日常と非日常の境界へ
目に見えない継ぎ目をたどる
街の中に広がる校庭に、そびえる塔がゆっくりと
動く。芸術祭に空間は新たな役割を与えられる。
白いテントの下で演じられるのは、どこか日常と
つながる動作。奥にたたずむ土俵屋根はかつての
記憶を閉じ込めて、日常と非日常の交差にふれる。

小説の中から飛び出した青豆の気配に

街は芸術祭の空気をまとう

沈みゆくもの、盛んになるもの

校舎の入り口に掲げられた時計は

かつての時を指し、動きをもった彫刻が静かに立つ

芸術祭に人が集い、時間がまた動き出す

校庭の砂の感触の先に、作品から流れるのは

シモーヌ•ヴェイユにより綴られた脱創造の言葉

日常は、ひそやかで、平坦なようでも

目を凝らしては、その凹凸にふれる

土俵屋根に、わんぱく相撲の歓声を重ねるように
記憶の中の音に耳をすます

建物は時代の波をしのぎながら

非日常の舞台の背景となる

校庭に伸びる複雑な影は

自らの意思を持つように、動いては音を発する

機械仕掛けの塔の作品

浮遊するおぼろげな声を、ロープが地面に繋ぎとめる
人工知能を持つ塔が

日常と非日常の境にたつ
AIが学習するものとしないもの

校舎がまとう気配は懐かしく

連なる彫刻が質感を帯び

つたは色づき季節を知らせる

校庭の片隅のプールに揺れる

祝祭のひとときの輝きに

ゆったりと泳ぐ生命の影

水槽とプールに満たされた水は

海水と淡水の間にあり、海と川の生き物が共存する

出会うことのないものとの出会いは

重なる線と揺らぐ線の向こうにある

ふわりと浮かぶ白い空間で

演者は日常を離れた動作を繰り返す

街は姿を変える。残される建物もあれば

時を待つ建物もある

祝祭に華やいでは
風景に刻まれた時間に

沿うように、またぐように

日常と非日常の境に
移ろう時間を重ねていく
海水と淡水の間、出会うことのないものが出会う。
AIにさらされた世界は、多様さと均質さを合わせ
もつ。芸術祭に日常と非日常の分かれ目が浮かび
上がり、その境界線をたどる。道端にきらりと光る
ものを探しながら、また目を凝らしては街を歩く。
