【秋葉原アンダーグラウンド】第3章 8話
風が路地裏全体を流れている。レンはその流れだけを感じ取り、シュンが衝突する寸前の風が分散されていく様子だけを追っている。先ほどまでと違い、当たるとわかっている場所がわかりやすい。レンは今度こそ、シュンの攻撃をかわすと同時にカウンターを入れた。
「がっ・・・」
シュンは地面に転がるような形で倒れた。自分の勢いが強かった分、カウンターの威力も強かった。シュンは動けずにいる。
「どうだ!」
レンはシュンに向かい叫んだが反応はない。先に反応したのはトガのほうだった。
「そうだ。それが風を扱うということだ。」
トガはレンに能力の使い方を肌で感じ取ってもらうために戦わせていたのだ。なんて無理矢理な方法だろう。だがそのおかげで、レンは風の感覚というものがわかってきた。そのとき、シュンがよろけながらも立ち上がろうとしていた。
「たった一発でこれかよ。さすがにいてぇな。」
シュンは立ち上がるも、その場から動けずにいる。
「まだやんのか?」
「だから、お前は甘ちゃんなんだよ!」
シュンは一瞬でレンの懐に入るも、その攻撃は黄龍によって止められてしまう。今度は確実に受けきってみせた。シュンの動きが手に取るようにわかる。
「さっきオレが倒れたとき、立ち上がっているとき、2度ほど攻撃のチャンスはあったろう!なぜ攻撃しなかった!?」
シュンは息を切らしている。さっきまでの高速移動で体力を消耗したのだろう。そこにレンの一発だ。動けている分まだマシなほうだ。
「オレは殺し合いをしにきたんじゃねえ!これはただのケンカだ!」
「だから、そんなんじゃ地下じゃ生き残れねぇんだって!」
シュンはレンから距離をとり、クラウチングスタートのような構えをとった。それもかなり低い姿勢だ。まるで動物が狩りをする大勢だ。
「これを実践でやるのはお前が初めてだよ。」
シュンの口からは息が、いや蒸気が漏れている。
「いかんな、レン。これはさっきまでとは段違いで速い。それに、やつは他のカードもまだ持っている。」
レンは黄龍を構え、シュンとの間に大気の層を作った。いくら速かろうとこれならスピードは殺せ直撃は避けられる。しかし、トガが言ったように、ただ真正面から突っ込んでくる訳ではない気がしていた。レンは構えを変え、黄龍の切っ先をシュンのほうに向けた。
「いい判断だ。だが、それだけじゃかわせねぇよ。じゃあ、いくぜ!」
そう言うと同時に、シュンの足元の地面がめり込み、爆発に近い音を立ててシュンがレンに向かって飛び込んできた。
もはや肉眼では捕らえることができない。音が後からついてくるということは、音速よりも速いことになる。レンは空気の層の歪みだけを追っていた。その形状から、真っ直ぐ突っ込んできていることはわかる。
しかし、黄龍の切っ先から数cmのこところで、シュンの姿を見失った。周囲の風の動きに変化はない。しかし次の瞬間、シュンの拳がレンの背中にめり込んでいた。
