週刊|話題のAI新製品・新機能ニュース(2026/2/22〜2/28号)
更新日:2026/3/1
エグゼクティブサマリー
今週は「自律実行エージェント」が主役。NotionのCustom AgentsやMicrosoftのCopilot Tasksが、ユーザー不在でもクラウド側でタスクを回す“裏で働くAI”を一般化し、Perplexityもマルチモデルで計画〜実行の完遂を提示した。並行してGemini 3.1 Flash Image、Lyria 3、Mercury 2など速度×品質の更新が続き、制作・開発・検索の全レイヤーで常時AI稼働が前提化。一方で蒸留攻撃や規約強化、国防との摩擦が表面化し、導入のボトルネックが性能から統制設計へ移りつつある。

1. フロンティアモデル・マルチモーダルの進化
1-1. Google:Gemini 3.1 Flash Image(Nano Banana 2)
出典URL: https://blog.google/innovation-and-ai/technology/ai/nano-banana-2/
Googleが新画像生成「Gemini 3.1 Flash Image(Nano Banana 2)」を投入。Flash級の速度で商用品質を狙い、同一キャラクターの保持や複数オブジェクトの忠実度を高めた。512px〜4K対応で、画像内テキスト描画・翻訳も強化し、検索や広告など実務導線への統合が進む。
1-2. Google DeepMind:Lyria 3(音楽生成)
出典URL: https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/lyria3/
Google DeepMindの音楽生成AI「Lyria 3」がGeminiアプリに統合。テキストや写真からボーカル込みの約30秒楽曲を生成でき、制作の初稿づくりを一気に短縮する。生成音源にはSynthID透かしを付与し、著作権・真正性の担保も重視。開発者向けには低遅延のRealTime実験も提示。
1-3. Inception Labs:Mercury 2(拡散モデル型LLM)
出典URL: https://www.inceptionlabs.ai/
Inception Labsが拡散モデル型LLM「Mercury 2」を公開。全文を並列生成して反復推敲で収束させる方式で、自己回帰LLMのレイテンシ壁を突破し毎秒1000トークン超を主張。Azure AI Foundry経由でOpenAI互換APIとして提供され、音声対話や高速コーディングなど“秒単位の知能”を要求する用途で注目。
2. 仕事の自律化:エージェント基盤の拡大
2-1. Notion:Custom Agents(24時間稼働のAIチームメイト)
出典URL: https://www.notion.com/releases/2026-02-24
Notion 3.3で「Custom Agents」を公開。スケジュールやイベントをトリガーに、ユーザー不在でも24時間バックグラウンドでタスクを実行する“自律チームメイト”を実装した。MCP経由でSlackやLinear等とも連携し、Q&A対応や定期レポート生成を自動化。5月以降はクレジット制へ移行予定。
2-2. Microsoft:Foundry新モデル+Copilot Tasks(クラウドPCで自律実行)
出典URL: https://techcommunity.microsoft.com/blog/azure-ai-foundry-blog/new-azure-open-ai-models-bring-fast-expressive-and-real‑time-ai-experiences-in-m/4496184
MicrosoftがAzure AI FoundryでGPT-5.3-Codex/Realtime 1.5/Audio 1.5を同時展開し、開発と音声体験を強化。さらに「Copilot Tasks」は専用クラウドPCを動的に割り当て、端末リソースを使わず調査や定期作業を非同期で完了させる。回答から行動へ、実行環境込みでエージェント化が進む。
2-3. Perplexity:Perplexity Computer(マルチモデルで完遂)
出典URL: https://x.com/perplexity_ai/status/2026695550771540489
Perplexityが「Perplexity Computer」を公表。目標を渡すだけで計画→情報整理→実行までを自律化し、最大19のAIモデルへ作業を動的ルーティングする。持続メモリやファイル/Webアクセス、外部コネクタも備え、“検索で答える”から“仕事を終わらせる”へ提供価値を拡張。Copilot TasksやComputer Useと競合する新領域。
2-4. ChatGPT:Projects強化(外部ソースを動的ナレッジ化)
