見出し画像

【秋葉原アンダーグラウンド】第3章 11話

翌日、昨日と同じ時間にリツは見舞いに来た。

「なんだ。やればできるじゃないか。」

レンとシュンは組み手をしていた。昨日まで折れていた骨と、穴が開いていた内臓なんか感じさせないほどに、そこには回復した二人が立っていた。

「あ、リツさんおはようございます。なんか急に元気になっちゃって、動いてないと体なまっちゃうんで、こいつと稽古してました。」
「こいつがどうしても暇だっていうから付き合ってやってんの。」

リツは二人のやり取りなんか気にせず、持ってきた花を花瓶に入れ替えた。

「あまり無茶してると傷口が開くぞ。」
「うっす。」

レンとシュンは組み手をやめ、互いのベッドに座った。どのくらいの時間相手をしていたのだろう。結構な汗をかいている。ということは明け方までには回復していたことになる。やればできるというレベルじゃない。かなり上出来だ。リツは微笑んだ。

「ところでリツさん、今日何時に出発するんですか?」

レンは真顔で聞いてきた。

「退院の手続きをしないといけないからな。それに検査もある。今日中は無理だ。明日以降でスケジュールを組む。それまでに、地上とのお別れを済ませておけよ。しばらくは帰ってこれないんだからな。」

リツは冷静に言い、主治医を呼びに行った。

「しばらくは帰ってこれない・・・か。マユのお見舞いにも行けなくなるんだな。」

レンは稽古を終えると、毎日マユの眠っている病院に通っていた。依然としてマユは目を覚まさない。レンたちが地下に行っている間も、トガがマユのそばにいてくれるのは安心だった。

「お前は別に友達とかいないからお別れなんて必要ないだろ?」

レンはシュンにからかいながら言ったが、シュンは無視を貫いた。
リツが主治医を連れてくると、主治医は腰を抜かして驚いていた。すぐさま問診を始めたが、どこも異常なんか見当たらない。健康そのものだった。

「一体何が起こっているのかまるでわからない。奇跡という簡単な言葉でも言い表せない。長く患者を診てきたがこんなこと初めてだよ。」

シュンは冷静に診察を受けていたが、レンは興奮のあまりガッツポーズを取っていた。主治医が席を外すとリツが退院の手続きもしてきたと伝えた。明日の朝にはここを出ていくらしい。

「それまでしっかり休んでおけ。地下に入ったらすぐに戦いになる可能性がある。できるだけ避けられるようやってみるがな。」
「別にオレは構わねーぜ。むしろ戦いたいくらいだ。」
「地下に行く目的を忘れるなよ。戦争をしに行くわけじゃないんだ。まぁ戦いたいやつはたくさんいるが、できるなら最小限で済ませたい。」

オレに指図すんなよとシュンは言いたかったが、そのまえにリツに殺されちゃかなわない。適当なやつを見つけて強くなって見返してやる。

「地下は、地下政府独自で管轄していている。その警備や役職者は全員能力者だ。警備は2級以上、役職者となれば準1級以上となる。ちなみに、お前たちのレベルだと2級でギリギリアウトだ。」
「は、なんだよそれ?そんなの死にに行くようなもんじゃねぇか。」
「ということは、オレら3級以上2級未満って感じか。」
「そういうことだ。だから最小限で済ませたいんだ。ただし、さっきも言ったが戦いたいやつはたくさんいる。警備兵の中にもな。それにお前たちは強い相手と戦ったほうがいい特訓にもなる。だから、雑魚はお前たちが相手をしろ。」

リツは雑魚と言ったが現状自分たちより強い。リツなら簡単に倒してしまうだろうが、そいつらばかり相手にしてられない。レンはなんとなく自分たちの役割がわかってきた。

「病院から出たら食べたいものはあるか?退院祝いだ、なにかおごってやる。」
「やっぱりあのカレー屋かなぁ。最後に食っておきたい!」

レンは即答したが、シュンは黙っている。異論はないといった感じだ。

「わかった。明日の朝に迎えにくるからな。それまで待っていろ。」

リツが病室から出ると同時に、様々な機器を持って医師たちが入ってきた。


いいなと思ったら応援しよう!