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あの日の音に思いを寄せて

旅の途中に立ち止まってはまた進む


風景をたどり、視点を重ねる。続く海への道を行く。
港に広がる海は穏やかに雲を浮かべる。船の出航を
待つ桟橋。波の音が聞こえる。砂に沈む足裏の感触
を確かめては、海へつながる島の旅を続けている。



豊島美術館を後にして、海への坂を一気に下れば



広がる海。港の風景にかすかに浮かぶ雲



あの日たどった何気ない風景をたどり



いつか見た石の鳥居を過ぎ



海岸へとつながる道を行く



緑のトンネルを抜けた先に広がる瀬戸内の海



砂浜で波とたわむれる人の姿



その海岸沿いに建つ建物を目指しやってきた



2010年の瀬戸内国際芸術祭の始まりの年に建てられた



焼杉板の建物への15年ぶりとなる旅路



窓の外に広がるおだやかな海


この建物は人々の記憶を保存するもので


手掛けた芸術家の記憶も刻む



クリスチャン・ボルタンスキーの心臓音のアーカイブ



建物の中に記憶される人々の鼓動



周囲で繰り返し時を刻む波の音



波にゆれる風景で時間はゆらぐ



砂浜に落ちる石、枯れ枝にも目を留める



静かな砂浜。15年の時を経た建物は風景に馴染み


惜しくもこの世を後にした芸術家の思いをつなぐ



波打ち際にひきよせられるように



砂をなでる水の音にふれ



光にきらめく波を眺める



よせては引く波と繰り返す旅



15年前に訪れたのは夏から秋へと空気が変わる頃



色づく緑に季節を感じ



きらめく水面に心もおどるようにして



砂浜で波を見つめる人の姿と



熱心に砂遊びをするまだ小さかった子ども



砂の上に立てられた棒に石のオブジェ



2010年の瀬戸内国際芸術際の旅は



小さかった子どもとの二人旅。子どもにとっては



映るすべてが好奇心の的で、芸術的なもの



子どもたちを連れての旅を繰り返し



2015年には大地の芸術祭への旅もした



最後の教室で繰り広げられる音の世界


記憶に残る場所をつくった芸術家は


この世を後にしても、人々の心に生きる



静寂な空間に響く音は



大地の芸術祭で静かに空間にこだましていた



記憶される音。記録に残る音。10年、20年残る音の
風景。繰り返す波の音。砂浜に沈む足の音。芸術祭
に集う人のざわめき。静けさの中に響く作品の音の
世界。小さかった子どもの楽しげな声を追いかける
自分。続く風景。旅先でふと、あの日の音に思いを
寄せる。旅を重ねては、いつかの音を訪ねるように。




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