【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 12話
「カド、右や。」
「チッ。」
ルシウスは影から引きずり出した男、ガドに向かい命令する。ガドの銃弾1発でステイルの分身は1体ずつ、ただの水へと還ってしまう。それほどまでにガドの銃弾は重かった。しかしステイルは懲りずに1体、また1体と分身を出し続ける。
「そないな動きやとあっという間にからっぽになってまうで。」
「ったくペラペラとよく喋りやがる。そんなに食らいたきゃ食らわせてやるよ。」
ガドの周りの地面はいつのまにか水浸しになっていた。ステイルが合図を出すとガドの周りの水が一瞬で分身へと姿を変えた。
「渦巻。」
以前リツとやり合ったときよりも数段大きい。ほぼ最大出力で放たれた渦巻は一瞬にしてガドを飲み込んだ。渦巻が消えたとき、ガドの姿もそこには無かった。
「こんなもんかよ。」
「あちゃ~、ガドの肉体じゃもたんかったかぁ~。」
「お前の能力は知っている。死者を甦らせる、いわゆるネクロマンサーだろ。そんな芝居しなくたってすぐに復活させられるんだろ。」
「あはは、バレとったか。せやかて肉体の一部がなきゃ復活させるもんも復活できひんのや。」
「まだストックはあるんだろ。」
ルシウスはにやりと笑うと再び自分の影に手をかざした。ある男が影から引きずり出される。男の顔を見る前にその気迫でステイルは全てを悟った。
「てめぇ、なんてことしやがる。」
「おやおや、どこに彼の肉体の一部があったんかなぁ。カラスはんとの戦いで全部失ったはずやと思っとったのになぁ。」
「この外道が。」
ルシウスが影から引き出した男は、紛れもなくライだった。ライの体の一部はカラスとの戦場に落ちており、それを地下の墓地に埋葬したはずだった。ルシウスはそれを掘り起こしたとしか考えられなかった。引き出されたライはどこか虚な表情をしていたが、体から溢れ出る雷の波動はステイルの分身を簡単に蒸発させる。
「魂はな、肉体に宿ると言われとる。ここにいるライは本物のライやで。」
「あのライを弄ぶとはいい度胸じゃねぇか。」
ステイルは口では強がっていたが、内心は焦っていた。これが本物のライなら、ステイルは一度も勝ったことがない。ライはステイルだとは気付いてない。両手を広げ雷撃を集める。次の瞬間、ライの放つ一閃がステイルを飲み込む。
「あちゃ~、今のは分身じゃないってことはこれでしまいか~。ガド殺ったの考えたらもうちょい粘ってほしかったなぁ~・・・ん?」
バチバチと音を立てて雷撃が消えていく。するとそこに蒸発したかに見えたステイルの姿があった。
「っはぁ、あぶねぇ。対ライ用にとっておいたのがここにきて活きたな。」
「あんさん、どないトリック使うたん?普通ならあれで消えるやろ。」
「トリックじゃない。オレはただ水の純度を100%にしただけさ。」
水は溶け込んでいるイオンや不純物があるおかげで電気を通すことができる。これが純度100%の水になると電気を全く通さなくなる。ステイルはこの原理を利用した。口で言うのは簡単だが、繊細な能力操作、および覚醒者にしか成せない技だった。
「1級とそれ以下との超えられない壁、それは能力を覚醒させられているかどうかなんだよ!」
ルシウスはライに命令し、ステイルに何度も雷撃を食らわす。しかし、雷撃は当たるものの、ステイルにダメージはなかった。
「その技、結構チカラ消費するんとちゃう?こっちは無尽蔵の雷様やで。はよ楽になりぃ。」
「さすがのお前ならわかるよな。だからこうするんだよ。」
ステイルは一瞬でその場からいなくなった。ライは電気でステイルを感知しようにも、無数の気配を感じ特定することができない。全方位に向け雷撃を放つも、ステイルの気配は消えることはなかった。するとどこからかステイルの声が聞こえてくる。
「今やこの大気中の水分全てがオレだ。ライにはなんとなくわかっていたみたいだがな。だが、わかったところでとらえられない。いくよ、ライ。これがオレの最大だ。」
爆水と叫ぶと大気中の水分が爆発した。それはいわゆる水蒸気爆発だった。能力が覚醒しているため、いくら雷神の姿になろうとも攻撃は当たる。しかもこの水量だ。食らったほうはたまったもんじゃない。それでもライはガードを固めたまま、その場に立っていた。体中焦げてはいたが息はあった。ステイルは徐にライの目の前に姿を現した。
「マジかよ。さすがライだな。オレの完敗。もう能力は出せないぜ。さぁ殺せ。」
ライはガードを下げステイルの顔を見て呟いた。
「お前、まさか、ステイルなのか・・・?」
