花咲く島の風景の記憶
過ぎゆく時に、島に咲く花
かつて島で栽培された除虫菊は、島の景色を白く
包んだ。今ではもう生産されることもなく、記憶の
中の花となる。除虫菊の家と呼ばれる民家の中に
花の風景が展開される。島を表す彩りにふれて。

瀬戸内海に浮かぶ高見島は

かつて除虫菊が栽培された島で

その痕跡を慈しむように

花にまつわる作品が展示される

写真とペイントが混じりあう表現は

花の姿を今に定着させるもの

現実と非現実の間の色合いは

高見島に咲く花々を映したもの

花の色や形が分解されては、新たな色が重ねられ

目に見えない香りが浮かびあがる

時代が変わり、花の風景はうつろいゆくけれど

島を彩るはなのこえが、作品に刻まれて

花に包まれた空間に、島の記憶が重ねられる

ツバキの赤は鮮やかさを保ち

時代に浮かぶ除虫菊の白ははかなくとも

かつての島を彩った花

空間の質を鮮やかに変える

花の風景は日々との接点を持つもので
ささやかな日々と接続する瞬間がある

薄紅色のツツジが旅先に浮かび
赤紫のトキワマンサクが日々を飾る
花の持つ記憶にふれながら旅をして

民家に流れる声に耳を澄ませ

影が光と溶け合う空間に

建物に漂う記憶をなぞる

2階に展示されるのは、グラスに盛られた

砂糖で作られたバラの彫刻

空間に散りばめられた形は、時とともに朽ちては溶ける

作品は、島に暮らす9人の女性に捧げられたもの

ひそかな楽しみや夢の形が、時の中へ

記憶の中へと染み入るように
風景を彩る色を旅に重ねて
花にまつわる2つの作品は、島の今を伝えるもの。
小さな生命は、作品として島の記憶に重ねられる。
過ぎゆく時の中に花は咲き、島の人たちの生活は
これからも続いていく。花は風景をつなぎとめる
存在となり、その彩りは日常と旅の接点ともなる。
