レンは真っ直ぐシュンを見た。
「雑談は終わった?そろそろ始めるけど、いい?」
「いつでも来い!」
レンが言うと、目の前からシュンの姿が消えた。それと同時に、路地沿いの壁が次から次へと凹んでいく。
「壁から壁へ高速移動しているんだ。さすがのオレでも追えん。」
トガはため息をついた。だがその表情にはどこか余裕がある。
レンもシュンの動きを目で追おうとしたが、壁が破壊されていくだけで、シュンの姿は捕らえることができなかった。いつ攻撃を仕掛けてくるかもわからないシュンの動きに、レンはただ刀を構えているしかなかった。
すると急に、左顔面を殴られた。レンはそのまま反対側の壁まで吹き飛ばされてしまった。思わず攻撃を当てられた方に刀を振ってみたが、空振りに終わった。依然としてシュンの姿は捕らえることができない。
レンはよろけながらも再び刀を構えてみせた。その瞬間、今度は右顔面を殴られ地面へ叩きつけられた。
「ヒット&アウェーだな。戦い慣れている。この路地を選んだのもそのためか。」
関心しているトガを横目にレンは立ち上がるも、今度は背後から攻撃をくらう。レンはまたしても倒れてしまった。
「芸がないな王子様!そのまま倒れていたほうが賢明なんじゃないか!?」
姿は見えないがシュンの罵声が聞こえる。しかし、レンは再び立ち上がる。そして、
「だいたいわかった。」
そう言うと目を閉じ、次に真正面からきたシュンの突撃をかわした。
「???」
依然としてシュンは壁から壁へと高速移動していたが、初めて攻撃をかわされたことに困惑していた。再び攻撃を仕掛けてみたが、またしてもかわされてしまう。何が起こっている?見えていないんだぞ?もしや・・・
「貴様、風の流れでオレの動きを読んでいるな!」
レンはニヤリと笑い、次の攻撃もかわし続けた。