出典URL: https://help.openai.com/en/articles/6825453-chatgpt-release-notes
ChatGPTの「Projects」が強化され、SlackチャンネルやGoogle Driveリンクなど外部ソースを知識ベースとして直接取り込めるようになった。会話のたびに資料を貼り直す手間が減り、チームの文脈を“更新され続けるプロジェクト空間”として共有できる。社内情報の活用とAI支援を一体化し、日常業務のリサーチ〜意思決定までの往復を短縮する。
3. 開発者体験:IDE/デザインの境界が溶ける
3-1. OpenAI × Figma:コード⇔デザイン往復(ラウンドトリップ)
出典URL: https://openai.com/index/figma-partnership/
OpenAIとFigmaがCodex連携を発表し、コード→デザイン→コードの往復(ラウンドトリップ)を実現。自然言語からFigmaデザインを生成し、逆にFigmaファイルをプロダクションコードへ変換できる。ハンドオフの摩擦を減らし、仕様変更の反映を“会話+デザイン編集”で回せるため、フロント開発の速度と一貫性が上がる。
3-2. GitHub Copilot:マルチモデル統合+Copilot CLI GA
出典URL: https://github.blog/changelog/2026-02-25-github-copilot-cli-is-now-generally-available/
GitHub CopilotがGemini 3.1 Proのプレビュー統合やClaude 4.6系対応を進め、IDE内で“マルチモデル選択”が現実に。加えてCopilot CLIがGAとなり、ターミナルから自然言語で調査・修正・PR作成までを支援する。Web検索やAgent Skillsなど周辺機能も拡張され、開発フロー全体がエージェント前提へ寄っている。
3-3. Slack:MCPサーバーGA(外部AIが文脈に接続)
出典URL: https://slack.com/intl/en-gb/blog/news/mcp-real-time-search-api-now-available
SlackがModel Context Protocol(MCP)サーバーを一般公開し、ClaudeやCursorなど外部AIがSlack内の会話やナレッジを安全に参照できるようになった。IDEで作業しながら仕様議論や障害ログをリアルタイムに引けるため、コードだけでなく“組織の背景”を含めた支援が可能に。ツール間連携の共通規格としてMCPの存在感が増している。
4. デバイス/検索UXの変化
4-1. Samsung:Galaxy S26(PerplexityをOS統合)
出典URL: https://news.samsung.com/global/galaxy-ai-expands-multi-agent-ecosystem-to-give-users-more-choice-and-flexibility
SamsungがGalaxy S26で「Hey Plex」によるPerplexityのOSレベル統合を実施。Notesやカレンダー等の標準アプリから直接呼び出せ、Bixby・Gemini・Perplexityを並列利用する“マルチエージェント”を前提にした。単一アシスタントの囲い込みから、タスクに応じ最適AIへルーティングする端末体験へ転換しつつある。
4-2. Google:Circle to Search(複数同時検索)
出典URL: https://blog.google/products-and-platforms/products/search/circle-to-search-february-2026/
Googleが「Circle to Search」を強化し、画面内の複数オブジェクトを同時に囲って一括検索できるようにした。Geminiの視覚推論でアイテムを並行特定し、比較や追加情報提示までを短縮。コーディネート丸ごとの商品特定などEC導線が強まり、検索が“発見→購入”のハブとして再設計されていることを示すアップデート。
4-3. Firefox 148:AI機能の一括OFF(AIコントロール)
出典URL: https://www.mozilla.org/firefox/notes/
Firefox 148に生成AI機能を一括で無効化できる「AIコントロール」が追加された。マスタートグルでAI強化をまとめて遮断し、必要に応じて個別設定も可能。プライバシー志向の一般ユーザーだけでなく、情報漏洩リスクを管理したい企業ITにとっても実務的な変更で、ブラウザ側で“AIの利用範囲を選ぶ”流れが広がる。
5. クリエイティブとマーケの量産化
5-1. Canva:Image to Video(静止画→動画)
出典URL: https://www.canva.com/newsroom/news/whats-new-february-2026/
