スマッシュ‼︎ 第2話 (全5話) 〜ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチ〜
【前回のあらすじ】
30代で、軽い気持ちから始めたテニス。
仕事終わりのインドアコート。
埃っぽい匂い、シューズの音、ボールの反響。
ゆるいラリーを眺めているうちに、私はその世界に引き込まれていった。
そして数年後――。
中級クラスのダブルス練習試合。
エナンことやものサーブに対し、
力こそ全てフェデラーのマネ男のリターン。
トスが定まらず、4回やり直すエナンことやも。
高まる相手のイライラ。
張りつめる空気。
ようやく打ち込んだ、へなちょこセカンドサーブ。
次の瞬間、空気をつんざくフルスイングが炸裂!
恐怖のあまり、ボールも見ずに頭を抱えてしゃがみ込むエナンことやも。
気づけば、リターンエース。
ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチには笑われ、パートナーの動かない男(ハシビロコウ)は無言のまま。
ゲームカウント0-0、15-0。
試合はまだ始まったばかりだった――。
中級クラス、ダブルス練習試合。
3セットマッチ。
ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチ
力こそ全てフェデラーのマネ男(50代)
VS.
ほとんど動かない男(ハシビロコウ)(30代後半)
片手バックハンダー、エナンことやも(私)
ゲームカウント0-0、15-0。
◆エナンことやものサーブ
アドサイド(左側)からのサーブ。
エナンことやもは、アドサイドからのサーブが苦手であった。
結局、サーブは苦手なのであった。
リターンはド派手黄色いシャツ着たド派手コーチ。
このコーチは、大変な負けず嫌いで、同じく大変な負けず嫌いであるエナンことやもをおちょくることを楽しみとしているような、コーチとしてあるまじき、アルマジロ野郎であった。
トスがなかなか決まらないエナンことやもに、ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチが、
「やもさーん、早くしてくださいよー」
とヤジってくる。
関係あるもんか、いいトスで弾丸サーブをキメてやるんだから!
やっと、納得のいくトスがあがった!ここだ!
エナンことやもは、綺麗な弧を描いて、ラケットを振り下ろした!
◆ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチのリターン
エナンことやもの鋭いサーブがド派手黄色いシャツ着たド派手コーチのバックサイドに食い込んでいく。
「ナイスサーブ!」
ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチは、難なくバックハンドでリターンを返す。
球足はそれほど早くない。ラリーに持ち込むつもりね。よーし……
「消える魔球‼」
突然、ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチが叫んだ。
そして、なにやら、ゆらゆら変な動きをしている!
え?え?
なんと!
硬式の黄色いテニスボールが、ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチのシャツと同化して、非常に見えにくい!
チラチラして、本当に見えにくい!
......ということは、ない。
「なんと、卑劣な…」
あきれながら、なにくそと打ち返すも、動揺したせいか、ネットにひっかけてしまった。
「簡単なコースですよー、ボールをよく見ないと、やもさーん!」
「~~~~っ!」
前衛を守っている、ほとんど動かない男(ハシビロコウ)は、あいかわらず、ネットの前でじっと構えている。
ネットに引っ掛けたボールを拾ってもくれない。
怒ってる……?
え、なんで?
わけわかんないんだけど?
仕方なく、自分でコソコソと、ボールを取りに行った。
ゲームカウント0-0、30-0。
🎾🎾🎾🎾
◆エナンことやものサーブ
力こそ全てフェデラーのマネ男は、リターナーがよくするように、タイミングを合わすために細かく体を揺らしているが、それがフェデラーのマネにしか見えない。鼻につく。
つい今しがたのプレーで、やけくそになったエナンことやもは、へなちょこトス一球目から、思いっきり振りにいった!
それが功を奏したのか、力こそ全てフェデラーのマネ男はタイミングを外され、振り遅れて動けなかった。
サーブが、ラインすれすれに決まっ...
「アウト‼️」
叫ぶ、ド派手黄色いシャツ着たド派手コーチ。
「はあ⁉️」
見える位置にいないではないか。
なんと、なんと卑劣な!
「入ってましたよ」
え⁈
声の主は、ほとんど動かない男(ハシビロコウ)。
「入ってましたね〜」
悪びれる様子もなく、いけしゃあしゃあとド派手黄色いシャツ着たド派手コーチがニヤニヤしている。
「~~~~っ!」
アルマジロコーチめ〜〜!
前衛を守っている、ほとんど動かない男(ハシビロコウ)は、やはり、前を向いたままで、表情をうかがい知ることができない。
ゲームカウント0-0、30-15。
(続く)
この物語は、実在の人物や実際の出来事に着想を得たフィクションです。
👇第1話はこちら👇
次回「スマッシュ‼︎第3話」は
「走れ!エナンことやも!」です!
では、良い週末を。
