未来は風のように①
こんにちは。
作詞家・作曲家兼経営者の山田智和です。
【採用】という吉報が届く時、なぜかわたしは苦境の中にいることが多いです。
今回は【楽曲コンペとの向き合い方】も含め、そんな経験について書いてみようと思います。
好きかどうか
2019年。
わたしはいつものように楽曲コンペと戦っていました。
その頃には、以前のように「来たものは全部書く」というスタイルを捨て、「自分の良さが出せそうな案件」に絞ってトライするようになっていました。
「自分の良さが出せそうなもの」のわたしなりの計り方は、
「【リファレンス楽曲】が自分好みの曲であるか否か」
です。
楽曲コンペの発注がくるとき、ほぼ100%オーダーの中に【既存曲でいえばこんな雰囲気の曲】という記載があります。
それが、【リファレンス楽曲(参考楽曲)】です。
オーダーのテキスト内容を読むよりも前に、まずわたしはそれを聴きます。
それを聴いて、知らない楽曲でも「あー、良い曲だな。」と思えれば、そのコンペにトライするようにしています。
その方が制作の苦も少なく、かつ採用率が上がることを【1100敗の経験】の中で学んだからです。
【1100敗の経験】についてはこちらからどうぞ↓
アニメ主題歌コンペ
そのコンペのリファレンス楽曲も初めて聴いた楽曲でしたが、とても好きなテイストのものでした。
そして、オーダーのテキスト内容も非常に読み取りやすく、トライしがいのあるコンペだなと思いました。
そのアニメの名前はもちろん知っていましたが、今まで関わる機会のないものでした。
ただ、人気作だけに非常にハードルは高く、なかなか採用は難しい案件だろうなという肌感覚はありました。
しかし、それまでも「ハヤテのごとく!」「刀剣乱舞」「ダンガンロンパ」など、アニメのテーマソングを書かせていただいた経験はあったので、「リファレンスも好きな感じだし、なんとかなるかも!」、とトライしてみました。
ゾーンに入っていく
「リファレンスが好きな感じの曲」というきっかけから始まる楽曲制作は、大体スムーズに進行します。
この楽曲もそうでした。
「イントロ勝負だな。」
という感覚はあったので、イントロから作り始めました。
「終わることなく、永遠に続いていく」そんなイメージのフレーズを考えました。
「音色はピアノ、そして単音のフレーズで間違いないな。」
そしてイントロのフレーズが決まったとき、わたしはゾーンに入りました。
AメロもBメロも、元々あったメロディのように浮かんでは繋がっていく。
サビ前での転調も、そこからのサビのメロディもアイデアも、“元々そう決まっていた”かのように紡ぎ出されていく。
一切の迷いなく、あっという間にメロディはできました。
そしてメロディが出来上がる頃には、最初に感じた【ハードルの高さ】も【難しい案件という感覚】も、どこかに消え去っていました。
これが、“決まるときの感覚”です。
勝てる楽曲
最後に、現在楽曲コンペにトライされている作曲家の方の少しでも何かお力になれれば、というところで。
わたしは、リファレンス楽曲を聴いて、オーダーシートを読んで、それでも心が動かないものに関してはスルーで良いと思います。
無理をして、“自分ではない楽曲”を作っても、その【無理】も【苦しみ】も【背伸び】も、クライアントさんには伝わってしまいます。
そして何より、作っているご本人が辛いと思います。
辛い思いをして、“大好きな音楽”に向き合う必要はありません。
それは【音楽】というものに矛盾した作業です。
わたしは、若い作家さんが自分のように“大好きな音楽に心と体を壊されて”ほしくありません。
音楽が重荷になりそうになったら、逃げてください。
逃げて、一旦リフレッシュして、また戻ってくればいいんです。
そして、自分のフィールドで伸び伸びと書けそうな案件に出会ったら、全力で勝負を楽しんでください。
そうしてできた曲こそが、【勝てる曲】なのです。
「未来は風のように②」につづく・・・