Canvaが静止画を数秒の動画に変換する「Image to Video」など生成機能を拡充。デザインの雰囲気を自動で揃えるStyle Matchも加わり、SNS向けクリエイティブをテンプレ+生成で高速に量産できる。専門ツールに移らずに“素材→動画→投稿用サイズ”まで完結しやすくなり、ノンデザイナーの制作力を底上げする。
5-2. Adobe:Firefly「Quick Cut」(Bロールから初稿自動生成)
出典URL: https://blog.adobe.com/jp/publish/2026/02/26/cc-putting-ideas-in-motion-redefining-ai-video-with-adobe-firefly
Adobe Fireflyに動画編集支援「Quick Cut」が追加され、Bロールや生成素材を投入するだけで編集可能な“第一稿”を自動生成できるようになった。白紙タイムラインからの組み立て負荷を減らし、編集者は構成調整や仕上げに集中できる。無制限生成の提供拡大とも相まって、生成AIが制作現場の初動工程を置き換える流れが加速。
5-3. WPP × Adobe:Firefly Foundry統合(IPセーフな運用)
出典URL: https://www.wpp.com/en/news/2026/02/wpp-and-adobe-expand-partnership-to-drive-ai-transformation-for-client-marketing-operations
WPPとAdobeが提携を拡大し、WPP OpenとFirefly Foundryを統合。企業保有IPのみで安全に生成・配信・効果測定までを自動化し、著作権やブランド逸脱リスクを抑えた“エージェント型マーケ運用”を前進させる。クリエイティブ制作が単発生成から、ガバナンス込みの大量パーソナライズへ移る象徴的な動き。
6. インフラ/ハードウェア競争
6-1. Meta × AMD:6GW規模のAIインフラ提携
出典URL: https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1279/amd-and-meta-announce-expanded-strategic-partnership-to-deploy-6-gigawatts-of-amd-gpus
MetaとAMDが最大6GW規模のAIインフラで戦略提携。カスタムInstinct GPU(MI450系)と次世代EPYCをラック設計まで統合し、2026年後半から段階展開を計画する。NVIDIA一強への依存を下げつつ、性能連動ワラントなど財務面でも結び付きを強めた大型ディールで、調達・電力・設計を含む“基盤戦争”が新局面に入った。
6-2. SambaNova:SN50(エージェント推論特化チップ)
出典URL: https://sambanova.ai/press/sambanova-unveils-fastest-chip-for-agentic-ai-collaborates-with-intel-and-raises-350m
SambaNovaがエージェント推論向けチップ「SN50」を発表。RDUアーキテクチャでLlama 70Bの推論スループットをB200比約5倍とし、推論コストをGPUの約3分の1に抑えると主張する。最大10兆パラメータ/1000万トークン級の長文脈にも対応し、Intel協業や資金調達も含め“非GPU”の選択肢が現実味を帯びた。
7. セキュリティ/ガバナンスと攻防
7-1. Anthropic:Claude Code Security(脆弱性検出〜パッチ提案)
出典URL: https://www.anthropic.com/news/claude-code-security
Anthropicが「Claude Code Security」を公開し、コードベース全体を推論して脆弱性検出からパッチ提案までを支援。従来SASTが苦手な論理バグも対象とし、OSSで500件超の問題を見つけたと報告された。発表後に主要サイバーセキュリティ株が急落するなど、市場は“専門SaaSが基盤モデル機能に吸収され得る”衝撃を織り込んだ。
7-2. 蒸留攻撃と規約強化(不正利用対策が競争軸へ)
出典URL: https://www.anthropic.com/news/detecting-and-preventing-distillation-attacks
Anthropicは中国AI企業による大規模な蒸留攻撃が報じられ、モデル保護と安全保障の論点が浮上。あわせてサブスク版Claudeを外部ハーネス経由で“API代わり”に使う抜け道運用を利用規約で明示禁止し、商用利用は正規APIへ誘導した。性能競争だけでなく、不正利用対策と契約設計が競争軸になっている。
7-3. Google:OpenClaw大量停止問題(ベンダーロックイン論争)
