【秋葉原アンダーグラウンド】第5章 5話
キャサリンとチェルシーはその場から固まって動けないでいた。どういうことだ?確かにチェルシーは1級レベルの実力ではあるが現階級は2級だ。戦わせる理由がない。これが特別審査だからなのか?
「チェル・・・お前このこと・・・」
「知らないよ!こんなの聞いてない!」
チェルシーは涙を浮かべ叫んだ。本当に何も聞かされていなかった様子だった。2人は呆然と立ち尽くしていた。
「あれあれ、どうしちゃったんですか?試験は始まってますよ?」
「これがてめぇらのやり方か!」
キャサリンは思わず拳を地面に叩きつけていた。その衝撃で会場のいたるところに亀裂が走った。なんてパワーだとトガは思わず呟いた。例え戦わせなくともその実力は理解できる。
「ダメですよそんなことをしても。これは特別審査。シンの命令は絶対です。」
その証拠にその場にいた1級の猛者は動かない。事の成り行きを見ているようだった。キャサリンは重力を圧縮した拳を固める。
「さっきも言ったがここにいる全員と殺ってもいいんだぞ。まずはてめぇからでいいよなカラスマ!」
「お姉ちゃんやめて!」
背後からチェルシーの叫び声が聞こえた。
「そんなことしたら、お姉ちゃんが死んじゃう。」
「どうせこいつらは私達に殺し合いをさせようとしてたんだ。だったら刺し違えてもこいつらを殺してやる!」
まずいな。そう思ったのはワンだった。初めから何かおかしいと思ってはいた。それこそシンが主導しているという話を聞いたときからだ。ワンは自身の能力で背中から翼を出した。
「試験は中止だ。これ以上やっても意味がない。」
「おや?いくらあなたでもシンの命令に背くと言うのですか?」
「そもそもシンが言ったっていう証拠はないだろう。」
「ふむ、ではこの封書をご覧ください。」
カラスマはワンのほうへ近づき、シンから預かったという封書を渡した。そこには確かにシんの筆跡で書かれた文書があった。大学時代から見てきた筆跡だから間違いない。
「嘘だろ・・・」
「これで証明できましたかね?では続きを始めましょうか。」
「いや、それでもダメだ!いくらシンとはいえこんなこと許しておけない。」
「そうですか。とても残念です。」
そう言うとカラスマは、ワンの右肩につけていた見えない爆弾を爆発させた。ワンは声をあげその場で膝をつく。
「1級は単独権限が与えられていることはご存じですよね?あなたは今命令違反により私が罰しました。」
「こんなことをして許されると思っているのか。」
「許す許さないではないと思いますが?現に他の1級は私を裁きにこない。」
「くそっ・・・」
ワンの横ではドクが傷の手当てをしている。その様子を見たカラスマはドクをも爆破させようとしているのが見てわかった。
「もうやめて!」
声を上げたのはチェルシーだった。その顔は涙で溢れていた。
「私が・・・戦えばいいんでしょ・・・」
「ダメだチェル!それこそなんの意味もない。」
急に会場全体が重くなり、その場から誰一人動けるものはいなかった。
「お前・・・本気なのか・・・」
チェルシーの顔からは涙が消えていた。
