記憶の糸をたどるように
連なる風景の中を進み
記憶をたぐり寄せる。2025年の女木島で、2010年
の芸術祭の始まりに思いをはせる。銅線が連続し、
光を帯びる。石の質感にふれては、そよぐ風の音
に耳を傾ける。遠い日の映像がふわりと浮かぶ。

空間は書き換えられては

色をまとい、新たな作品が展開される

銅線で編まれた等身大の像が

教室から教室へ、隔てる壁をすり抜けて

つながる線をたどる
困難な境遇にさらされる人々の

生きる力が形となり
芸術祭を超えて紡がれる

つながれた線をたぐり寄せる

いつかの風景へと思いをはせる

廊下に足音が反響する

過去から現在へと視点を移す

境界を生み出す石

糸につながる小さな石

描かれた柔らかな曲線は

過去と現在を結ぶように

作品に込められた石の記憶

作者は女木島の石垣を故郷になぞらえる

小さな石が語り始めるかのように

立ち上がっては、形をなす
小さな石と、時代を超える石の記憶

しなやかで、壮大でもある
切実な作者の思いにふれながら

記憶の糸をたどっては

風景に引かれた線に沿い

うねる蘇鉄をぐるりとめぐる

休校中の女木小学校は芸術祭の舞台となり

2010年の始まりの年から今に至る

瀬戸内がアートを帯び始めた頃に訪れた

建物を覆うFUKUTAKE HOUSEの看板も懐かしい

保育所をふわりと包み込む

空気の膜が、建物の存在感を浮き立たせる

2010年の懐かしい記憶の糸をたどっては

その線上に建ち続ける小学校をまた訪れて

変わらずに海の色をした塀を伝って

また風景の中を歩く
2010年の瀬戸内国際芸術祭の旅を思い出す。まだ
幼かった長男との二人旅。手押しポンプを珍しそう
に握りしめる手。曲線を描くトイレの入口。先へと
続く校舎の廊下。外壁には芸術家たちの名が並ぶ。
変わらないものと変わりゆくもの。風景をつむぐ
記憶の糸をたどるように、瀬戸内への旅を続けて。