出典URL: https://discuss.ai.google.dev/t/urgent-mass-403-tos-bans-on-gemini-api-antigravity-for-open-source-cli-users-paid-tier/124508
Gemini有料ユーザーがOSS CLI「OpenClaw」経由でAntigravity環境を使ったところ、403 ToS Violationで利用停止となったケースがフォーラムで報告され、同様事例が複数確認されて開発者コミュニティが反発している。投稿者は公式マーケティングが「CLIからのエージェント利用」をうたう一方で、サードパーティCLIは明示なく事実上排除されていると批判し、透明性やベンダーロックイン回避の観点からAIプラットフォームの利用規約を再点検すべきだと訴える。
7-4. Anthropic vs 米国防総省(安全性と国家需要の衝突)
出典URL: https://www.aa.com.tr/en/americas/anthropic-rejects-pentagons-request-to-loosen-ai-safeguards/3841571
Anthropicが米国防総省からの“ガードレール緩和”要求を拒否したと報じられ、AI倫理と国家安全保障の対立が表面化。自律兵器や大規模監視への転用リスクを巡り、政府は契約や調達で圧力を強める可能性がある。AI企業は安全性をブランドにしつつ、国家需要にも向き合う局面に入り、ガバナンス方針が事業継続の鍵になってきた。
8. 国内注目
8-1. Yahoo!ショッピング:対話型AIエージェント(購買支援を拡大)
出典URL: https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/020144/
LINEヤフーがYahoo!ショッピングに対話型AIエージェントを導入。曖昧な要望に逆質問しながら条件を絞り、商品提案から注文後の配送確認までを会話内で完結させる。対象は16ジャンル・276カテゴリーへ拡大し、ECが“検索→比較”から“コンシェルジュ型”へ移る転換点となった。国内大手での本格展開は、収益化フェーズ入りを示す。
8-2. NTTドコモ/ソフトバンク:AI-RAN実証(基地局がエッジAI基盤に)
出典URL: https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2026/20260225_01/
出典URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000747.000118641.html
NTTドコモはvRAN汎用サーバー上で通信処理とAIアプリを並行運用する実証に成功し、ソフトバンクもAI-RAN基地局の余剰計算資源で外部AIワークロードを動かす検証を完了。通信網が“土管”からエッジAIクラウドへ変貌し、低遅延推論の提供者としてキャリアの収益機会が広がる。6Gを見据えたインフラ再定義が進む。
8-3. 楽天:エコシステムのAIネイティブ化(AI 3.0含む)
出典URL: https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2026/0219_02.html
楽天はカード・EC・ドローン等でAI施策を同時展開し、独自の大規模モデル「Rakuten AI 3.0」(700B級MoE)を軸にエコシステムのAIネイティブ化を加速。利用明細の自然言語照会や動画からの購買導線、画像解析による外壁調査など“実装の速さ”が際立つ。国産大規模モデルでコストを抑えつつ体験を刷新する戦略は、国内企業の先行事例として注目。
総合考察
今週は、AIが「答える」から「終わらせる」へ役割転換した点が見え始める。SaaS(Notion)とOS実行環境(Copilot Tasks)、検索起点の完遂(Perplexity)が揃い、MCPや外部ソース取り込みで“組織の文脈”まで接続され始めた。結果として競争軸はモデル性能だけでなく、権限管理・監査ログ・失敗復旧・契約設計へ拡張。蒸留攻撃対策、ToS運用の透明性、国家需要との衝突は、プラットフォームの信頼と市場構造を左右する新しいリスク要因になっている。
今後注目ポイント
Mercury 2やSN50級の高速推論が普及すると、エージェントは“常時稼働”が標準に。席課金から稼働量課金へ移る価格設計が勝敗を分ける。
MCP連携が標準化するほど、差は連携数ではなく権限と監査。参照範囲の設計、実行ログ、失敗復旧までを製品で担保できるかが鍵。
Copilot TasksのクラウドPC型が広がれば、端末制約が消え“非同期の自動作業”が日常化。データ持ち出しと実行環境の統制が必須になる。
Galaxy S26のようなOSマルチエージェントは検索と購買の入口を再配分。アプリは囲い込みより、エージェントに選ばれるAPIとデータ整備が重要。
蒸留攻撃、ToS適用の不透明さ、国防需要との摩擦が同時進行。モデル保護と開発者信頼を両立する“透明なルール作り”が採用を左右する。

